昼から夜へ
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昼前の屯所の一室から、控えめなアラームの音が聞こえてくる。この時間帯はほとんどの隊士が出払っていて、昼食前の静けさというか、このアラーム音が少し離れた所でも聞こえるぐらい静かなのだ。
「…………」
無言のまま枕元に置いてある携帯に手をのばし、慣れた手つきでそれを止める。
体が重いのか、やけにゆっくりとした動作でまずは座る。それから欠伸を一つ。その後にまた横へポスンと倒れてしまった。と思いきや今度はちゃんと立ち上がり、着流しから制服に袖を通す。
いつもの一連の流れで起きた緋村は、中々止まらない欠伸を盛大に出しながらゆっくりとした足取りで食堂へと向かった。眠気はまだ完全に覚めていないらしいが、腹は正直に控えめな音を立てていた。朝ごはんを逃した分もあって、段々と腹の虫がやかましく騒ぎ立てている。
「(ご飯は大盛り……)」
昼飯一番乗りの特権として、炊飯器から大盛りのご飯をよそう。眠そうだった顔もだんだん晴れてきて、今では御機嫌に口に孤を描いている。真っ白な丘がお茶碗に出来あがった所で色々オカズを物色し、朝の分を取り戻す勢いの量を机に並べた。
「いただきまーす!」
見回り後の隊士が帰ってきたら「盛りすぎだ!俺達の分が無くなる!」と言われかねないので、なるべく早く食べようと口にかきこんでいたら、たまたま通りかかった土方が呆れた様子で彼女を見ていた。おそらくは女性らしからぬ見事な食べっぷりに感服しているのだろう。
その視線に気がついた彼女だったが、それを意味するものまでは分からず「お疲れ様です」と挨拶を述べた後再びご飯を口に運ぶ。とにかく食べれる間に食べておかねば、弱肉強食が根付く屯所の食堂では一瞬の隙がオカズ奪取に繋がる。それが身に染みついている今となっては、例え上司が来たとしてもなるべく手を休めない。それは食堂で勝ち抜く為の理なのだ。
咀嚼したというよりは飲み込んだと表現した方が適切な食事を終えた緋村は、食堂のおばちゃんに声をかけた後に自室へと戻った。午前にたっぷり睡眠をとったお陰か、表情はいつもよりスッキリしていて心なしか艶々している。不規則な生活にも対応出来るだけの若さはやはり持っていた。
ジャケットに袖を通して刀も腰に刺して、今日の見回りのパートナーである沖田を探すべく部屋を出た。
部屋をのぞいても居なかったので、恐らくどこかの縁側で昼寝でもしているのだろうと思い探してみれば案の定だった。可愛いと奇妙を足して2で割ったようなアイマスクをつけて呑気に寝息をかいている。
「ちょっと沖田隊長、非番じゃないのに何寝てんですか」
「んぁ…?お前飯食い終わったのか?」
「はい。隊長も食べ終わってるなら早く見回りに行きましょう」
ずるずると廊下を引っ張られるが、起き上がる気配もなくマイペースにアイマスクをずらし「あと1時間寝かせてくれィ」と甘えている。土方節を受け継いでいる彼女がそれを許す筈もない。
「だーめーでーす。見廻りだけでも早く終わらせましょう」
「夜の為に体力温存するのも仕事だろうが」
「沖田隊長は休みすぎなんです」
一切の甘えを許してくれない彼女の性格は今更なので、沖田は渋々起き上がり、アイマスクを懐にしまった。
なんか沖田隊長お酒臭いですね。山崎のがうつったのかもしれねェ。
そんな他愛もない話をしながら、2人は平和な江戸の町へと足を向けたのだった。
