アン ハッピー バースデー!
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タイミングが悪いと捉えるべきか、それとも良いと捉えるべきか……。何故この日に?という日にちに坂田さんは熱を出しました。10月10日、糖の日、万事屋の要である坂田銀時氏生誕祭に、熱でぶっ倒れる哀れなこの方を私は呆れながら見ていました。
日頃の行いですかね、と言ってみれば、元気になったら覚えてろよ、と坂田さん。おお怖い。
一応この数週間は「坂田銀時氏生誕祭」の計画を新八君達とたてたりして、当日楽しみだねー驚いてくれると良いねー、なんて言ってたのに全ておじゃんになりました。今日は頑張って仕事を早く切り上げて、神楽ちゃんと待ち合わせしていた公園に行ってみれば、神妙な面持ちでベンチに胡坐をかく彼女の姿が。
――異常事態発生ネ。銀ちゃんが風邪ひいちゃったアル。どうしよう千早ちゃん、私達もケーキ食べれないアルか?
いや、そこは私達のケーキの分は心配しなくても良いんじゃないかな。…と突っ込めたあたり、私はだいぶ冷静だった。
それにしても風邪か…。この時期は確かに流行るけど、10月10日にかからなくても良いのに。苦笑いで呟いた私の手を握った神楽ちゃんに、取りあえず帰ろうと言わんばかりに引っ張られた。
万事屋に着けば割烹着姿の新八君が出迎えてくれて(これがまたよく似合う…)、眉尻を下げた苦笑いを浮かべていた。どうやら坂田さんの容体はそんなに良くないらしく、神楽ちゃんに引っ張られるまま奥の部屋へと連れられて、今に至ります。
「日頃の行いでこんな事になってたら神楽なんか爆発してらァ」
「そんな事言ったら神楽ちゃんに失礼ですよ」
「爆発してたら星になれるアルか!?宇宙の一部になれるアルか!?ヒャッホー!!」
「あれ?喜んでる?」
今日も元気はつらつの神楽ちゃんは高いテンションのまま部屋を出て行った。あの様子じゃケーキ云々は忘れているのだろう。
「誕生日に風邪ひくって中々ないですよね」
「うるせ」
だいぶ日も暮れてきたので電気の点いていないこの部屋は薄暗い。でも坂田さんの顔の赤らみはよく分かるし、心なしか熱気がこもってる気もする。熱は相当高いのか、喋るのもつらそうだった。
枕元に飲み物が置いてあったので、まずそれを飲む様に声をかけてみた。すると体の節々を労わる様に上半身を起こした坂田さんが、素直にそれを飲みほした。ここまで素直だと怖いですよね。風邪効果って凄い、と実感した。
「……一回家に帰ったのか?」
「あ、はい。スーツで祝うのも何だかなぁと思っちゃって…。お誕生日パーティーは延期ですね」
「パーティーされる歳じゃねぇよ」
「そんな事言わないで下さい。新八君も神楽ちゃんも今日この日の為に色々計画を練ってたんですから」
「………」
「美味しそうなケーキも買ってあるんです。今日は食べれないですけど、今度一緒に食べましょう」
「あーーケーキ食いてぇぇえええー……」
頭を抱えケーキケーキと項垂れる坂田さん。神楽ちゃんと同じ思考レベルだなという言葉は飲み込んで、不覚にも可愛く見える様子に小さく笑ってしまった。
雑誌には必ず載ってるケーキ屋さんで、何千円もしたんだから美味しくなかったら訴えてやる。色とりどりのフルーツが綺麗にトッピングされたあのケーキを私だって食べてみたい。となると坂田さんには早く元気になってもらわなくては困るのだ。
「ケーキは後日です」
「いや、今ケーキ食わねぇと俺爆発するかもしれねぇ」
「何言ってんですか!」
そんな自虐的な脅しには屈しませんよ、と強気な私に、諦めきれない坂田さんは何を思ったのか、熱を孕んでいる左腕を私の首に回してきた。となれば顔が一気に近付く事になり、一瞬何が起こったか理解出来なかったなりに瞬きを何度も繰り返した。人は混乱しすぎると逆にスイッチが切られて冷静になると言いますか、今の私がまさしくそうで、しかし押し込んでいた恥ずかしさが足元から頭まで一気にかけ巡った時には既に遅かった。
「えぇええええ!!?ちょ、急になん…――っ!」
「銀さんがこんなに必死にお願いしてんなの聞いてくれないってか?」
何処が必死だ!この状況の何処に必死さがあるんだ!!しかもニヤニヤ笑ってやがるぜこの兄さん!私の焦りっぷりを見て楽しんでやがるぜ!!
「ちょちょちょちょ近い近い近い近い近い近い近い近――い!!!!」
叫びながら押し返すも、流石体つきがしっかりしている分私の力ではどうにもなれない。病人にも勝てない私って何!?
近い近い、と言った所で銀さんは退く気配もなく(そんなにケーキが食べたいってか!?)、余裕たっぷりの顔で更に私と距離を縮めてくる。
「…っ!」
熱そのものが近付いてきたみたいに、私の体も驚くほど火照る。覚悟を決めた訳ではないけれど、目をきつく閉じてしまったのは反射的な反応に近い。こんなムードもへったくれもない雰囲気で…!等と多少は考える余裕もあった矢先、左肩に乗っかってきた熱い物体。程良い重みがあってじんわりと暖かい。
そっと目を開けてみればまず一番最初に銀髪が視界に入った。
「…しんどい……」
「でしょうね、そうでしょうね」
着物越しでも分かる坂田さんの熱に影響されて私まで熱くなってきちゃったじゃないですか。完全に私にもたれかかる様にしている坂田さんを何とかして退かしたいけれど、このまま力ずくで布団に押し倒す訳にもいかない…。って言うか何この卑猥な表現!
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