夜から貴女へ
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その数十分後、真撰組からは沖田と緋村、後は万事屋3人組が狂死郎に裏のスタッフルームに呼ばれていた。
「全く…お客様に怪我が無かったから良いものの…!」
人が良い狂死郎の怒り方は酷く優しかった。それ故に、緋村や新八のように真面目な人間は優しい怒り方の方が心にきた。と言っても玄関にとどめを刺したのは彼女なので、心にきてもらわないと困る。
沖田と神楽はコント後のように髪がチリチリになっており、説教中だというのに尚睨み合いを続けている。隣に座っていた彼女が肘で沖田をついた。
この2人(と、何処かに居る山崎)は潜入捜査の為に来ていた。狂死郎が協力してくれているお陰でこの高天原に居るというのに、あんまりな結果に上司への報告がためらわれた。鬼みたいに怒る副長を思い浮かべて、彼女は溜息をついた。
「沖田さん、緋村さん、これからはバズーカは禁止ですよ」
「すいませんでした……」
しおらしく謝る彼女とは違い、沖田はまだ神楽とメンチを切り合っている。
次に万事屋に向き合った狂死郎は、まず自分の母のせいで来させてしまった事を詫びた。
だが、それはそれ。
神楽が玄関で暴れなければこんな騒ぎにはならなかった。
弁償は後日万事屋と真撰組が請け負う事となり、狂死郎の説教が一旦終わるや否や、ボーイが焦った様子で部屋へやってくる。
「狂死郎さん、ご指名の方がたまっています…!」
「!分かった、すぐ行く。では皆さんは外のほとぼりが冷めるまで、しばらくここに居てて下さいね」
つまりは、もう少し反省しとけ、という事なのだろう。狂死郎が出て行って、まず沖田が露骨に顔を歪めた。
「あーぁ、せっかく任務中だったってーのに、どっかの誰かさんのせいで台無しでさァ」
「沖田隊長も加害者の1人なんですから黙ってて下さい…」
「お前もだろィ」
「………」
痛い所を突かれて、彼女はそれっきり何も言わなかった。沖田はひとまず無線を取り、ただいまスタッフルームで休憩中ですどうぞー、という連絡だけをいれる。
「任務、って……ホストにならないと駄目なんですか?」
「え?ああ、この格好ですか…」
新八の素朴な疑問に、彼女は立ちあがってジャケットの襟をただす。
いつもの真っ黒な隊服でもなく、袴姿でもなく…まさしくホストと言うべき値段が張ってそうなスーツを着た緋村の姿は、いやに似合ってるのだから恐ろしい。
沖田も緋村も破天荒コンビではあるが、ホスト姿をこうして黙って見ていれば目の保養ぐらいにはなる。
「高天原の護衛も含めての潜入です」
「糸、余計な事は言わなくて良いって」
「すいません」
「んじゃ俺ァ奥でドンペリたらふく飲んでくるから、何かあったら呼んで下せェ」
「二度と呼びませんサヨウナラ」
呑気な上司も部屋を出た所で、彼女は狂死郎の母と知り合いなのかという事を聞いてきた。新八が掻い摘んで狂死郎の母との話をしてみれば、彼女の目の奥の色が多少変わったのが銀時には分かった。
狂死郎の母(以下、グレートマザー)がこの高天原を訪れた時、ここは薬をさばくかどうかの脅迫を受けていた。それを見事に突っぱねていた狂死郎だったが、八郎が実はオナベだったり、グレートマザーが黒駒勝男に人質に取られたり、7:3がどうだったりと色々あった。
全ては「薬」を中心にして展開していた話を聞いて目の色が変わったのは、恐らく彼女達が居る理由もそれに関係しているのだろう。
「…で、またここが薬のさばき場所になってるって訳かい」
「鋭いですね、ですが話せません」
「私達も手伝っちゃるヨ?」
「んー、気持ちは嬉しいけど、沖田隊長の許可をまず取らなきゃ」
そう言えば神楽の顔がこれみよがしに歪む。上手に神楽の申し出を避けた緋村は立ちあがり、では任務に戻ります、と言って部屋を出て行った。
「ぶーっっ!糸のケチー!」
「仕方ないよ神楽ちゃん、沖田さん達も仕事で来てるんだから」
「さっきドンペリがなんたらかんたらって言ってたけどな」
「そうアル!私達もたらふくオロナミンCを飲みにいくアル!」
「主旨変わってるから!」
ひとまず銀時達は狂死郎の近況報告をグレートマザーにすれば良いのだ。元気に接客して、楽しそうに笑って誠心誠意を持って女性達をたぶらか…もてなす様子を田舎へ伝えれば、それで依頼はおしまい。
写真の一枚でも送ってあげましょうよ、と新八が提案したので、カメラは今彼が持っている。何枚か撮って来ますね、と真面目に仕事をしに行った新八に神楽が続いて、銀時は控室に1人となった。これぐらいの事ならあの2人に任せても大丈夫だろうと判断して、と言うよりもサボって、机に突っ伏すや否や呑気に寝息を立て始めていた。