奇天烈文化祭
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「ふあ~ぁぁああぁぁ」
「……」
「あぁぁあああぁぁぁぁああ」
「……」
「あぁぁああぁぁぁぁあああ」
「いや!うるせぇよ!どんだけ長い欠伸出してんだ!!」
「あ、今新記録出来そうだったのに」
「ちょ、お前もう帰れよォオ」
めんどくせーよホントにお前めんどくせー、と言って服部は職員室を出て教室へ向かった。別に普段のやり取りなので、特にオチは無い。
腕時計をのぞけば、9時を示していた。そろそろ体育館での集会を終えて生徒達がそれぞれの教室に戻ってくる時間だ。教師も大体体育館に居るので、職員室はどこかヒッソリとして静かだった。これから賑やかな文化祭が始まる気配はまだ感じない。
銀八は今度は小さな欠伸をして、肩を鳴らしながら立ちあがる。そして、劇の準備に早速取りかかる教え子たちの様子でも見に行こうと、職員室を出たのだった。
「そこのセットもう少し右にお願い」
案の定、体育館で準備をしていた3Zを見つけ、そして壁に座り呑気に寝こけている夏目の姿も見つけた。一緒に登校した沖田曰く、昨日は緊張して眠れなかったって言ってやしたぜィ、との事。小学生の遠足前か、と突っ込んでみたが起きる気配は無かった。
赤ずきんの衣装は妙に似合っていて、実際に物語に登場しそうだと思った。これだけ抜けてる赤ずきんなら、お婆ちゃんと狼が入れ替わった事も気付かず食べかけられてしまうだろう、と。
「ハル、いい加減に起きなせェ」
「えへへ……もう食べられないよぉ…」
顔をだらしなくニヤケさせながら、夢の中の話をむにゃむにゃと呟いている。
中々起きないので、沖田がどこからともなく取りだしたハリセンを振り上げたと思えば、強烈な面を一発。夏目の叫び声が体育館いっぱいに響き渡った。
「いった!ちょ、痛っ!何今の!?何が起こったの!?」
「制裁でさァ。ほれ、さっさと行くぜ」
「え、ちょっと待って。今のホントに何?え?総ちゃん何でハリセン持ってんの?」
「小道具でさァ」
「赤ずきんにハリセンなんか必要だったかなぁ…?ちょ、頭いたっ!あ、坂田先生!私どうしたんですか?何されたんですか?」
銀八に答えを求めるも、彼女は狩人の手によってずるずると引っ張られてしまう。寝不足な割には、小さな背中はやけに元気にはしゃいでいる。
頭が痛む謎はさておき、引っ張られながら「円陣の掛け声は何にしようか?」と沖田に笑いかけている。
「そうですねィ…。土方!死ね!コノヤロォオ!」
お前が死ねェエエという土方の叫びが体育館の舞台裏から聞こえた。やだよそんな掛け声、と彼女は楽しげに笑っていた。
**********
午前9時30分。正門が開いて、保護者や生徒の友人達が入ってくるや否や校舎はあっという間に祭の会場と化した。あちらこちらから呼びこみの声がかかり、中庭では早速色んなイベントが行われている。銀八は控室になっている理科室から、隣の教室棟の賑わい具合を眺めていた。
幸いな事に、理科室のある管理棟は関係者以外立ち入り禁止となっている。生徒達は出し物の準備で出払っているので、教室棟とは別の空間を保っているこの部屋で思うがままグータラな時間を過ごしていた。
体育館もそろそろ開場している。客もちらほらと入り始めているだろう。
想像していたより緊張していなかった教え子たちを思い浮かべた。
やる時はやる、と言うよりも、やらかす時はやらかす奴らだとよく分かっているので、何とかなるだろうと勝手に感じていた。現に主役であるヒロインが本番前に呑気に寝こけていたのだ。あの堂々っぷりには思わず笑えた。
40分から劇が始まるという事なので、銀八もそろそろ腰を上げて体育館へ向かう。その途中で服部に会い「お前大丈夫なんだろうな」と釘を刺された。
「何が?」
「劇だよ。生指的にオッケーな内容なんだろうな」
「ウン、キット大丈夫」
「何その片言怖ェーんですけど!頼むから変な事はやらかすなよ!?」
「あ、お前生徒指導担当だっけ?」
「お前もそうだろうが!」
「え、そうだっけ?」
何度か生徒指導の会議すっぽかしやがって!と過去の事を振り返って服部は角を立てる。そんなに怒ったら痔が悪化するぞ、と銀八。聞いた事ないわそんな理屈、と服部。
そんな2人が連れ添って体育館へ到着すれば、彼等が思っていたより客が入っていた。
「おー、スゲーな」
「ホントに大丈夫なんだろうな。お前のクラス変な事やらかさねぇだろうな」
「ダカラ大丈夫ッテ言ッテルダロ」
「片言やめてェェエエエ!!!!」
服部の不安を煽るだけ煽って、銀八は後ろらへんの席に適当に座る。今下ろされている緞帳の後ろで急ぎ準備している彼等を想像しただけで、何故だか笑えた。
「…何ニヤニヤしてんだ、気持ち悪ぃ」
「いや~、いつもちゃらんぽらんなあいつ等だからな~、こうも真面目に取り込む事も出来るんだと思えたら笑えるだろ?」
「そうかぁ?」
「あいつ等も、もう卒業だしなー」
彼等は巣立って行って、教師はまた学校へ置いてけぼり。何度目になるか分からないが、またあの奇妙な孤独感を味わわなければいけないのだと思うと、それもそれで笑えた。
しばらくすれば、照明がゆっくりと消されブザーの音が鳴り、ナレーション役である山崎の声で会場の案内放送が入った。
卒業するんだな。静かに呟いた服部の声には聞かないふりをして、銀八は組んでいた足を入れかえたのだった。
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