歌舞伎町美禄物語
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江戸という町に、キラキラと眩しいぐらいの光を放つ場所がある。
名を歌舞伎町。大人の汚い部分がぐっちゃぐちゃに集まってそれを捏ねて出来あがった町だと名高いその場所。
昼間は息を殺し、夜になれば花火の様にはしゃぐその町は沢山の飲み屋と下品な笑い声と男女の駆け引きに溢れていて、訪れる人のテンションというテンションを片っ端から上げて行く不思議な力を持っている。今夜もまた、波にのまれ欲望うずまく往来に酔っ払い共が行き交っていた。
その中に、傍らに潜む綺麗なお姉さんの誘いの言葉を聞き流して歩く男が1人。
「あー……どっかで一杯ひっかけたいもんだぜ……」
1人愚痴りながら歩いている所を見ると一文無しなのだろう。家へ帰るまでにこの賑やかな大通りを歩いた方が近いので、仕方なしに歩いているのだ。
あちらこちらから聞こえる騒がしい声に時折口を「へ」の字にひん曲げた。
時には、こういう男もいる。一文無しでブラブラ歩き、周りの輝かしい世界へも飛び込めず文句ばかりを言う男も…。
しかし、こういう男もいる。
これは数年前から何処からともなく囁かれ始めた噂だった。
人を飲み込む筈の歌舞伎町を、逆に鯨飲の如く飲み込む男が居る。
敗者として愚痴ばかりをこぼしているこの坂田銀時も、歌舞伎町に住む一員として何度か聞いた事があった。
その男は何でも2メートルを越す大男で、両手に酒瓶を抱えては飲み込み、挙句の果てに周りを破壊しながらこの歌舞伎町を闊歩するらしい。その噂を初めて長谷川さんから聞いた時は、何だそれ妖怪じゃねぇか、と突っ込んだのを銀時はまだ覚えていた。それ程までに変てこりんな噂に印象が残ったのだろう。
可笑しな事に、誰も見た事も話した事もなく、大男共々噂ばかりが独り歩きしている。
大男の名は、眠れる獅子。
何故眠ってるのだ、と誰もが突っ込むべき名で通っていた。
因みに銀時はまだ一度も会った事もないし、会いたくも無いと思っていた。日本酒を水のようにガブガブ飲む大男と隣に並べる筈もなかった。
家には従業員の新八と神楽と定春が夕食を作って待ってくれている。…と言うよりも先に食べていると思うが、今はこの喧騒をくぐり抜けて、早く帰りたい一心で足を動かした時だった。
数メートル手前にあった飲み屋の戸が蹴り倒された。
「…!」
急な事だったので少し驚いて立ち止まって見てみれば、店の中から完全に潰れた酔っ払いを運ぶ数人が出てきた。皆口々に「かなわない」と呟いている。
一体何事かと軽く覗いてみれば、中はてんやわんやの大盛り上がり状態、怒号と笑い声が良い感じに不協和音を生みだしている。一体なんの団体だと思ってしまう程飲んでいる人間の年齢は様々だった。その中に、スナックお登瀬の常連で見知った顔もあったが、声は敢えてかけずに目線を逸らし、万事屋を急ぎ目指した。
「おぉおおお!!!ウィスキーをジュースみたいに飲んでるぞ!!」
「さっき焼酎をロックで飲んでたのに!!」
背後からは非常に恐ろしい歓声ばかりが飛び交っていた。
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