振り出しの目
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面接が終わった後、帰りの電車の中で吐き気を感じたのがそもそもおかしかったのだ。疲れと安堵が圧し掛かってきた体は、呆気なく熱を出して私を苦しめた。
「37度…か…。うん、だいぶ熱下がったわね」
「うー…ちきしょー……明日は絶対学校に行ってやるー…」
「まぁ頑張りなさい」
この調子で下がれば明日はきっと大丈夫よ、と言って母親が部屋から出て行った。消化に良いお粥ばかりを食べるのはもう飽きた。この体にはホントいい加減にしてもらいたい。たった数週間の励みで発熱しだすとは柔な体になったものだ。これも体力が落ちた証拠なのか、私は不可抗力で布団に寝たきりになっていた。
金曜日の夜、神楽からメールがきたのは8時過ぎだったと思う。劇の内容が決まったという連絡だった。確か赤ずきんをベースにした劇……だっけ?
何だソリャ。
額に冷えピタを貼り付けた私は、布団に横になりながらそう思った。Z組らしいっちゃーZ組らしい奇想天外な劇になりそうだけど、果たしてそれを私達が演じる事が出来るのだろうか。しかも恐ろしい事が起きている。なんとあの妙が総監督をつとめるらしい。……生き残れるかどうかの不安で、その日の夜、私はまた熱を上げてしまったのだった。
それから2日経った今日。明日には登校出来る様に大人しく布団に潜ったままだった。
どうせなら小道具係とかが良いな。音響とかでも良い。間違えても出演はしたくない、ぜっっったいにしたくない。妙に頼まれてもそれだけは絶対に無理!恥ずかしい!
とにかく、私は明日登校すべく、なんとか頑張ってます。
明日は普通に登校して、その……一応先生に面接の出来を報告した方が良いんじゃないかと考えた訳です。今まで付き合ってもらっていた身としては、なんの報告も無しじゃあ失礼すぎると思ったからだ。最後に先生の顔を見たのはあの場面きりだけど、今思い出してみても、涙腺が緩むのは何とか我慢が効いた。この数日で散々あの場面を思い出したのだ、免疫がついたというか、女子の順応力とは恐ろしいものがある。諦めた訳ではないけれど、面接が終わったと同時に、全ての力が抜けたような感覚がした。先生の事はまだ好きでも、思い返して"泣く"という失態はおかさなくなった。布団に寝ている間ずっとその事について考えて、考えて、考えて、ひとまず泣かない程度には成長した。うんうん、時間を有効的に使えたな。
とにかく、明日は絶対に学校に行く。それから小道具係に立候補して、もうすぐで始まるテストの範囲を聞いて、勉強して、赤点取らないようにして、服部先生に渡されてた課題プリントを提出して、神楽と学校の近くにあるクレープ屋に行かなければいけない。あー忙しい、本当に忙しい。
「高校生はやる事がいっぱいあるんだから!」
1人しか居ない部屋でそう呟いた。
学校に行って、先生に会っても泣かないように努力しなければいけない。
あの時みたいな悲惨な顔は何が何でも絶対に見せられないんだってば!!
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