貴女から振り出しへ戻る
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「まさかこんな事になるなんて思わなかったですねGINさん」
「そうアル、慰謝料は出るアルかイエッフ~」
「たんまりもらってバカンスだテメー等」
「「オッケ~イ、我が命にかえても」」
「ちょちょちょちょ、うるさいですぜィ」
いい加減にしねーと斬りやすぜィ、と言って助手席から後部座席に睨みを利かせる沖田を、山崎が運転しながらまぁまぁと宥めた。
彼女が居なくなってからの流れ上、自称親友の神楽がこの状況を放っておける筈もなく、オマケに銀時と新八がついてきてしまってパトカーは満員だった。
「場所の目星はついてんのかよ」
「まあ、一応…」
山崎の調べで、取引に使われそうな場所は全て割り出されている。絞ったどれかには引っ掛かる筈だが、万が一という可能性が今はとても怖い。
「土方さん達は東町の倉庫に向かってくれてて、因みに俺達は港に向かってます。……って言うか旦那達まで来なくて良かったのに…」
「糸の危機には私が行くアル!」
「危機っていうか死んでたりしてあはははは」
「んだとこのサド野郎!!」
「落ち着いて下さいよ2人とも」
「新八君の言う通りですよ。状況が分からないだけに、取りあえず俺達は超特急でそこに向かうしかないんですから」
隣でギャーギャーと騒がれ迷惑な事この上ないが、自分の後ろ、つまりは銀時がやけに静かなのが妙だった。
変に落ち着きはらってるというか、踏んだ場数が恐らく違うのだろう。山崎は直感的にそう思った。
面倒事、ましてや真撰組をあまり好ましく思っていない銀時がわざわざパトカーに乗り込んできたのには驚いた。と言うか脅迫まがいに割れたワイングラスを首元につけられて「乗せろ」と言ってきたのにビビッた。
そこまでして乗らなければいけない理由は、もちろん神楽と新八の御守役というのもあるだろうが、渦中の人物を思えばこの流れは自然だ。
銀時はただボンヤリと、速度違反を存分に無視して歌舞伎町を走り抜けるパトカーからの景色を眺めていた。
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猛攻撃、という言葉が正しいのかどうか、銃撃や刀を振り下ろされる音がもはや一曲の曲に聞こえてきた。彼女はその曲に踊らされるようにして右へ逃げ左へ逃げ、時にはコンテナからコンテナに飛び移り何とか攻撃をかわしていた。
「出口出口出口、どこだ出口~~~!!」
とにかくこの倉庫から逃げ出さなければいけない。角から出てきた天人を斬り倒し辺りを見渡すが、生憎積み重なったコンテナしか見えない。
――お前の兄は………――。
言っている最中に突然響いた銃弾。それは彼女の足元へ落ちた。
思わぬ場面で見つかってしまい、また逃走劇が始まってかれこれ数分。立ち向かってくるのは天人ばかり。どうやら人間側はさっさとトンズラしたらしい。
今はまだ検挙するには一介の隊士の言葉だけじゃ証拠が足りない。いつか必ず捕まえてやると負け惜しみを呟いて、今は逃げるのに集中するしかなかった。
上を取られてしまったせいで、死角に逃げ込まなければ当たってしまう。逃げ場所もどんどん奪われていく絶望の中、それは救いの音以外の何物でもなかった。
「サイレン……!」
聞きなれた音が倉庫近くで止まったのが分かった。肺に詰まっていた恐怖や疲れがどっと溜息としてこぼれたのも束の間、天人の親玉に見つかって銃口を向けられた。どうやら刀では彼女に勝てないと学んだらしい。首にいれられた一撃が痛むのか、わざとらしく摩りながら、座りこんでいる彼女にじりじりと近づいてくる。
「聞こえませんか、外の音が。貴方達捕まるんですよ」
「ああ構わねえ。どうせ捕まるんならお前だけでも殺してやらぁ」
「趣味悪」
「面白い奴だと思って連れてきたが……興ざめだ。あばよ」
さて、右に退くか左に退くか、刀で弾くにしては距離が近すぎるし何より暗くてよく見えない。相手の銃口さえ暗闇に同化してはっきりとは見えなかった。
「(せめて頭か心臓にだけは当たらないように体を上手くそらさないと…!)」
被弾は覚悟して、しかしすぐに攻撃を仕掛けれる様に体を浮かして刀を握り直した時だった。
後ろの暗闇から突如人影が飛び出してきて右肩を強く引かれる。思わず尻もちをついてしまった隙に誰かが彼女の前に立ちはだかった。