天邪鬼が笑う(3)
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お目付役の緋村が居ない一番隊は、と言うか沖田は、食事も済ませてのんびりと食堂で休憩を取っていた。気だるいぐらいの睡魔が逆に心地よくて、このまま此処で寝てしまおうかとまで考えていた。彼女が居れば「ちゃんと自室で寝て下さい」と一々口をはさんでくるに違いない。
そんな小うるさい小姑が居ないので羽を伸ばしながらフと携帯を手に取った。任務とは別の経過報告のメールが何件か入っている。
Sub 経過報告 00:45
本件
成り行きで旦那と糸ちゃんは接触してしまったみたいです。機転を利かせて真撰組の緋村糸である事はばれてないみたいですが……時間の問題だと思います。
「さすがあの2人でィ」
恐れていた事は起きてしまったが、なってしまったものは仕方ない。携帯を閉じて、誰も居ない食堂で1人机に突っ伏した。
先ほど土方が近藤の部屋に入っていくのを見た。恐らくは明日ぐらいにでも斬り込んでいくのだろう、と鋭い沖田は既に感づいていた。それまで彼女が上手に銀時から逃げれる気はまずしない。もしかしたらばれていると考えても不思議では無かった。銀時もちゃらんぽらんに見えて油断ならない人物である事は、真撰組の幹部の中では暗黙の了解だ。
そろそろ何とかして彼女にも坂田銀時という男がどういう人間なのか伝えていかなければいけないと、沖田は密かに思っていた。
過去を探れば攘夷戦争に行き着く所までは沖田も知っている。
問題はその中身だ。
別に攘夷派として目を付けている訳ではないが、行動としては真撰組の立場から考えて疑問に思う点があるのも事実。ゆくゆくは彼女自身が事件に巻き込まれ知っていく事になるかもしれない。
しかしそれがいつかは分からない。そうなるまでに、もしかして、本当に万が一、あり得ないと信じたいが彼女の気持ちに変化が訪れてしまったら…。只の「興味」が転がされる度に甘酸っぱい気持ちになろうものなら……………屯所総出で万事屋を潰しにかかるのは、まあ間違いない。
緋村という女隊士のバックには鬼みたいな母親代わりの男と、心配性のゴリラと、全てを破壊しなければ気が済まないおじいちゃんが居るのだ。特におじいちゃんは彼女を溺愛してしまっているので、躊躇いなくミサイルだって万事屋に撃ち込める。
「(あー、面白い)」
人のトラブルを見るのが大好きな沖田はニヤリと笑う。
「(ってか明日の夜に動くっつー事は、刀の手入れもしておかねぇと)」
そこまで考える事は出来るのに、体がどうしても動かない。本当にこのまま此処で仮眠を取ってしまおうかと考えた時ポケットにいれた携帯が震えた。
それは緋村からのメールで、沖田の状況が見えているかの様に「ちゃんと布団で寝て下さいね」とだけ書かれてあった。
「俺の心配じゃなくてお前自身の心配をしろっつーんでィ」
この呟きが本人に届けと言わんばかりに沖田は携帯にデコピンをしておいた。
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渋々といった感じの受け取り方だったが、山崎達は胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます。絶対に無関係の人達の中で死傷者は出さない様に努めます」
礼儀正しく頭を下げてきた山崎と緋村に、旅籠の旦那と女将も文句を挟む事は出来なかった。
「まさかうちでそんな物騒な話し合いが行われてるとは……」
「上の座敷に開放はやめておいた方が良いかしら?」
旦那と女将は今回の御用改めを踏まえて、3階の貸し出しについて考え直す事が増えた。顔を見合わせ、2人で困った様に唸り考え込んでいる。
真撰組として勿論その考え方はありがたい。
しかし純粋にここの雰囲気が好きで通っている客も居るのだ。それを考えたら、緋村は開放廃止の件に賛成は出来なかった。
「大丈夫です。今回の事で攘夷派への良い牽制になります。万が一懲りない奴が居ても、私達真撰組が取り締まります」
女中の時とは違う力強い笑みに、頬に手をあてた女将はほぉと息を吐いた。
「女中として来てもらった時は、まさかこんな可愛らしい女の子が隊士をしてるなんて思ってなかったけど……中々頼もしい一面もあるのねぇ」
「転職する気があったら是非うちで働いとくれよ」
さっきまでの重苦しい空気はどこへやら、良い意味で空気を壊してくれた彼女は既に店側の信頼をものにしていた。ありがとうございます、と照れて笑えば女将もまた微笑む。
これはもう生まれ持った才能だろう。確かに真撰組の隊士として置いておくのは勿体ないが、只の女中として置いておくのも勿体ない。
彼女自身の心配をよそに、案外上手くやっている事を肌で感じながら、山崎はやれやれといった感じで息をついた。
