その妹、強烈につき
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「今日もかっこいいよぉ~……」
「岩泉さんがかっこよくない日は無い」
「お、よく分かってるね矢巾」
幸せそうに笑いながらジュースをすするハル。あー、こうして見てるとやっぱ及川さんに似てるわ。
「あ、笑った」
「おー」
昼休み、中庭でバレーをしていたバレー部3年生を俺たちは2階の渡り廊下から眺めていた。こうして眺めるきっかけになったのは、ハルが先に3年生をのぞき見していたからだ。いや、正しくは岩泉さんをのぞき見していたからだ。
「かっこいいねぇ」
頬を赤く染めて、目じりを下げて優しく笑うハル。髪が風に揺れる度、シャンプーの良い匂いが鼻をかすめる。その可愛らしい横顔を見つめながら俺もジュースをすする。
眼下では部活とは違って緩い空気の中でバレーを楽しむ岩泉さんの姿がある。岩泉さんが笑う度、及川さん(兄)に暴言を吐く度、スパイクを及川さん(兄)の顔面に打つ度、こいつは惚れ惚れした表情で頬を染めるのだ。……あれ?兄さんが殴られてんのに止めねぇの?
神様は残酷だ。こんなに整った容姿を持つハルにどうして岩泉さんに惚れさせただけじゃ飽き足らず「変人」という新キャラを取り込ませたんだ。
ただ周りはハルの本性に気づいていない。ん?何の本性かって?こいつが岩泉さんを前にすると変人になるって事だよ。
「お前さあ」
「うん?」
「そんなに岩泉さん好きなのに、なんで男バレのマネージャーにこなかったの?」
及川さんから聞いた事がある。ハルも小学生の間は少しバレーを習っていたらしい。だったらルールもスコアのつけ方も分かるだろうし、何より毎日岩泉さんの姿を間近で拝見する事が出来るのだ。そんな美味しい状況をこいつが逃すなんて。
「マネージャーかぁ……それは考えてなかったな」
「マジで?」
「うん、絶対ダンス部って決めてたし」
「ふーん」
「でもダンス部だったら、バレーの応援も出来るでしょう?」
「まあね」
公式試合の時はハルを含めたダンス部が部員と一緒に応援を盛り上げてくれる。女子はわざわざチアの格好をして試合の士気を高めてくれるのだ。
そんな時、他校の馬鹿な男共はハルに騙される。キラッキラな笑顔の彼女に勝手に恋心を抱くのだ。いやいや皆さん、こいつ只の変人だから。笑顔がキラキラしてるだけの変人だから。
「矢巾、今何か私に対して失礼な事考えてない?」
「イイエ何も!」
冷たい目で見られ思わず肩に力が入った。ぐぬぬ、鋭い…!
「今度練習試合があるんだよね?頑張ってね矢巾」
「おう。っつっても俺が出れるか分かんねぇけどな」
俺は及川さんの後釜だ。正直きついけど、弱音は吐いてられない。
「大丈夫だよ。お兄ちゃん、矢巾のプレーよく褒めてるよ」
「マジで!?」
「うん。チャラチャラしてるけど、部員の事ちゃんと見てるセッターだって」
やべぇ。それ凄い嬉しいのな。あの及川さんが俺の事褒めてくれるとか夢かな、これ夢なのかな。
「ありがとハル」
「ホントの事だもん」
ニコリと彼女が笑う。その笑顔の完璧さたるや、計算が一切入っていない天然ものなので急に向けられるとやはりドキリとする。でも俺、忘れるな、こいつは可愛いけど変人である。
「じゃあもうすぐでチャイム鳴るし、岩泉さんに声援送ってから教室戻ろーぜ」
「え!?む、無理!恥ずかしいよ!」
「いつもギャラリーから応援してるじゃん」
「あれは、ダンス部のみんなと一緒に応援してるからであって……!」
首まで真っ赤になるハル。お前相当岩泉さんの事好きなのな。
「普通に笑って手ェ振るだけで大丈夫だって」
「無理無理無理無理!!眩しすぎるの!!私には眩しすぎるのよだから遮光板を理科室から借りてきて!!!」
「岩泉さんは太陽か!!」
「そうよ真っ赤に燃える太陽なの!!」
「お前やっぱ変!!」
「何よ急に!!」
「岩泉さんもハルの本性知らないみたいだし、これはもうさっさと教えた方が良い……――」
「残念だ矢巾君。君にはここで死んでもらおう」
なっ、おま、その構えは、ボクシ……――!
「ぐはぁっっ!!!!!!!!!」
「あーっはっはっはっは!!!」
「!今矢巾の悲鳴が上から聞こえなかったか?」
「奇遇だね岩ちゃん、俺にも聞こえたよ」
「及川、お前の妹の高笑いも聞こえたから」
「それは気のせいじゃないかなマッキー」
「現実から目を背けるな。また妹が強靭な力を発揮したに違いない。ちなみにだが俺はこの前吹き矢をだな…」
「やめてまっつん。これ以上可愛いハルちゃんのイメージを俺から消さないで」