その妹、強烈につき
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――及川ー、これ部室に持っていってくんねぇ?
ちょうど良かった、と俺は思った訳だ。及川にビブスを渡したく探していた時に、そいつを呼ぶ誰かの声が聞こえたから。
しかし、第二体育館の影から出てきたその人間は俺の思い描いていた及川では無かった。
あの長身の男前が来ると思ってたのに、華奢な女子生徒が小走りでやって来たのだ。入学してきた生徒の中でとびっきりの美人が城西に来たと部員達が噂していたのを思い出す。なんとなく彼女の事を指してんだろうなと思えるぐらいの顔は整っていた。
しかし何故だ、少しうちの及川と似ている。あの完璧のうちのセッターに。
――こんにちは
俺の顔を見て、笑顔で挨拶してきたnew及川。
なんだ?
及川という苗字を持つ人間はみんなこんな顔に出来上がるのか?
そこで俺は一つの答えに行き着いた。あ、兄妹か。
後日及川に確認した結果、妹の存在を知る。
この学校はダンス部という部活動が、その他の部の応援をしてくれる。男子バレー部も公式戦ではいつも応援団として休日返上で来てもらっている。女子はその時だけチアをしてくれるので腑抜けた部員達はいつもそれを見てヘラヘラしている。試合に集中しろ。
及川妹が入部してからというもの、他校からの羨望の眼差しが強くなったと思う。みな一様に口を揃えて「あの子可愛い」と言うのだ。そしてそれを聞いた矢巾が信じられないといった顔でそいつ等を見る。…あれ?プレイボーイのお前にしては珍しい。先輩の妹だから遠慮しているのか?
…とまあ、バレー部に関わりが無い様で実はお世話になっているダンス部所属の及川妹。この前見た時は、中庭でダンス部の前でライオンキングのハイエナダンスを踊っていた。生徒が「美人だ美人だ」と持て囃すので、勝手におしとやかなイメージを抱いてたが、教師側から見たら以外な顔が見れて中々面白い。
――ハルのハイエナダンス完璧すぎるでしょ!?
――これかっこよくない!?動画見て覚えて、お兄ちゃんに合ってるかどうか見てもらったんだ~
部員と一緒に口を開けて笑っている様子はどこにでもいる女子高生だ。そして及川よ、お前妹にちゃんと構ってやってんだな、えらいな。
そんなこんなで、俺の中で及川妹は”普通の妹”だった。それぐらいの認識だった。そう、うちのエースを前にした時の妹に会うまでは…。
「か、かっこいい……!」
「…………」
「溝口コーチ今の見ました!?今のアタック見ました!?」
「…………」
「あれ?コーチ?どうしたんですか」
「今お前にトラウマを植え付けられたあの日を思い出してるんだよ…」
「トラウマ?」
男バレが練習する第一体育館の入り口で、俺の後ろに隠れ練習を見ている及川妹。どうやらロッカーに置いてある音楽デッキを借りに来たらしいが、たまたま岩泉が手前のコートで練習していて、そして近くに居た俺がこいつに捕まりこういう状況。
今日はまだ普通の反応だな、うん。
なあ及川妹覚えてるか?お前岩泉を前にして赤面するのは良いが、その顔を隠す為にどうして俺を中庭の池に突き飛ばした?…いや、わざとじゃないのは分かってるんだ。後から及川に奇行の解説を求めにいったら、「あれは”キャーかっこよすぎるツラい!眩しい!前が見えない!困る!”という感情が何故かハルの右腕を突き動かしんだと思います。それがたまたま背中にあたっただけですね」との事。結果、俺は目の前にあった池に落ちたという訳だ。
もう全く理解出来なかったが、悪気が無いのは改めて分かった。そして片腕で大の男突き飛ばすとか何者だお前の妹。
「今度烏野と練習試合するみたいですね」
「ああ。見に来るのか?」
「はい、ダンス部ではなく個人的に」
みんなに頑張ってほしい、と及川妹は笑っていた。おーおー、やっぱこうして見てると普通の奴なのにな。どうしてかな、どうしてうちのエースを前にすると君はおかしくなるのかな?
「溝口コーチ今の見ましたか!!かっこいぃ……!」
「……岩泉は副将としても申し分無いし、人間としても出来た奴だ。兄の許可が下りたら、お前等とっとと付き合ってくれ」
そしてその奇行を止めてくれ。
「つ、付き合うだなんて…!そんな…!恥ずかしすぎて無理です!!!」
「ぐふっっ!!!!!」
腰に強烈な痛み。大きい針が腰から腹にかけて刺さってきた!?貫通してないか!?
「照れる!!無理!!」
及川妹よ…顔に手をあてて恥ずかしそうにクネクネするのは良いが……お前俺に膝蹴りしたな……?…そうか……これが、矢巾が言っていた…こいつ必殺の…ミサイル…蹴り……、…。
「あれ?溝口コーチどうしました?入り口で寝そべっちゃ邪魔になりますよ?」
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