その妹、強烈につき
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残念美人。
俺がハルさんに対していつも思う事だ。黙ってたら可愛いのに、この人は岩泉さんの事になるととても残念だ。
「国見ちゃん今の見た!?かっこいいよねぇ!」
「すみませんハルさん、俺の視力では見えないです」
おかしいな、俺視力は1.5近くあるんだけど、どうして見え……いや、見えなくて当たり前だ、あんな遠くに居る岩泉さんが見える訳ない。寧ろあれホントに岩泉さんなのかさえ謎だ。俺にはただの豆粒にしか見えない。
「かっこぃい……!」
「………」
でも隣に居る残念美人が恍惚とした表情を浮かべているから、あれはきっと岩泉さん。じゃないと彼女はこんな幸せそうな表情はしない。ああ、この人何でこんなに残念なんだろ。黙ってれば学校一の美人なのにな……。
「………」
「どうしたのその憐れんだ目は」
「神様は残酷だ……」
「?」
俺、鍵当番の渡さんに部室の鍵を渡しに来ただけなんだけど……キラキラした表情のハルさんに袖を掴まれ「一緒に見よう!」とか何とか言われて今に至る。見るも何も俺と岩泉さん毎日会ってますからね?
俺とハルさんが初めて会ったのは北川第一だった。及川さんとたまに一緒に登校してくる可愛い女の子、が彼女だった。妹だよ~と紹介してもらってからは何かと話しかけてもらえる様になった。
記憶が正しければ、当時のハルさんはただの美人だった様な気がする。及川さんは岩泉さんと幼馴染だから一緒につるむ事が多くて、そこに彼女が加わってる場面も何度も見た事があった。
彼女は岩泉さんが好きなんだろうなぁ、っていうのはなんとなく分かっていた。あの人が居たらビックリするぐらい綺麗な顔で笑うから。残念らっきょうの金田一は全く気付いてなかったけど…。
いつからだ。いつからこの人は残念な人になったんだ。誰のせいだ、及川さんか、あの兄貴のせいなのか。
岩泉さんは惚れられた身なので、あの人に責任は無い。でも早くくっついてくれないかなこの人達。じゃないと、矢巾さんの愚痴がいつまで経っても止まらないんですけど。
「ハルさん、暴力は駄目ですよ、暴力は」
「?当たり前じゃない」
「…………」
なんて純粋な目なんだ。数日前体育館で矢巾さんに膝蹴りいれてましたよね?岩泉さんの名前を大きな声で呼んだあの人に膝蹴りしてましたよね?金田一には「あの人二重人格だから」と誤魔化しときましたが、ネタもいつか尽きますよハルさん。
「岩泉さんのどこに惚れたんですか」
「え!」
顔を真っ赤にして窓から体を離すハルさん。そんなハルさんに対し防御の構えを取る俺。
「……………」
「……………」
「………………何ですかその構えは」
「矢巾さんの二の舞にはなりたくないので」
膝蹴りとかマジ勘弁。
「…分かんないの…」
ハルさんはポツリと呟いた。
「気が付いたら、すっっっごく好きになってた!!!」
満面の笑み。ああ、これこれ、この笑顔に他校の人は騙されるんだよ。知らないってのはつくづく可愛そう。この笑顔は岩泉さんに向けられてんの。ダンス部としてちゃんと応援しくれてるけど、声援に力がこもる時はいつも岩泉さんの名前の時だって。
「そうですか。応援してます」
「国見ちゃんは可愛いねぇ!!」
頭をぐちゃぐちゃに撫でられる。不思議と悪い気はしない。お願いだから、このまま美人路線でいってくれないかな。頼みますよ岩泉さん、早くこの人を安定させてあげて下さい。
「?何か落ちましたよ」
「ああ、吹き矢だね」
「ふ、き……」
「この前貴大君と一静君に向けて吹い……おっと、これは秘密だった」
「…………」
岩泉さん、ほんと切実に頼みます。この美人を何とかしてやって下さい。