きみがわらうとうれしくなる(3)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「黒飴食べて大きくなって下さいね!」
「黒飴にそんな効果あったか?」
中々滅多に食べないアイテムをゲットした所で、彼女はまたゴソゴソとポケットをあさりだす。そろそろ教室に戻って弁当を食べないと昼休みが減るというのに、銀八は何故か彼女を追い出そうとはしなかった。見てて飽きないというか、今度は何をしでかしてくれるのか楽しみだと言えるぐらいの器が出来たというか………それなりに、2人の関係が変わったのだ。
そして次に彼女が銀八の机に置いたのはピーチ味の飴だった。ようやくまとも(?)な飴が出て「おぉ…!」と彼が声を上げる。
「それも先生に差し上げます」
「ピーチ味嫌いなのか?」
「うーん……強いて言うならあまり好きではありませんかね…」
「へぇ……」
意外な事実を知りつつも、軽く礼をのべてその飴も貰う事にする。
すると彼女は周りをキョロキョロと見渡して、この飴をあげたことは内緒ですよ、と小さな声で言ってくる。それにつられて銀八も小さな声で応えた。
「何でだよ」
「その飴もらったものなんです」
「あ?」
「もらった手前"いらない"とも言えなくて、仕方なくもらったんです」
「おま、ピーチさんに謝れ」
「ピーチさん!?ピーチさんに謝るならサッカー部に謝りますよ!」
「おー、そうしろそうしろ……って何でサッカー部?」
「あぁ、その飴サッカー部の子にもらったんです」
「………………………………へぇぇえぇー………………………何?マネージャーから?」
「いえ、部員ですよ?部活終りにいつも糖分補給を兼ねて飴をなめてるらしいです。その貴重な飴を断る訳にもいかなくて…」
へへへ、と照れ笑いしながら頬をかく彼女とは正反対に、銀八の顔があからさまに歪んでいる。
「………」
「………」
「……先生、何故私は先生に睨まれているのでしょう?」
「元々こんな目だ」
「違います絶対違います。いつもはもっと生気の感じられない顔と目をしています」
「何気に失礼だなお前!」
では私はこれで失礼します、と彼女が立ち去っていく。机の上には報酬としてピーチ味の飴が置いたままだ。
Z組には不思議とサッカー部が居ない。となると他クラスからもらったという事であり、わざわざ異質のZ組の赤ずきんに餌付けをしようという根性をお持ちの輩の心底には破廉恥かつ甘酸っぱい考えがありそれに気付かないあの赤ずきんはまんまと罠に引っ掛かって今度はマスカット味の飴を貰ってくるのではなかろうか云々かんぬん。
想像が想像を呼び、宇宙のように果てのない考えに一度銀八の頭がフリーズして机に伏せた。
だが徐々に落ち着きを取り戻し考え付いた答え。
「別に俺には関係なくね?」
その通りだ。
心の中の自分だけが賛同して何度も頷いてくれるような気がした。
別に関係ないと言うか全く関係ない。彼女がどこで餌付けされようが、何の味の飴をもらおうが、銀八には全くもって関係のない事だった。
腕から顔を上げれば、目の前にはポツリと置いてある飴が置かれてある。
「可哀想になぁ、オイ」
独り言を呟きながら銀八はその飴を指でつついてみる。
本来食べてもらえる筈の人に食べてもらえず、そして譲られたにも関わらずその人にも食べてもらえず、何の因果か糖分好きの教師の所まで転がってきた。この3人の関係性があるのならば、互いに彼女の事を知っているだけ。
どこか寂しげに見えるピーチ味の飴を、銀八は黒飴と同じようにして胸ポケットにしまったのだった。
