ため息をつく彼
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今なら空を飛べそうな気がする。
テストの最終教科が終わった瞬間、彼女はあまりの達成感を抑えきれず、静かにそう呟いたという。
お前バカだろ。
サドな幼馴染みが間髪入れずに突っ込んだのは言うまでもない。それでも彼女の顔は緩んでいて、戦い抜いたそのテスト期間の自分を心の中で褒めていた。
「っしゃあ!スタバ祭!」
自転車置き場で彼女は沖田に嬉しそうに言った。このテストが終われば、後は高校生活の最後に控えている学期末テストしか残っていない。点数はどうにしろ、取りあえず終わったという事実に胸が躍った。
「欠点は取ってそうですかィ?」
「もちろん!」
即答されてしまっては、今回も家庭教師役をした沖田と土方の面目が立たないが、まぁいつもの事なので彼らは特に気にしない。欠点を取ったなら、特別課題で見事に補うのが彼女の凄い所であり、恥ずかしい所。だが本人はどく吹く風。楽しそうに笑いながら風をあびている。
3教科しか無いので、昼までに終わってしまったテスト最終日。これが3年生でなければ部活動もあっただろうが、受験生にそんな縛りは無かった。引退した、という事実は重くとも、その現実はやけに軽く、心なしかペダルも軽く自転車はすいすい進んでいく。
ねぇ総ちゃん。風を切って走る中、彼女が急に語り出したのは、彼女の家が目前に迫った時だった。それまで他愛も無い話をしていたのだが、急に声が変わったような気がして「ん?」と応えた沖田の声はどことなく優しかった。
「あのね総ちゃん」
「何でィ」
「うーん……言いにくいんだけども…」
「?」
言いよどんでいる間に家の前に着いてしまう。そんな言いにくい事なのだろうか、と思案したが、彼女の口から出てきたのは何の変哲もないサボり学生の台詞であった。
「明日!私学校をさぼりまっす!」
笑顔で敬礼を決め、そして何事もなく自転車をガレージに止めて家の中へ入っていく彼女。もちろんバイバイと手を振る事は忘れなかった。
「……はい?」
1人取り残された沖田だけが、眉間に皺を寄せて首をかしげた長閑な昼前だった。
1/2ページ
