貴女から振り出しへ戻る
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「(何で頼ろうとしてるんだ、私は…)」
真撰組には腕っぷしの良い人間しか居ない。今は劣勢でも、ここで沖田というサディスト男が1人追加されただけで状況はひっくり返されるだろう。頼るべき相手は腐る程屯所に居るのに、彼女は何故か銀時を思った。
銀時の実力は知っているようで、実の所あまり知らない。沖田は強いと言っていた、土方も人としては認めていないが実力の事に関しては貶しているのを聞いた事がない、それは近藤然り。
無意識の内に頼ってしまった自分が恐ろしかった。もしかしたら命を奪われるかもしれないこの空気に引き込むなど、警察ましてやテロの特別対策部隊と称されてる真撰組の隊士が思う事ではない。
こんな状況に置いて、頼るべき対象が(一応)一般人である銀時でない事ぐらい誰だって分かる筈なのに。
思い返せば、銀時はいつも自分が切羽詰まっている状況に限って傍に居てくれてる様な気がした。ひったくりの時も、兄の時も、心と体がSOSを発している時にフラリと現れるのが銀時だ。ここで颯爽と救いに来た訳ではなく、フラリと現れるのがなんとも銀時らしかった。
だからだろうか。自分がこうやって待つしか出来ない時に、彼なら来てくれるんじゃないかと思ってしまうのは、今までの経験上なら仕方のない事なのだろうか。
だがそれは、一番隊に所属する人間としてあまりにも弱弱し過ぎる考えだ。自主的に反省文を追加しなければいけないかもしれない。
「………お兄ちゃんの事のせいで甘えきってるのかな…」
「ほお、お前の兄か。勘違いでなければ俺は知ってるがな」
「!!!」
頭上から声が降って来た途端、コンテナから刀を持って飛び降りてきた幕臣を横に転がり何とか避けた。反応が少しでも遅れていれば串刺しになる所だ。
「あ、っぶな…!!!」
「なるほど、兄譲りの反射神経だな」
「…!」
昔から幕府に勤めてる者なら兄を知っていてもおかしくない。
只嘲笑っているかのようなその顔に腹が立って顔が歪んだ。その顔でさえ似てると相手はいう。
「アイツは良い奴だった、亡くすには惜しかった。この世にはもっと死ななければいけない人間が居るのに」
「だからって人を殺すのは認められない。……って私が言えた義理じゃないですけど」
「皆それぞれ正義がある。アイツもアイツの正義を貫き死に、そして妹のお前もここで死ぬ訳だ」
「私は絶対に生きて出ます」
「そうか、それは楽しみだ。俺はまだお前と話がしたい」
「話?」
一介の隊士と幕臣の間に話等がある訳もない。しかしこの2人に関してはたった一つ共通点があった。
彼女の兄を知る相手と、そしてその兄の実の妹。
聞かされる話なんてある訳がない、あの日の事なら近藤や土方に何度か調書を見せてもらった事がある。彼らが知っている限りの真想は彼女だって教えられた。それなのにまだ話される事があるのか、いや只の時間稼ぎかこちらの心を揺さぶろうとしているのか、それでも…。
自分でも驚く程混乱して、彼女は額に汗を滲ませた。たった一人を相手にしている筈なのに、得体の知れない緊張で鞘を持つ左手が震えた。
「そう、大事な話だ。お前の兄は……――」