「だけど今日はオレが勝つ!!　オレもサッカーが大好きだから!!」

「なんだー!?　オレのほうがサッカーは好きだぞ!!」

「いやいや、オレだよ」

「オレが勝つ!!」

「オレだってば」

「オレ!!」

「オレ」

「オレオレ!!」

「オレ」

｢｢いい加減にしろ守/フィディオ!!｣｣


放っといたらいつまでも続きそうな言い合いに、熱が冷めた瑞貴とオルフェウスのアンジェロ＝ガブリーニが怒鳴った。


「もう。気持ちはわからなくもないけど時と場合を考えてよ。勝って証明すればいいでしょ……」

「まったく。スゴいキーパーには挑まずにいられないタチなんだから。いきなりロングシュートなんて……」

｢｢ごもっともです……｣｣


仁王立ちする瑞貴とアンジェロに、円堂とフィディオは後頭部に手を当てて苦笑した。しかし……。


「けど、そんなにスゴいキーパーには見えないな。あの女の子も実力はそんなにないでしょ」

「守！　絶対勝つよ!!」

「オウッ!!」

（……へぇ）


アンジェロの言葉にカチンときた瑞貴は円堂と共に意気込んだ。照れたり怒鳴ったり意気込んだりと忙しそうだ。

その様子にフィディオは――特に瑞貴を――面白そうに見ていた。



――試合再開し、オルフェウスが積極的に攻める中、早くも前線にいるフィディオにボールが渡った。


「いっけぇーフィディオ――ッ!!」

「!!」

「全力でいくよ。まずは１点だ!!」


綱海条介のスライディングをかわしたフィディオがジャンプする。円堂がそれに反応して構える中、フィディオはボールに聖なるパワーを溜める。


「オーディンソード!!!」


神なる剣(ﾂﾙｷﾞ)が円堂を襲う。その威力に五郎は驚くが、円堂はビリビリきた。


「わぁ……！　え…円堂センパイ――ッ!!」

「スゲェ……フィディオ、これがお前の必殺技か……。よぉし…全力には全力で応えるのみ!!」


円堂まずは右手にパワーを溜めて飛び上がる。円堂にとって最強の必殺技だ。


「イジゲン・ザ・ハンド!!!」

「おおっ!!」

「やった!!」


フィールド中に伝わるイジゲン・ザ・ハンドの威力に、瑞貴も五郎も興奮して声を上げた。


「どうだ!!」

「スゴい技だ!!　だけどオレのシュートも負けちゃいない!!　いっけぇえ――っ!!」

「えっ!?」


フィディオのオーディンソードがイジゲン・ザ・ハンドのシールドに触れたとき、真っ二つに切れた。


「えっ!?」

｢｢｢｢｢!!!｣｣｣｣｣


円堂を始めイナズマジャパンがその光景に驚く中、イジゲン・ザ・ハンドを切ったシュートはそのままゴールに突き刺さった。


《ゴォ――ルッ!!　イタリア１点先取!!　フィディオの神の剣(ﾂﾙｷﾞ)が円堂を一刀両断――っ!!》

「やったぁ――っ!!」

「さすがフィディオ!!」

「そんな……円堂センパイ渾身の技が破られるなんて……円堂センパイ!!」


フィディオとアンジェロが喜ぶ中、五郎は倒れたままの円堂を見てショックを受けた。しかも最強の必殺技が破られたのだ。そのショックの大きさがデカいと思った鬼道は焦りだし、土方雷電は声を上げる。


「マズいな……。これは１点先取された以上に精神的ダメージが大きいか……!?」

「なんだって!?」

「フィディオのオーディンソードくらったら戦う気もなくなるさ。ハハハッ」

「円堂!!」

「キャプテン!!」

「円堂センパイ――ッ!!」

「守――っ!!」


ピクッ……。


アンジェロが高笑いを上げ、豪炎寺や壁山塀吾郎や五郎や瑞貴が声を上げる中、円堂の右手が微かに動いた。そして……。


「イッテエェェ～～ッ!!」

「!?」

「思い切りいきすぎた――っ!!　イデデデデェ――ッ!!」

「え…円堂センパイ!!」


なんと円堂は右手を上げて涙目になり、アイヤアイヤと走り回った。予想外の姿にアンジェロも五郎も驚いた。


「……フフッ」

「ミズキ？」

「そうだったね。相手が強大でもスゴいシュートを受けてもメゲない……それが円堂守なんだよね！」


誰もが唖然とする中、瑞貴が笑っていたのをフィディオが気づくと、瑞貴はグローブを外してフゥフゥと息を吹きかける円堂を見て微笑んだ。

そして円堂は再びグローブを付けながらクルリと回ってフィディオを見ると……。


「スッゲーな、フィディオ!!」

「!!」

「お前ホントサッカー好きなんだな！　点取られて悔しいのにワクワクが止まらない!!　今のシュートビリビリきた!!　来い、フィディオ！　もっぺん勝負だ!!　サッカーやろうぜ!!」


ガシッとフィディオの両手を取った円堂は、フィディオに向かって叫んだ。


「そうこなくちゃ!!」


ビリビリと二人に衝撃が走った。その様子に壁山や風丸たちは安堵する。


「ホー。よかった……」

「やれやれ」

「なんなんだ、あいつは!!」


めげるどころか俄然燃えてきた円堂に、アンジェロはありえないというように叫んだ。


「ホウ。どうやら円堂はオーディンソードを破る秘策があるようだな」


やる気満々の円堂の姿を見て、不動はニッと笑うが……。


「ない!!　でもやる!!」

「だと思った……」


ガオーと吠えるように叫ぶ円堂に不動はズッコケ、瑞貴は額に手を当てて苦笑した。


「フフン、どっちにしろフィディオの敵じゃないね」


驚いたが実力はフィディオが上だと先ほど証明されたので、アンジェロは立て直した。