カムバック夏休み
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「お、来たアルー!!」
「おはよー!」
教室に飛び込んでみれば、神楽が真っ先に彼女に飛びついていった。それを嬉しそうに受け止めた彼女は、二人でキャッキャッ笑いながら自分達の席に行って楽しいお喋りタイムを開始した。
それを遠巻きに見ているのは一緒に登校してきた沖田と席の近い土方であった。
「何でィ、あいつ元気じゃねーか」
「心配してたのか」
「まっさか。クラスに一人虐める奴がいないとつまんねぇだけでさァ」
「それを人は照れ隠しという」
「死ね土方夜道には気をつけろよ」
「大丈夫だ常に気をつけてお前の気配を探ってるから」
朝だというのに何とも物騒な話をしいてれば、続々と他の生徒達も登校してくる。そしてチャイムが鳴ってしばらくすれば、ペタペタと独特な音が静かな廊下から聞こえ、のちに銀八が眠そうな顔で教室に入ってくるのだ。
「きりーつ、れーい、おはようございまーす」
新八による朝の号令を終え、銀八はZ組の出席簿を開いた。
「今日休みの奴は居るかー?」
「先生高杉君がいませーん」
「高杉君は当分マグロ漁から帰ってこれないそうなので、顔を合わせるのは先の事になると思います」
もちろんマグロ漁というのは銀八が適当に言った事ではあるが、変な所で純粋なZ組の面々は「マジでかすげーな」と楽しそうにどよめいていた。
「(アホかこいつ等は……)」
少し呆れながらも空いている席が無いか見回していると、数日前様子のおかしかった生徒が更におかしくなった様子でその席に座っていた。因みに昨日は空いていた席である。
「……何やってんの夏目」
「いや!?これは!何も!」
「それは何だ。俺と顔も合わせたくないという無言の抵抗か?」
「そんなんとちゃいまっせ!!」
「オイどうしたその関西弁は」
今日の1限目にある生物の教科書で顔を隠すように、と言うか見えている部分を全部隠そうとしているのか、変に縮こまっている夏目の姿を銀八が確認した。
「先生ーハルは少し夏ボケが抜け切れてないだけアル」
「人は夏ボケしたら教科書で顔を隠すようになるのか?」
「これぁ重度の患者の症状でさァ。……あ、チャイナ、お前も牛乳瓶の底みたいな眼鏡かけてるが、頭大丈夫か?お前も重度の患者か?」
「喧嘩なら買ったらぁ表出ろや沖田ァ」
神楽ちゃん留学生キャラ忘れてるよ!、と新八の突込みが響く。だがそれに2人の勢いが止まる筈もなく、朝だというのにプロレス顔負けの喧嘩がZ組で勃発された。多数のクラスメートの悲鳴が教室を所狭しと行き交う中、銀八と彼女は無言の睨み合いを続ける(と言っても一方的な)。
「……よし!」
「?」
そして脈絡もなく自己完結した様子の銀八。何事かと思い彼女が恐る恐る視線を上げてみれば銀八がその口を開いた。
「今日放課後職員室までくるよーに」
決戦は職員室。
数日前忘れていたその言葉が再び彼女の前に現れた。
てっきり「イヤだぁぁぁぁぁあ」と前のように叫ばれると思った銀八は、学習したのか手を耳にあててその時を待った。だが、目の前の生徒は落ち着いていて、顔を隠していた教科書をおろし素直に頷いた。どういった心境の変化か、その様子は数日前の彼女とは違った。
決戦は職員室。
彼女は心中その言葉を呟いた。
「分かりました」
教室は相変わらず喧嘩に巻き込まれている生徒の悲鳴で溢れていた。それでも、彼女は銀八に聞こえるようにまた「分かりました」と言った。