寄ってけ泥棒!
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忙しなく働かされている山崎は、かつて聞いた事のない叫び声を聞いた。
「頭!頭ァァアア!!」
「頭がァアアア!!」
「高杉ィイイイイ!!!」
あたま?高杉?
自分のクラスメートの名前も最後に叫ばれた事に疑問を抱き、声のする方へ向かった。
そこにはZ組の生徒数人が「高杉が遂にぃいい」と叫びながら項垂れていた。
面倒くさい臭いしかしなかったので山崎は見なかった事にしようと踵を返したが、不運にも見つかってしまった。風紀委員という腕章をつけている限り、頼られるのは致し方ない。
「……何、どうしたんだよ」
「高杉が遂にやっちまったんだよぉお」
「あの馬鹿野郎ォオオ」
一体何を、と追求される前に告げられた内容は、きっと平和な高等学校では起こらないであろう衝撃的内容であった。
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「うーん…見つからないな……」
望遠鏡から目を離した近藤が言った。
風紀委員会の臨時活動場所として借りている地学教室は特別棟の3階にあって、隣にある教室棟とは違う静けさを保っている。それもその筈、ここは一般客は入る事が出来ず、本校生徒の控え室になっているのでお祭りの様な賑やかさは声だけしか届いていない。
窓際に腰掛け、難しい顔をして望遠鏡を構える近藤は教室棟を観察しているようだった。うじゃうじゃと人が蠢く廊下にレンズを向けたり、催し物がある中庭に向けたりと忙しそうだ。
土方はてっきり、先ほど通報の入った「みたらし団子食い逃げ事件」の犯人を捜しているものだと思っていた。犯人の顔はわれている。白い図体に大きな目に黄色いくちばしを持ったものの犯行だ。
そんな奴は学校には1人しか居ない。
出世払いで返す、というメモ書きを残していったらしいが、その場でみたらし代(50円)を支払ってもらわなければ困るとの事で店から連絡が入ったのだ。
「あれだけ目立つ奴なら裸眼でも見えるだろうよ。……パッと見、居ねぇようだが……」
「そうだな…あれだけ眩しい存在なら望遠鏡で見るのは危険か…一体どこに行ったんだ……」
いつになく真剣な顔つきの近藤に、「たかがみたらしで…」と密かに思っていた自分を土方は叱咤した。たかがみたらし、されどみたらし。夏目ならそう言いそうである。
模範的な活動態度を見せる近藤に倣い、土方もなんとなく隣の校舎を眺めた。エリザベ……みたらしの犯人は見当たらない。
「そう焦るなよ近藤さん」
「いやしかしだな…」
「クラスに戻れば会えんだろ?その時に捕まえれば良いじゃねぇか」
「そうだな。ガッシリと抱きしめるしかないと俺も思う!」
「そうそう、ガッシリと抱きしめ…………抱きしめる?」
少し話が噛み合わない事に首を傾げるが、近藤は至って真剣に人探しを続けている。そして悔しげに本音をこぼした。
「くっそー…!何処に遊びに行ったんだお妙さん……!!!!!」
「そっちかいィィイイイイ!!!!!」
「え?そっちってどっち?」
「こっちの事じゃねぇのかよ!!!」
「どっちの話をしてるんだトシ」
全く会話が成り立っていない2人の喧嘩を止めるかの様に同時に携帯が鳴った。タイミング的に、誰かが近藤と土方に一斉送信をしたのだろう。
それは、校舎を見回っていた山崎からのメールだった。
件名 猟奇事件
本文 3年Z組の高杉が人間の頭部を持って校内を徘徊中との目撃情報有。
「こえぇえええええ!!!!」
流石の衝撃内容に、その携帯を持つのすら恐ろしくなった近藤は「怖い!」と騒ぎながら休憩していた後輩へ携帯を投げ渡した。それをのぞいた後輩達も「110番せな!」と騒ぎ始める。
段々と広がり始めた波を1人冷静に見ていた土方は、昨日の文化祭の方がまだ平穏だったなと遠い目をしていた。
「それが本当な訳がねぇだろうが!!いいから騒ぎが大きくなる前に高杉を捕まえに行くぞ!」
しかしすぐに鋭い一喝をいれて、土方達は地学教室を出たのであった。
ある意味不幸のメールよりもインパクトがあるこのメールは、山崎から近藤・土方・沖田へ送られ、沖田から夏目にも転送されていた。ちょうど生徒会室の扉に手をかけようとしていた彼女も思わず動きが止まった。
「マジでか」
誰かに転送したい気分になったが、それよりも復讐が先なので案外あっさりと気を持ち直し、誰も居ない生徒会室へと足を踏み入れる。
たくさんの紙と備品と消耗品が所狭しと置かれているこの部屋で、偽生徒会長と化したマネキンを堂々と座らせておけば準備は完了。後は突っ込みの評価をしてやるだけだ。そして今朝方、服部からもらった(盗んだ?)ボ●ギノールを手に持たせる。さあ、この意味のない組み合わせにどんな第一声を上げるのか!むくむくと広がる悪戯心が口からニヒヒと怪しい笑いとして滲み出ていた。
