桜色の片隅で
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「こんばんは」
「おう」
まさか同じ曲で悩んでいたとは言い出せず、ベンチに軽く積もっていた花弁を取り払って隣に座った。
確かにここは眺めが良い。公園全体の桜も見渡せるし、池の水面に反射して見える桜もまた綺麗だ。
千早いわく、自転車でたまたま此処を通った時にこの場所を発見したらしい。しかしそれは昨日今日の話ではなく、数年前の事。以来、春が来る度に一人で夜桜を見ているだとか。……危機感なさすぎだろお前。
「夜の公園の物騒さをなめんなよ」
「すぐ自転車で逃げるから大丈夫ですよ」
千早の傍らには一時サドルが盗まれた例の自転車が…。そういやこいつのおかげで、なんやかんやと千早と喋る機会が作れたんだっけか?ご利益ご利益。
…ともあれ、数年前から春が来る度にここに居たって事は、俺達って毎年知らず知らず通り過ぎてたって事じゃね?
「あー、良い気持ちですね~」
こんな風に呑気に一人で花見をしてる女なんか見た事あったか…?気付いてないだけで、案外本当にすれ違ってた可能性は大いにある。勿体ねぇなぁ数年前の俺。こんなに面白い人物を数年間も見逃してたとは。
出会うべくして出会った……なーんてロマンチックな事を言うのは俺のガラでは無いが、例えあの駅構内に俺が居なくても、きっとこいつとは出会ってたとは思う。説明なんてものは出来ねーけども。
「この週末」
「はい?」
「花見すっから」
「え~良いなぁ~」
「は?お前も来るんだよ」
「……」
何“きょとーん”みたいな顔してくれちゃってんの。何処まで言わなきゃ伝わらないかねこのお姉さんは。
「良いんですか?」
「良いも何も、初めっから数に入ってたし。…で、どうするよ」
「行けます!!!!」
「そらぁ良かった」
無性に喉が渇いてきて、少し残っていたオレンジジュースを飲みきってやった。そのついでに、数メートル先にあったゴミ箱に見事に投げ入れてみせる。すると隣から拍手が聞こえて、アハハと笑っているこいつが居て、得意げにニヤリと笑う俺が居る。
不思議なもんだ。一度出会ってしまえば、こんなに近い距離に座る事も出来る。
「お花見楽しみですねぇ」
とても嬉しそうに笑われると、こっちも誘った甲斐があるってもんだ。
髪にも乗っかってくる花弁を、頭を振って払い落とせば、隣から聞こえてくるあのメロディー。
「♪~~♪~」
またその曲か。
「♪~♪~~♪」
「………」
「銀さん、私ね、ここが凄くお気に入りの場所なんですよ」
あ、曲名思い出した。
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