何故何故
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下校時間でにぎわう3年Z組。教室を出る際、総ちゃんと神楽がいつもの如く取っ組み合いを始めていた。ホント、元気ですね2人とも。
今日は放課後の劇練習がないという事で、夏目ハル、足早と家に帰って昼寝をしようという訳です!へへ!
ちなみに、我らが担任の坂田先生は本日お休み。なんでも熱が出たらしいとか?
昨日、先生は廊下でぶっ倒れました。
それを目の当たりにしたのはすぐ傍に居た私ですからそりゃも~驚いたのなんのって。混乱して、ずっとホイミを唱える事しか出来なかった私は無力も同然。皆で保健室に運んで、目が覚めるまで居させて下さいと養護の先生に頼んで、気がついたら爆睡してました。土方君に起こされたのは8時前で、先生もとっくに目覚めててソファーにどっかりと座ってらっしゃいました。ね、寝顔をさらすなんて一生の不覚……!
大丈夫ですか、と聞けば、心配かけたな、と先生。心配かけたな、じゃ質問の答えになってません。結局の所大丈夫じゃないのだろうと思うしかなかった。私が出来るのはここまで。総ちゃん達が送ってくれるというので、同じく爆睡していた近藤君を(土方君が)叩き起こし私たちは下校したのです。少しだけ顔色の戻った先生が門の所で見送ってくれた。それが昨日の話。
そして今日、先生はやはり体調が戻らず欠勤した訳です。服部先生曰く「あれは只の仮病だ」とおっしゃっていましたが、声音が少し優しかったのが気になります。きっと此方に心配をかけさせまいと配慮して下さっての事でしょう。服部先生ありがとう、この前痔の種類を深く追求してごめんね。あとテストも悪い点取ってごめんちゃい。
そんな訳で、明日は坂田先生も元気になってるだろうかとボンヤリ考えながら家路につく。その途中、いつも常備している飴が無くなっていた事に気づく。きっと色んな人にあげすぎたからだろう。あれが無いと口がとても寂しいので、私は家に着く前に近所のコンビニへ寄り道をする。まあそこには案の定、今日の午後から居なかった高杉がレジに居る訳でして、お客さんが誰も居ないのを良い事にカウンターで雑誌を読んでいた。
「……フリーダムな奴め」
「暇なんだから良いじゃねぇか」
「まあ良い。これをおくれ」
「おま……可愛くねー」
「なんだと!」
カウンターに置いた黒飴を見て、高杉は心底ゲンナリした顔つきでバーコードを読み取った。黒飴のどこが悪い!この黒々した感じが最高じゃない、と力説してみても、残念ながら彼には届かなかった。そんな事より学校をさぼってバイトするなんて何事ですか、と嫌味ったらしく言ってみても、高杉はのらりくらりと私の言葉をかわしてしまった。
「今日は練習は無いよな?」
「無いよ。……あったとしてもどうせバイトに来るんでしょ?」
「照明なんざやる事ねぇしな」
おやおや、これだから協調性のない奴は困りますね、文化祭とは誰一人欠けずに成功させなきゃいけないのに。と言ってみれば、青春だねぇ、と彼は笑う。他人事のように笑ってるけども、自分もその青春真っ只中の高校生である事を忘れてませんかね?
「お前この後暇か?」
「ううん、チョー忙しい!」
「よし、暇なんだな、俺に少し付き合え」
「あれ?私の日本語は貴方に届かないの?」
デートのお誘いならお断りだ。こっちだってお断りだ。
そんな会話をした後に高杉はレジを離れて、そそくさとスタッフルームに戻ってしまった。なんだなんだ、私は一体どうすれば良いんだ。なんだこの放置プレイは。
意味が全く分からないので、高杉が消えた隙に外に出て自転車へ跨った。私はこう見えても忙しいんだよ、昨日の晩に録画しておいたバラエティー番組を見ないといけないんだよ。そう意気込んで強く踏んだ右足のペダル。
しかし車輪は大きく前に進まず、しかもぐいぐい後ろに引っ張られている感覚がある。
「逃げようたってそうはいかねぇ」
「ギャー!捕まったー!!」
早々と制服姿に戻った高杉は何かが入っている袋をカゴにのせてきて、そして定位置かの様に荷台へ乗っかって来た。
「取りあえず進め。道案内は後ろから俺がする」
「やばいやばい、私取り憑かれてる。だって後ろが重くなったもの。それに鬼みたいな声が聞こえるもの」
般若心経を唱えながらもう一度ペダルを踏んでみる。明らかに重いけど、坂に差し掛かった所でようやくスピードが出てきて、高杉は次の信号で右に曲がれと指示する。
振り落としてしまえばきっと私の命は無い。只でさえ目的地が分からなくてヒヤヒヤしているのに、気をつかいながら2人乗りというのは想像以上に体力を奪っていった。
「ねえ、後何分ぐらいこげば目的地に着くの?」
「あと30分ぐらい」
「マジでか。それマジで言ってるのか」
30分こぎはじめた所で更に30分追加宣告をされた自転車は、と言うか私は、隣町にまで到着していた。これから更に向かう先に一体何があるのか、目的はなんなのか、色々聞きたい事があるのに残念ながら酸欠気味で喋る余裕が無い。
高杉は悠々と携帯をいじっていて、私がたまに意地悪でわざと大きな段差を降りてみれば容赦なく小突かれた。そろそろ背中に穴が空いてくるんじゃないかなコレ。大丈夫かな、風穴とかが出来て全てを吸いこんじゃうんじゃないかな。そしたらまず真っ先に高杉を吸いこんでやろう。
「お前今変な事考えただろ」
「めめめめめめ滅相も御座いません!」
ドスの利いた声で呟かれたせいで私の寿命は一日は縮みましたとも。
そうして私は剣道部で培った体力をフルに使い、見事に1時間も自転車をこぎ続けました。こんな事なら劇の練習してた方が良かったよぉぉおお!!!
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