不動が幼い頃、家に借金取りが金を奪いに押しかける日々だった。


『オラ――ッ!!　払うものは払え――っ!!!』

『そんな…騙したな!!!　信じてたのに!!!』

『騙されるほうが悪いのさ。へっ、惨めなモンだぜ』


高笑いしながら去る借金取りに、不動の父親は裏切られたショックで愕然していた。それを見てきた不動は……。


『オレは人なんか二度と信じない……!!!　何がなんでも自分の力だけで勝ち上がってやる!!!』


悲惨な過去を聞いて、円堂は不動のことを少しだがわかった。


「……だからあいつはチームメイトを…利用はしても信頼しない自分勝手なサッカーをしてしまうのか……。でも、瑞貴には不動の態度が少し違うな」

「なんでも、旅をしていた瑞貴さんと出会って勝負を挑んだそうです」


次に五郎は不動と瑞貴の出会いを話し始めた。


『お前、フットボールフロンティアに優勝した雷門中の副キャプテンだろ？　――オレと勝負しねぇか？』

『あんたがこの辺りで強いって噂のサッカープレーヤーだね。私もあんたに会いに来たんだ』

『オレに？』

『もちろん、サッカーをしにね』

『……へっ、上等じゃねぇか』


結果は瑞貴の勝ち。自分のプレーに自信があった不動は女子の瑞貴に負けたことは屈辱だった。それから瑞貴が滞在している間に何度も勝負を挑んでいた。


「いつしか不動さんは瑞貴さんのことをライバルと認めてきました。でも、逆に言えばそれだけで……」

「チームメイトとしては認めてないってことか……」


ドリブルする鬼道がなんとかゲームを組み立てようとしていく。だがアフロディは笑っていた。


「甘いよ、ゲームメーカー。炎の龍(ﾌｧｲｱｰﾄﾞﾗｺﾞﾝ)の組織力を見るがいい!!!」

「!!!」


するとファイアードラゴンの流れるような連携であっという間に鬼道はボールを奪われた。円堂も鬼道も瑞貴も驚く。


「そんな、鬼道がボールを奪われた……!!!」

「なんだ今のは……」

「なんてムダな動きのない連携なの……!?」

「フフフ、グラウンドには龍がいるのさ」


アフロディの言葉通り、ファイアードラゴンは全員が機能的に動くサッカーをしている。まるで一つの生き物が……グラウンドに龍がうねるようだ。

チェ＝チャンスウからアフロディにボールが渡り、南雲と涼野と共にイナズマジャパンのＤＦを突破した。残るはゴールにいる立向居勇気だけ。


「クッ！　止めてみせるぞ！」

「ムダだよ。これはボクらの、最強技だ!!!」


南雲は炎、アフロディは光、涼野は氷の力をまとう。最強のシュート力を持つ三人が共にシュートを撃つ。


｢｢｢カオスブレイク!!!｣｣｣

「う…うわぁあ――っ!!」


その破壊的な力に立向居はムゲン・ザ・ハンドを出す暇もなくゴールを許してしまった。いや、あったとしても止めれなかっただろう。


「う…ぐ……。ぐ……」

「勇気、大丈夫!?」

「チッ、使えねぇ」


一気にボロボロになった立向居の元に瑞貴たちが駆け寄るが、不動は舌打ちする。


「立向居!!!　監督!!!　交代を……!!!」

「まだだ!!!　お前はここで試合を見るんだ!!!」

「クッ……」


円堂が交代を促すが久遠はそれを許さない。

追い込まれていくイナズマジャパン。２対１で韓国リードのまま後半の半分が過ぎていき、そんな中不動のワンマンプレーが目立つ。


「ぬぅ……勝手にしやがれ!!!」

「フンッ、どこにパスしてんだよ」

「クッ……」


土方が不動のプレーに苛立ち、不動のパスは緑川の前に通り過ぎていく。そのこぼれ球は瑞貴がなんとか拾っていた。

不動のプレーは瑞貴以外と噛み合わない。五郎はハラハラしながら応援する。


「ああ……パスが繋がらない。瑞貴さんもシュートまで繋げていない……。みんながんばって!!!」

「……今のチームは一体感がなくなっているんだ……。こんなときこそチームワークが大切なのに……」


円堂は不動とみんなの様子で気づいた。