寄ってけ泥棒!
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山崎調べによると、生徒会は12時ぐらいに一度全員ここへ戻ってくるらしい。その時がチャンスだった。
時間を確認してみるとまだ余裕がある。ならば神楽達と合流して文化祭に自分も飛び込み、美味いと評判のみたらし団子を食べに行こうと、手早く準備をし終えて意気揚々と扉を開けた。
目の前に誰かが立っている。すーっと顔を上げると、何やら怒った様に見える服部の姿があった。
「こんにちは服部先生」
「ああ、こんにち……じゃねぇえぇえええ!!!」
「何ですか、大声出さないで下さいよ~」
生徒会室は1階にあるので、幾ら教室棟と言っても上の階程騒がしくはない。その分服部の怒鳴り声がよく響いた。
「奥には保健室もあるんですよ?」
「お前俺の友を返せ!!」
「友……?…あー、あれですね。あれなら、ばっちし定位置に置いといたんで大丈夫でっす!」
「あいつの定位置は俺なんだよ!!!」
「1個ぐらい犠牲になって下さいよ~」
口を尖らせ、一切の反省を見せない女子高生の許されざる所行に、普段から穏便…とは全く無縁の服部はいつも通り怒鳴った。
「良い度胸だ夏目!」
「何ですか急に」
「お前今暇だな?よし、暇なんだな」
「大忙しですよ!文化祭を楽しまないと!」
フンッと意気込んで走り去ろうとする彼女の肩を服部は逃がさなかった。
「ありがとう。プリント作りの手伝いをしてくれるなんて夏目さんは優しいな」
「一言も言ってないですよ!!」
「良い生徒を持てて俺は幸せだ」
「拉致られるー!!!」
抵抗虚しく職員室まで連行され、大量のプリントの束を持たされる。学校行事がある期間は生徒会室と同じく職員室も数々の消耗品が乱雑に置かれていた。確保出来るスペースは、それぞれの職員の机上しかない。だがそれではプリントが全て置けなかった。
本来ならば職員室の後ろにある長机で作業をするらしいが、そこをのぞいてみるが結果は同じ。
「きたなーい」
「先生達も人間なんだよ、分かったか」
「あ!お菓子が置いてある!いーけないんだー、いけないんだー」
「毎日持ってきてる奴に言われたくねぇよ」
そう言われて額を小突かれれば、流石の彼女も苦笑いしか出なかった。
「って言うか先生も少しはプリント持って下さいよ!」
「保健室なら誰も居ねぇかなー…」
全く聞く耳を持たない服部は口笛を吹きながら、床に置かれているダンボールを蹴飛ばしながら進んでいく。
「服部先生のアホー……」
聞こえない様に小さく呟き、ずり落ちてきたプリントの束を抱えなおした。
それにしても、職員室は物で溢れかえっていた。
職員が出払っている今、改めてこの部屋の混沌ぶりを感じる。
ロッカーの上には入学式・体育祭・文化祭など、それぞれ行事名が書かれたダンボールが積み重ねられている。きっと必要なものが分けられて入っているのだろう。
長机にプリントを置いて、怪しくない程度に職員室の中を観察してみた。
とある職員の机には我が子の写真や、今持っている教え子達のクラス写真があった。まだ丸付けが終わっていない小テストもあった。飲みかけのコーヒーが入ったカップもあったし、若い女の先生は「デート」と堂々と書かれた卓上カレンダーも置いていた。ご丁寧にピンク色のペンのハート付きだった。
小学生の頃は、「学校の先生」は完ぺきな存在であると勝手に思っていた。悪い事をすれば怒られるし、良い事をすれば褒められる。それは親とはまた違った立場からの教育のせいか、「先生」という存在を「人間」として見ていなかった。
「(でも思い返してみれば、小学校の職員室も結構汚かったかな…?)」
小学校とは違い職員の数は倍以上だ。名前も知らない先生もこの中に沢山居る。
上の階では店が出ている筈なのに、職員室にあまり音は届いていなかった。スピーカーから流れている控えめなBGMも、広い職員室全体には響かない。
ズラリと並んでいる机を眺めている内に、彼女の担任の机の前へやって来た。
特徴的なものは置いていない。教え子の写真を飾る様な性格ではないし、カレンダーも置いていない、テストも無い。珍しく甘いものも置いてなかった。銀八の机にしては少々拍子抜けするぐらい整頓されていた。
「なぁーんだ、つまんないの」
一体何を期待していたのか彼女自身よく分からないが、自然と口から出てしまった。1枚ぐらいクラス写真を飾ってくれても良いだろう、と少し寂しくなってしまったのかもしれない。
そろそろ保健室に向かった服部の後を追わなければ、更に仕事を追加されそうで恐ろしい。
置きっぱなしのプリントを取りに長机の所へ向かう途中、ソファーから転げ落ちていた何かを蹴飛ばしてしまった。
そこには「職務怠慢!」と立派な字で書かれてある紙が貼られた週刊誌があった。
