「まあそう落ち込むなって壁山!!!」

「…………」

「取り返せばいいだけだろ。オウンゴールなんてたまにはあることさ！　ちっちゃいことは気にすんな！」

「綱海……」

「綱海さん……」


綱海がポンポンと背中を叩くと、初めて壁山は顔を上げる。円堂も栗松も少し驚いた。


「気休めはよしてください!!!　オレはとんでもないことをしてしまったっス!!!」

「気休めじゃねーさ。時間はまだある！」

「引っ込め――っ!!」

「やめろ――っ!!」

「バカヤロ――ッ!!」

「…………」


未だに鳴り止まないブーイングに綱海は片耳を抑えてイライラし始める。


「チッ…うるせえなぁ……。いつまでもグチグチグチグチと――……うるせえんだよ、いつまでもテメェらぁ――っ!!!　ちっちゃいことは気にすんなって言ってんだろぉが――っ!!!」

｢｢｢｢｢…………!!!｣｣｣｣｣

「おめーらもいい加減にしとけよ!!!」

｢｢｢｢｢!!!｣｣｣｣｣

「ビッグウェイブスだかなんだか知らねーが……ちっちぇー悪態ついてんじゃねぇぞ!!!」


綱海の迫力に観客は全員押し黙り、ビッグウェイブスも驚いた。次いで綱海は壁山に顔を向ける。


「そんでもってお前だ壁山!!!　いつまでもクヨクヨすんじゃねぇ！　お前のミスはオレが取り返す!!!　だから……心配すんな!!」

「綱海さん……」


頼もしく思える綱海の言葉は、壁山にビリビリときた。そして綱海はゴールに向かうとボールを拾い上げる。


「まっ、そんなわけだから円堂……!!　オレ、上がるぜ」

「綱海……。オウッ!!　ズババーンと任せたぞ!!!」


その背から感じる綱海の闘志は円堂にも見ただけで伝わった。

残り時間はあとわずか。失点を取り返すために鬼道を始め上がっていくが、ニースは笑っていた。


「フンッ。熱くなってもムリなものはムリさ!!」


そして鬼道をボックスロックディフェンスで封じ込める。再びＦＷの瑞貴や吹雪や豪炎寺にパスができない。しかし――。


「こっちだ!!!」


そこに綱海が加わり、驚いたビッグウェイブスの隙を見つけて鬼道のパスが綱海に通った。ボックスロックディフェンスを破って瑞貴と円堂は喜びの声を上げる。


｢｢よっしゃ――っ!!!｣｣

「へへっ!!」

「奴を自由にさせるな、止めろ――っ!!!」

「止められるモンなら止めてみな!!!」


ニースの指示でディフェンス陣が綱海に襲い掛かるが、綱海は滑るようにかわした。

だがビッグウェイブスも負けてない。即座に綱海にボックスロックディフェンスをし、大きな高波に囲まれたようだ。


「土方！　オレに向かってスライディングだ!!!」

「えっ？」

「いいから早く!!!」

「おっ…おおお――っ!!!」


綱海の指示に土方は驚きつつもボックスロックディフェンスの間を通ってスライディングをかける。


「なんだ!?　強引に突破口を作るつもりか!?」

「ムリだ!!　二人共囲まれるだけだ!!」


不可解な行動に円堂も鬼道も驚く中、土方がスライディングで出した足と綱海の足がぶつかり、その反動でなんと綱海は飛んだ。


「まさか、そう攻略するとはな!!」

「うおお！　スゴいぜ綱海!!!」

「バ…バカな……」

「オレに乗れない波はねぇ!!!」


綱海の攻略に鬼道も円堂もニースも驚く。しかも場所はゴール前で上空にいる綱海は完全なフリー状態だ。


「いっけー条介ぇ――っ!!　そのままシュートだ!!!」

「おおおっ!!!」

「グレートバリアリーフ!!」


豪炎寺のシュートのパワーも絡め取られるジーンの必殺技。だけど綱海は怯むことはなかった。


「んなモンに負けるほど…日本の嵐はそんなにヤワじゃねぇ――っ!!　ザ・タイフーン!!!」

「うおお…パワーを吸収しきれない……!!!」


なんと綱海のザ・タイフーンはジーンのグレートバリアリーフでも吸収できずゴールに叩き込まれた。ついに同点だ。


「つ……綱海さん。ありがとうっス……。オレ綱海さんのこと誤解してたっス……。なんて謝ったらいいか……」

「ハッハッハッ。ちっちゃいことは気にすんなって!!」


今までのことを謝罪する壁山。だけど綱海は全く気にしないように笑い飛ばした。

こうして、イナズマジャパンは綱海の攻撃参加によりボックスロックディフェンスを攻略した。


「いけー！　瑞貴――っ!!」


緑川が蹴ったボールが瑞貴に渡り、しかもゴール前で絶好のシュートチャンスだ。だくどジーンは余裕そうに笑っていた。


「女なんかに決めれるものか！」

「……女でもね、男に負けない強い力を持ってるのよ！」

「何っ!?」


ボールと共に上空に上がった瑞貴。ボールに花と葉が集まってパワーを溜めていく。


「うおおぉぉおおお!!　スプリングキャノン!!!」

「な…なんだと!?」


予想外のシュートが襲い掛かってジーンは驚き、必殺技を出す間もなくゴールに叩き込まれた。


「女でも日本代表！　私は絶対にイナズマジャパンと世界一になる!!」


瑞貴はそう言ってニコッと笑った。そして試合終了となり、イナズマジャパンが２対１で勝利した。個性豊かなチームの中に、新たな絆が生まれたイナズマジャパン……!!!

ここに彼らは、世界一への第一歩を踏み出したのであった!!!