アースイレブンは惑星サンドリアスと地球の重力は違うので、慣れるために無頼漢とのサッカーバトルに使われたグラウンドを使用していた。


「いくぞ！」

「ふっ！　よし、もう一度来い！」

「いいぞ、その調子だ！」


神童拓人と井吹宗正がＰＫ方式の練習をする中、反対側のエリアでは西園信助をＧＫにし、攻守で分かれて練習をしていた。


「なんか、やり辛い……」

「すぐに慣れるさ。行こう！」


惑星サンドリアスの重力は地球より軽く、少し蹴っただけでもボールは大きく飛んでしまう。プレーにも少なからず影響がでるので野咲さくらが悪態を吐くと、天馬は励まして練習に入った。


「さくら！」

「はい！　わ、わああっ！」

「なっ!?」

「大き過ぎだぞ！　わあっ！」

「何やってんだよ！　ちゃんと撃てよな！」

「足を取られたんだからしょうがないじゃない！」


ドリブルする天馬のパスをさくらは受け取ろうとしたが、重力が軽いことによってバランスを崩しうしろからディフェンスに来た鉄角真ごと倒れてしまい、九坂隆二もボールを追おうとしたが足を崩してしまう。


「ふっ！」

「かわされた！　行ったよ、真名部くん！」

「左…32度！」

「ふっ！」

「止めます！　っ、わっ！」


市川座名九郎にかわされた皆帆和人は真名部陣一郎に声をかける。座名九郎の動きを計算し、真名部は左足を大きく上げて止めようとするが完全に止めきれず、ボールが宙に向かって弾かれる。


「撃て、瞬木！」

「ふっ！」

「はっ！」


剣城京介の指示で瞬木隼人はヘディングシュートを撃つと、信助はそれを横っ跳びで止めた。


「チッ……」

「いい反応だったぞ」

「あと少しだったのにな」


止められたとはいえ素早い対処だと剣城は褒めると、瞬木は後頭部に手を当てて苦笑する。しかし……。


「今のはちゃんとクリアしてくれないと！」

「ちょっと予測がズレただけです！」

「でも、試合中だったら決定的なミスになる所だよ！」

「君だって、市川くんにアッサリと振り切られたじゃないですか！」


先ほどのプレーについて皆帆と真名部が言い合いをしている。それは相談とかではなくお互いを責める言い方だ。


「ウチ…嫌……」

「ん？」

「みんな……怖い顔してる……」


森村好葉の言葉に天馬が見渡すと、皆帆と真名部だけでなくさくらも鉄角も九坂も顔をしかめていた。地球を守るというプレッシャー、星の重力に慣れずプレーが思い通りにいかない、いろいろ入り交じって苛立っているのだろう。


「そうだね……。でも、地球の未来がかかってるんだ。プレッシャーはあるよ」

「うん……」

「いよいよ明日ですね」

「ああ！」


座名九郎の言葉に天馬は頷いた。明日はいよいよ、グランドセレスタギャラクシー本戦の第一回戦であり、初めて宇宙で戦う試合が始まるのだ。


ピィ――ッ!!


「はい、ここまで！」

「ええっ!?」

「まだ重力に慣れていないのにー！」

「瑞貴さん、もう少し練習させてください！　試合は明日なんですよ！」


ホイッスルを鳴らして練習終了と告げた円堂瑞貴。鉄角とさくらと天馬は驚き、練習続行を希望するが……。


「明日だからこそだよ。天馬、慣れていない星で最も警戒するべきことはなんだと思う？」

「最も警戒……？」

「それは『体調』なの。苛立ちも緊張も興奮も、全ては体調に繋がっている。試合は異星人の私たちの身体に影響が出ないような組み合わせになっているみたいだけど、育った環境と重力は何もかも違う。だからこそ、万全の態勢で試合に臨むべきなんだよ」


それにアースイレブンは余所の星で試合をするのは初めてだ。最初は観光するなど心の余裕はあったモノの試合となれば話は別だ。


「というわけでブラックルームの使用も禁止！　ゆっくり休むように！」

｢｢｢｢｢はい！｣｣｣｣」