終わり良ければ?
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目的地に近づいてきた所で、車の速度が法定速度をかなりオーバーしているのに気がついた。しまった、と思ったものの時既に遅く、後ろから私を追ってくる様に聞こえるのはパトカーのサイレン音だった。あっという間に横につけられれば、助手席に座っていたのはなんと沖田君だった。あちらも私の顔を覚えてくれているのか「あ」とでも言いたげな表情を浮かべている。
しかし楽しくお喋りしている暇はない。もう免停くらっても良いからとにかく現場に行きたいの私は!!自分で地面掘ってあれが夢だと信じたいの私は!!!!
窓も開けずに無視して走り続けると、沖田君がスピーカーを使って喋りかけてくる。
「スピード出し過ぎですぜィ、万事屋の旦那の彼女さ~ん」
「大きな声で何言っちゃってくれてんの君!!!!!」
思わず窓を開けて叫んじゃったじゃない!そしたら沖田君もニヤリ顔を浮かべながら窓を開けて、事実でしょう、と今度は直接言ってくる。運転している地味っぽい男の人が「マジすか!?あの旦那に彼女が居たんですか!?」と驚いているのも聞こえた。…真撰組が嫌いだと言っている割には、銀さんって彼等と交遊があるのが不思議よね…。
「取り敢えずスピード落としなせェ。知り合いのよしみで見なかった事にしてあげまさァ」
「見なかった事にしちゃ駄目よ沖田君!!!私みたいに苦しむ事になっちゃうよ!!」
「え?じゃあ遠慮無く切らせてもらいやす」
「あ!!違う!!そういう意味ではない!!」
「山崎ィ、何kmオーバーだ?」
「えーっと…」
「違うの沖田君1回落ち着こう!!1回落ち着いて君は屯所へ帰ろう!!」
「?何をそんなに焦ってどこに行くんですかィ?あ、旦那のとこ?ヒュ~」
「イライラするぅううう!!!その口笛にイライラするぅううう!!!」
しかしの所、この子は正真正銘の真撰組。銀さんから、頭はチャランポランのサディスト星の王子、という人物像しか聞かされてないけど、間違いなく本物の一番隊隊長!どうせ後でばれるなら今見知った顔に相談した方が良いに決まってる!って言うか最初から素直に通報しときゃ良かったよ!
「隊長!!」
「いや俺あんたの隊長じゃ無いんですけど」
「報告があります隊長!!」
「人の話を聞いて下せェ」
「実は私……!」
まさに言おうとしたその瞬間、沖田君が乗るパトカーに無線連絡が入った。風を切る音が邪魔で全ては聞き取れなかったけど、今まさに私を狂わしている魔の単語だけははっきりと聞こえた。ラグビーボール、不発弾。ノイズでざわついていた声は確かにそう言っていた。
「悪ぃけど、今まさに向かってる方向に不発弾らしきものが見つかったみたいで、避難網を張るんで停止してもらえやすかィ」
「え。今まさに向かってる方向ですか」
「はあ」
「唸れ私の右足ィィイイイイイ!!!!」
「あ!」
「えぇえええ!!?あの人思いっきりアクセル踏みましたよ!?爆弾に突っ込んでいく気満々じゃないですか!!」
「さすが旦那の彼女ともなると一癖二癖ありやすねィ。山崎、俺等も追いかけるぞ」
「はいよ!」
警察のドライビングテクニックに勝てるとは全く思っていませんとも!只今は「現場に直行」という洗脳に近い思いが私の足と腕を動かし、車を我が身の様に自由自在に操っている。あ、私って結構運転上手かったんだー。
沖田号は相変わらずサイレンを鳴らしながら私の横にピッタリとくっついている。今度は本気で怒って追いかけてきてるかも、と思ったが窓から身を乗り出し拡声器を取り出して「待てルパ~ン!」とか言ってるので、何だかんだで楽しそうだ。絶対怒ってない。
とりあえず地域住民の皆様ホントごめんなさい!迷惑運転してホントごめんなさい!!
既に真撰組により付近の避難が始まっているのか、彼等の誘導の下、私とは逆方向に進んでいく人の波を見かけた。みんな実感が無いのか表情は割と朗らかなものだった。
交通整備している警察の指導も無視してハンドルを切って交差点を曲がれば、数台のパトカーが止まっている場所が見えてきた。あ、あ、あそこだぁあ!!!!
