歌舞伎町美禄物語【四】
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好きです、や、愛してます、よりも衝撃的な台詞だと銀時は思った。
この店のありとあらゆるお酒を持ってきて下さい。
それと同時に、彼女の胃はブラックホールかとも思った。
万事屋には1人可愛い顔した胃腸拡が居るが、彼女とはまた違った意味の胃を持つ女がここに居た。アルコールが程良く回った顔は少し幼く見えて、赤らめた頬が可愛らしい。銀時の腕の中でほくほく笑っている。
求めているのは甘い言葉などではなく、この店のありとあらゆるお酒だ。
「一回落ち着こう。落ち着いて寝てみよう」
「もう寝たから大丈夫です~良いから早く持って来て下さい~」
寝る前より語尾がダルそうにのびているのは酔っ払っている証なのか、ベタにしゃっくりを出しながらお品書きを開く。そして店員を呼びとめ、取りあえず冷酒を頼んだ。
「夜はこれからですねィ姉御」
「これからだね~」
「明日仕事だろーが!」
「昼出勤だから大丈夫です~ウフフ~」
それより銀さんお酒が進んでませんね、と言いながら彼女は銀時の分のお酒まで追加注文を頼む。近藤の奢りという頭は既に無く、最早飲み放題だったよねの勢いで次々にアルコールが運ばれてきた。
ひとまず小瓶に入った冷酒を取り「かんぱぁあい」と良い笑顔で叫んだ後ヤクルトの様に飲み干した。とんだ怪物を目の前にして、銀時は苦笑いを浮かべる。
眠れる獅子に会ってみたいと言っていた彼女だが、まさかそれが己であった事を知る時は来るのだろうか。いっその事言ってやろうと思ったが、それは面白くない、と沖田に止められた。自分の彼女が歌舞伎町の伝説として生きていくのは何ともいえない気持ちである。
「お、姉ちゃん良い飲みっぷりだねぇ」
「どーもどーも」
「あ、待…っ!」
そんな事をぼんやり考えていると、彼女が隣の席に呼ばれ一升瓶を抱えたまま移動し始める。隣は隣で出来あがっていて、中年サラリーマンの真ん中で彼女が日本酒を飲んでいる。止める術はないと悟り、銀時は沖田に向き直った。
そもそも、歌舞伎町の眠れる獅子とは誰がつけた名前なのか。それは沖田も知らないらしい。
彼女が江戸の出身かどうかは知らないが、おそらく成人したあたりから歌舞伎町で飲みあさっていたのだろう。でなければ25,6の人間がそう易々と伝説になれる程この街は甘くない。築き上げてきた飲酒歴はやがて大きくなり、大男を作るまでになった。その正体がまさかこんな小娘だとは皆知らない。
「まー、別に警察の厄介になる程嫌な酔い方じゃないですし……良いんじゃないんですかィ?」
「良い訳あるか。俺これからアイツと飲む度どうすりゃ良いんだよ!」
毎回伝説と飲める程肝臓強くねーし、と言いきって銀時はお猪口をちびちび煽る。
先日歌舞伎町を歩いていた時、伝説に潰された酔っ払いが店から運ばれるのを目の前で見た銀時にとっては、二の舞にはどうしてもなりたくない。
しかしの所彼女の勢いはもう止まらないので、ほうっておいた数分の間で隣の席はとんでもない事になっていた。
バターン!と音が鳴ったと思えば、彼女の高笑いと周りの歓声が居酒屋を包み込む。その波紋は更に広がり、やがて全員の視線を独占しているのは腰に手をあてて一升瓶を掲げている彼女だ。
「オーホッホッホッホ!私に勝てると思うてかぁ!!!」
ダミ声など感じさせない綺麗な声で、彼女は勝利の証といわんばかりにラッパ飲みを始める。
伝説に潰されたサラリーマンが、同僚の手によって店の端へ寄せられる。
「おぉ、さすが姉御!」
「ありがとう沖田君!私まだいける!」
「是非いくな」
祭の様な騒ぎから彼女を引っ張りだし、銀時はなんとか隣に座らせた。お酒で赤らんだ顔で、なんですか銀さん、と終始笑顔だ。
「今日はそろそろ帰るぞ」
「えぇー!?まだまだこれからじゃないですかー!」
「そうですぜィ旦那!まだ飲みやしょう!」
「それゴリラの金だよね?自分が払うみたいな言い方だけどゴリラの金だよね?」
とっくの昔に眠りについたゴリラは起きる気配が無かった。
起きて下さいよ近藤さ~ん、と彼女が声をかけるが反応がない。ただの屍のようだ。
まだ飲みたいですと渋る彼女を何とか言い聞かせ立たせようとした時、酔っ払いの波から突如として声が上がった。
「そこの女史ちと待たれぃ!!」
「んぁ?」
どこから呼ばれたのか分からず、彼女はきょろきょろと辺りを見回す。
その声は聞き間違えでなければ銀時は知っている。厄介な事態にそいつを投入したら更に厄介になる事も知っている。頼むから人違いであってくれと念じるが、店の奥から颯爽と出てきた人物は、残念ながら銀時の知り合いだった。
「ヅラ!!!」
「ヅラじゃない!ヅラ子だ!!」
いつかのバイトで女装をしていた事があったが、まさか今日まで引っ張っていたとは知らず、無駄に似合ってるのに腹が立った。
彼女は桂と一度面識はあるものの、酒気帯びな上に女装までされては誰だか判別はつかなかった。とろんとした目で呑気に「初めまして」とだるそうな挨拶を述べている。
「帰るのはまだ早いぞパー子」
「誰がパー子だ!!!」
「そこの女史、中々見事な飲みっぷりを披露するではないか」
「え?そうですか?嬉しいな~」
おだてられて、恥ずかしそうに頭をかく彼女。面倒くさそうな事態になる匂いをひしひしと銀時は感じた。なので、すかさず桂を指差し「バルス!」と唱える。
「滅びるのはまだ早いぞパー子」
「だからパー子じゃねぇ!」
桂は彼女に近づいて、片足を座敷にかけてその膝に肘を置き、実に男らしい体勢のまま彼女に向かってこう言った。
「日本男児として女史に負ける訳にはいかぬ。どうだ、俺と飲み比べをしようではないか」
「いいとも~」
「よくねェェエエエエエ!!!」
予想通りの厄介な展開に銀時は頭を抱えた!疲労が15上がった!
酔っ払いの沖田は相手が桂である事をよく気付いていない!銀時の疲労がさらに3上がった!彼女の御機嫌は4上がった!
どうなる深夜の歌舞伎町、突発的に始まった厄介な人間と厄介な伝説の飲み比べ!銀時の運命は如何に!
次回へ続く!!!
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