続いて綱海条介からボールを受け取った五郎だが、再び不動に吹っ飛ばされてしまう。


「ああっ！　五郎――っ!!!」

「ムゥ。ラフプレーが過ぎるでヤンス――ッ!!!」

（五郎……！）


円堂は悲鳴に近い叫び声を上げ、不動と同じチームの栗松鉄平も怒りが心頭していき、瑞貴も声に出さずとも目を見開く。

弾かれた五郎は先ほどと同じように両手と両膝を地に付ける。


「グ……。やっぱりボクとはレベルが違うのかな……」

「へっ、思い知ったかよチビ！　ＭＦのポジションはオレがもらうぜ。そのまま大人しく地面に這いつくばってな!!!」

「ぐぐ……っ」

「むぎぃ――っ!!!」


追い討ちをかけるように高笑いする不動。五郎は歯を食いしばり、栗松はさらに怒り出す。


「あきらめるな五郎!!!　お前だってがんばってきたんだろう!?　一緒に代表のユニフォームを着ようぜ!!!」

（そ…そうだ。ボクだって……）


五郎は今までのことを思い出した。

……フットボールフロンティア優勝後、五郎は一人でイナビカリ修練場で残って特訓を続けていた。半田真一は全然出てくる気配がない五郎を心配して中に入る。


『五郎の奴、いつまで特訓する気なんだ……』

（ボクだって……!!!）


コーンと揺れるタイヤをかわしながらドリブルしていくが、ボールがコーンにぶつかったためリズムが崩れてタイヤをマトモに食らってしまった。


『ぐぁあっ!!』

『もうよせよ、五郎!!!』

『ぐ…ダメですよ……。このくらいクリアしないと……!!!』


円堂や瑞貴についていくために、過酷な特訓をしていた。


「確かに不動さんはうまい……だけど……ボクだって代表のユニフォームを着てみせる!!!」


立ち上がって意志の強い瞳を宿した五郎に再びチャンスボールがきた。ゴールからも円堂の声援が送られる。


「いけー五郎――っ!!!　今度こそチャンスを繋げ――っ!!!」

「ハハッ！　そんなことさせねーよ!!!　ムダだチビ!!!」


同じように不動が立ち塞がるが、五郎は怯まなかった。


「ムダなもんか……。ボクだって世界を目指してがんばってきたんだ!!」

「!!!」


五郎は必殺技・分身フェイントを発動させる。しかし……。


「フハハッ！　その程度で世界へ行く気とは……笑わせるな――っ!!!」


不動はジャッジスルー２を応用して高速の蹴りでボールを止めにいった。それも正確にボールを狙い、一体一体分身が消され、残ったのは本体のみ。


「ハハハ！　これで終わりだ!!!」

「五郎――っ!!!」

「五郎!!!」


円堂が叫び、瑞貴も思わず声を上げる中、五郎はギリッと歯を食いしばった。


「今まで円堂センパイと瑞貴さんと一緒にサッカーをがんばってきたんだ。ここで落ちてたまるか――っ!!」

「!!　何!?」


不動は初めて五郎を相手に目を見開いた。何故なら、先ほど消した分身がさらに増えたのだ。


「分身フェイントＶ２!!」

「な…なんだとぉ――っ!?」

「おおお！　スゴいでヤンス!!!」

「分身フェイントがレベルアップしてる!!!」

「スゴい…スゴいよ五郎!!!」

「やったな、五郎!!!」


五郎の成長に栗松も風丸一郎太も瑞貴も円堂も、驚きつつ喜びで笑っていた。そして……。


（なんとしても代表になってみせる!!!）


ついに不動を抜くことができたのだ。


「やった――っ!!!」

「チッ」

（五郎の強い気持ちが必殺技をレベルアップさせた……。私も見習わなくちゃ！）


円堂はガッツポーズをとり、不動は油断したと言わんばかり舌打ちする。瑞貴もまた仲間から新たなことを学んだ。