歌舞伎町美禄物語【ニ】
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決して目に優しくない光の街が、夜の江戸の一角を占領している。
彼女からの思いがけない誘いで飲む事になった銀時だが、彼は「なんか違くね」と少々眉間に皺を寄せている。
いつもとは違い着物に袖を通した秋月は、簪をシャランと鳴らしながら銀時へ振り返った。
「お姉さん、冷静に考えてみなさい」
「私はいつだって冷静です」
「……はあ…もう良いわ……。どうせお前にゃ銀さんの乙女心は分かんねぇんだ!!」
「はあ?坂田さんより私の方がずっと乙女ですよ!!」
「俺だ!!」
「私です!!」
至極どうでも良い言いあいを進めながら2人は行くあてもなく歌舞伎町を歩き続ける。
歌舞伎町に馴染む煌びやかな且つ魅惑的な衣装を着ているお姉様が気にならないと言えば嘘になるが、銀時にとっては隣に居る彼女の方が気になる対象になる。
そもそも、乙女心がなんたるかを言えば、銀時の言葉で分かりやすく言えば「これが2人で初めてのデートってやつになる訳だろ?俺も遊園地に行くような柄じゃぁねーけど、歌舞伎町ってどうよ。飲み屋なら他にも腐る程あるってのに歌舞伎町ってどうよ!!?」というものだった。しかし江戸の住民である彼女にとって歌舞伎町はコンビニと同じ感覚だ。ちょっと行ってくるねー、と言ってすぐにでも遊びに行ける様な場所に近い。
「隠し事ってよく無いですよ」
「それなりのプライバシーも必要なんですぅ」
「……まあ別に坂田さんの乙女心なんて知りたくもありませんけどね!」
「ンだと!!って言うか、お前いつまで呼び方がさか」
「あ、私の行きつけの店に行きます?ホッケが美味しいんですよー」
「人の話を聞けコルァァ!!」
別段2人で出かけるのが嬉しくない訳ではない。寧ろ彼女にとったら銀時と飲めるなど夢の様な話な訳であって、いつもより3割増に笑顔が増えているのには銀時も気付きつつあった。テレビで、器の大きい男はモテると言っていたのを思い出し、仕方ないかの心を以て今夜を付き合う事にした。
本当に沢山の人間が歌舞伎町を行き交うので、時たま肩がぶつかってはよろける彼女。いい加減「大丈夫か」と聞くのも面倒になってきたので、オーバーリアクションは承知で手を握って若干隣へ引き寄せた。
「な、なななな何ですか!!」
「……」
予想通りの反応に呆れるしかなかった。
「だってお前ぶつかるだろ」
「だ、だからって、手!手!!」
「はぐれねぇで済むジャン」
「……うぅ………私には余裕があまり無いんですから、か…からかわないで下さい……」
何その可愛い反応、と思わず口に出してしまいそうになった。近づきすぎれば異様に照れを発動し、無意識なりに銀時の心をいつも揺さぶった。これお酒が入ったら今夜いけるんじゃね!?歌舞伎町の更に奥のパラダイスに銀さんイケるんじゃね!?と包み隠さない下心が一気に頭を占拠した。
「取りあえずチューするか」
「調子にのるなッッ!!!!」
「いででででで!!!!」
繋がれていた手を捻られ道のど真ん中で関節技を決められる。彼女の顔はこれでもかと言うぐらい真赤で、余裕が無いのがありありと分かった。
そんな異質の2人をたまたま発見したのは沖田で、今夜は非番なのかいつもの隊服ではない。
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