「クッソ――ッ!!!　どうすりゃいいんだぁ――っ!!」

「土方くん――っ!!」

「えっ？」


追い込まれて焦る土方に声がかかった。それは痛む足を抑えて猛ダッシュする吹雪だ。


「土方くん!!　こっちだ――っ!!」

「ふ…吹雪!?」

「バカな!!　あの足で走るなんて……!!」

「骨までいってるはずなのに……」

「もうやめて――っ!!」


走る吹雪の姿に土方だけでなくアフロディも不動も驚き、秋は見てられず悲鳴を上げる。


「グゥッ！」

「士郎!!」

「ああっ……吹雪ぃ――っ!!」

「フッ」


ついに吹雪が足の痛みで倒れてしまう。瑞貴と円堂が声を上げ、ジョンスが不敵に笑う。そんな中で吹雪の脳裏に浮かんだのは白恋中サッカー部の仲間たちだ。


（ボクは…ボクはみんなの代表。思いを託されたＦＷ……――だから!!　この足一本捧げても、惜しくはない!!）

（吹雪……!!　お前そこまで……!!）


なんと吹雪は持ち直して再び走り出した。彼の姿に土方も触発される。


「代表にかけたその覚悟、しかと受け止めたぞ吹雪――っ!!」


土方が強烈な稲妻を帯びたボールをソンファンとペクヨンの間抜けてゴールに向かい、そこに吹雪が走り込む。


「ムダだ!!　氷のストライカー!!　今のお前に撃てるシュートはない!!」

「どうかな!?　凍える吹雪の中でも、熱き獣は生きているんだ!!」

「!!」

「ス…スゴい……!!」

「おおお……！」

「こ…これは!!」


吹雪の中に眠る熱い魂が呼び起こされ、その迫力をアフロディも瑞貴も円堂もジョンスも感じ取る。


「サンダービースト!!」

「うおおおっ……!!」


稲妻をまとった獣のシュートが放たれる。ジョンスは必殺技を出す暇もなく弾き飛ばされ、ボールはゴールに入った。これで１対１の同点だ。


「吹雪、よくやったぞ!!　お前は白恋中の…いや日本の誇りだ!!」

（見事だ…吹雪士郎、怪我をした足とは思えぬシュートだった……。お前の熱き魂、見せてもらったぞ）


吹雪のプレーに土方たちもジョンスも賞賛する。彼ほど代表に誇りを持つ選手はそうそういないかもしれない。


「士郎……ありがとう……！」

「み…瑞貴ちゃん……。ボク……カッコよかった？」


彼は瑞貴にいつも笑顔でいて共にプレーをしてきた。今は痛みで苦しいのに、それでも大好きな女子に笑顔を向ける。

そんな吹雪に胸を打たれた瑞貴は涙ぐみながら足にダメージが与えないようにギュッと抱きしめる。


「とっても…とってもカッコよかったよ……!!　今までよりも最高に……!!」

「ハハッ……嬉しいな……」


その言葉に嬉しく思った吹雪は瑞貴をギュッと抱きしめた。いつもなら引き剥がして阻止する風丸や豪炎寺や鬼道も、ただ黙って見守っていた。

吹雪は瑞貴と土方に支えられながら立ち上がり、ベンチへと向かって行く。

VSファイアードラゴン前半29分、氷のストライカー吹雪士郎――戦線離脱。