「どいて下さぁあああぁい!!!!」
車の中で叫びながらブレーキを踏みつつハンドルを切る。道路との摩擦でタイヤから白い煙ともんの凄い音が辺りに響き渡り、それに気付いた真撰組が顔を引きつらせ、まさに蜘蛛の子を散らした様に逃げまどっていた。気分的にはスターを取った心地だったので、スーパー無敵状態の私が事故を起こす事もなく、プロも驚きのテクニックで私は見事に不発弾前に停車する事が出来た。さよなら!私の普通車免許!
続いて沖田号も私ばりの危険運転で突っ込んできて、あろう事か会社の車の後ろに容赦なくぶつかり停車した。油断していたので思わず額をハンドルで強打してしまう。
「いったー……!ちょ、っと沖田君!ヘルメットは額まで守ってくれないんだからね!?」
「運転してたのは山崎でさァ」
車から出て文句を言ってやれば、後車の2人も下りてきて、運転手の子は「すいません」と謝ってくれた。全然心こもってないけどね!別に良いけどね!
「千早」
「真撰組が修理費を払ってくれるんですよね?」
「それよりも免許出しなせェ。お望み通り永遠に運転が出来ない様にしてあげまさァ」
「千早」
「ちょ、銀さんは黙ってて!あれは、そういう意味じゃなくて!」
「もしもーし、千早さーん」
「んもう!銀さん後にしてってば!」
「あれ?万事屋の旦那が何でこんな所に…?」
「……………………………ぎ、銀さん!!?何してるんですかこんな所で!!!」
「そりゃこっちの台詞だコノヤロー!!!おま、なに真撰組とサーキットしてくれちゃってんの!!?」
「サーキットじゃありません!マリオカートです!」
「それも悪いわ!!」
「って言うか何でこんな所に居るんですか!」
「だからそれはこっちの台詞だ!!」
「おーいみんなァ、これが俗に言う“夫婦喧嘩”って奴ですぜィ」
まだ結婚はしてない!!!と、銀さんと私の声がはもってる後ろで、何やら大きな機械が音を立てながら作業をしている。そこはまさしく私が発見したラグビーボールの場所、そして今まさに掘り起こされたそれは例のブツ!
「銀さん何してるんですか早く逃げないと!」
「どうせ今回も不発だろ?信管確かめりゃすぐ分かんだし、今更逃げたって一緒だろ。……ヘルメット装備してまで不発弾処理見たかったのか?」
「そんな訳ないでしょうが!!!」
どうやらこれを掘り起こしたのは銀さんらしく、依頼者が渡してきた地図に印がついていて、そこを掘り起こして欲しいとの事だという。なんでも徳川の埋蔵金発掘作業中らしく、その途中で不運にも不発弾にぶち当たりこの事態に遭遇しているらしい。依頼者はもう避難済みで、シャベルを持った銀さんだけが残ったんだとか。何故逃げない?
「あ!って言うかここは私の管轄内なので、勝手に掘り起こされちゃ困るんです!」
「マジでか。責任者なのお前?出世したな~」
「えへへ…じゃなくて!!」
危な。流される所でした。
私達がこうやって話している間にも作業は慎重に進められていた。防護服を着ている数人が掘り起こされたラグビーボールを取り囲み、何だかよく分からない事をしている。きっと爆弾が生きているか否かを調べてるんだろうけど、ドラマでも見た事のないこのシーンには全く現実味が帯びない。でもあれが生きてて、ここで爆発しちゃったら私死んじゃいますよね?
「まあ旦那達は車の影に隠れてなせェ。爆発したらみんな死ぬけど」
「やめてくんない!」
恐ろしい言葉だけど実際事実です。取り敢えず銀さんと一緒に気持ちだけでも会社の車の影に隠れた。ああ、修理費どうしよう…。
「………で、何しに来たわけ」
「………聞いてくれますか」
手で顔を隠し、オヨヨと嘆きながら数日前の作業の話と今に至る経緯を話した。
「………ヤベーな」
「ヤベーですね。あー、これ絶対逮捕だわー、やっちゃったわー」
「…あれが爆弾ならな」
「え?」
ボンネットに腰掛ける様にして振り返り、作業の様子を眺めている。その堂々っぷりったるや、パトカーの影に隠れちゃっかり避難している隊士の皆さんにも見習ってもらいたいぐらいだ。っていうか何故真撰組が一般人より後ろに隠れてるんですか。
「爆弾じゃないって分かるんですか?」
「なんとなくなー」
「………」
今みたいに、突然銀さんの言葉から滲み出る“攘夷戦争”の香り。戦ってきた人にだけ分かる何かがあるのだろうか。別にそれは構わないし、不思議な事ではない。只どうして、銀さんは話したがらない空気を出すのだろう。