かえる気持ち
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何やかんやで夏真っ盛り、何やかんやでプール開き前になり、何やかんやでプール掃除。放課後のクソ暑いプールサイドで、緑色した水を見据える面々。体操服という軽装に熱中症対策の麦わら帽子。その手には、戦にでも出陣するのか刀然りデッキブラシが握られている。ジリジリという音が聞こえてきそうな暑さの中、険しい顔つきのままプールを見渡す彼ら。
「……はい、頑張ってー」
同じくして麦わら帽子を被る1人銀髪の男は、何故に優雅に影の所に隠れて声をかけているのか。
そして何故にこの面々がプールサイドに居るのか。水泳部ではない。かと言って掃除部なんてものは存在しない。彼らは今でこそデッキブラシを握っているが、本当なら竹刀を握って青春の汗をかくべき人間なのだ。太陽に直に焼かれる筋合いはない。後に"生命粗末の事変"と後輩に受け継がれていくこの出来事に出陣していく彼らを、誰が止める事が出来ただろう。いや、きっと誰にも出来ない。そう、これは罰なのだ。彼らが学校という社会の中で起こしてしまった誤り…。それを償うべく集まった戦士達。
「……あっつ」
そんな戦士の中にただ1人の紅一点である夏目は、滴る汗を首に巻いているタオルで拭いながら本音をもらす。暑い。
「さっさと始めやしょうぜィ。暑い」
麦わら帽から柔らかな栗色の髪をのぞかせている沖田も本音をもらす。暑い。
「早く取り掛かれば、早く終わるぞー。あちー」
影に入っている銀髪の男、銀八でさえ暑いと唸る。団扇で顔を仰ぎながら、帽子のつばを太陽の方へと傾けている。
「……何でこうなったんだ?あちぃ」
副将の土方が皆より一歩前に出て、つい数日前の事を思い出す。自分たちがここに集まった原因は何だったか?とても簡単な原因だったような気がしてならなかったのだ。
「……………」
なかなか動かない彼らに痺れを切らしたのか、銀八が遂に立ち上がる。一斉に振り返った彼らにたった一言、やる気の感じられない渇を入れた。
「……さっさとやれっつの!あちぃ」
「だってよ先生ェェエエ!!!」と、反論したのは近藤だ。
「ちょっとふざけたお遊戯だけで、この汚ぇプール掃除って酷くないか!?」
声の張りや威勢としては問題ない。しかしながら、麦わら帽子の上にちゃっかしゴーグルを付けているのだから、掃除後に泳ぎたい心情なのだろう。
「おーい、お遊戯って何だお遊戯って。幼稚園児かお前は。テメーが言うそのお遊戯のせいでなぁ、竹刀8本、ガラス1枚、ロッカー3つがぶっ壊れてんだよ。破壊ばっかしねぇで創造しろ!!」
「想像?(お妙さんの)想像は得意です!」
「誰かゴリラ語が話せる人ー?」
文句を言う近藤だったが、原因と言えば、集まった面々、つまり剣道部員たちにあった。沖田が主犯というか、止めれなかった近藤というか、巻き込まれた土方というか、竹刀ではなく木刀を握った夏目というか、残りの部員たちと一緒に逃げた山崎というか……。取り敢えず、剣道部が起こした、"体につけた風船を割っちゃおう大会!"またの名を"負けず嫌い共の喧嘩"という催しを開催してしまったからである。
その悲惨さや危険さを語るのはまた後日。
しかし、夏目にとっての悲惨さは今まさにこの情景であった。ずっと張っていたプールの水。山崎が抜いているので徐々に水位は下がっているが、見えてくるのは底ではなく、コケやら何かヌメヌメしていそうな物体である。
「うっわ…」
顔をひきつらせて夏目は小さく呟いた。
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