待てど笑い
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真撰組。
対テロ組織部隊として幕府に確かな存在感を築いている彼等は、江戸の町にも溶け込み、その活躍ぶりはこの頃目を見張るものがあった。時に「チンピラ集団」といわれる時もあるが、それは彼等の実力が伴ってこその言葉。
廃刀令というこのご時世に許可を得て刀を持っているのだ。その実力は紛れもなく本物、そう簡単にやられる程弱い訳がない。
松平片栗虎という破壊魔の下、近藤勲という若干難ありだが真撰組を統べる良き局長。ゴリラ似だとかストーカーだとか、突っ込むべき所は多々あるが、隊士の誰からも愛される局長である。
そして副長の土方十四郎。別名、鬼の副長。戦っている最中ではその名に恥じぬ鬼神のような働きを見せ、周りの士気を上げては渇をいれてくれる頼り甲斐のある副長である。厳しすぎるだとかマヨラーだとか、局長と同じく突っ込む点もあるが、この際気にしていも仕方ない。
他にも一番隊隊長のサド王子やら、ミントン好きの監察やら、キャラの濃い面々が揃っているが、紹介していてはキリがないという事で割愛。
とにかく、江戸の一角にはそんな組織があって、日々鍛錬に励み、刀を振るうべき時の為に己の腕を磨いている。
――私、守りたいから強くなりたいんです
屯所でたった1人しか居ない女隊士はそう言った。守りたいものがあるから、強くなりたいのだと。
それはそう、目に見えぬ彼等の結束があってこその話……。
そして今日も隊士達は稽古に励んでいた。
そう広くもない道場なので、大体は隊ごとに稽古をしている。朝食が過ぎた今、道場を思う存分使っているのは一番隊。
しかしどうにも様子がおかしい。
たまたま近くの廊下を歩いていた土方が気がついた。
大体は道場で稽古をしていたら、土方が今立っている場所には気合の声や打ち込む音などが聞こえてくる筈なのである。何故か今、その音が全くという程聞こえないのだ。
「(サボってんのか……?)」
先程の説明では、真撰組は日々稽古に励むと書いたが、実際の話、そうでない時もある。ダレたり、適当にやったり、さぼろうとしたり、たまにそういった人物が現れると土方が見つけ次第渇をいれる。気のせいでなければその相手は大抵が一番隊隊長である。
そして土方と同じく渇を入れてくれるのは、緋村。
怒るという行為は実質とても体力が居る。その役割を彼女も一緒に担ってくれているのは、土方にとって大変ありがたい話である。
道場からなんの声も聞こえてこないのは不安だが、緋村も居るだろ、という考えに至り土方は特に気にとめずに歩き出す。だが、1人の隊士が派手な足音を立てながら彼の所に向かってきたのだ。副長、と呼ばれれば止まるしかない。剣道着を着ているのを見る限り稽古中の隊士であろう。息を切らしながら土方の後ろに立っていた。何となく嫌な予感が土方に過ぎる。
「土方副長!」
「みなまで言うな」
「話も聞いてもらえないんですか!?」
「また総悟が何かやらかしたんだろ」
「わ、分かるんですか…?」
「何となくだ。…まぁ俺が行くまでもねぇ。緋村が居んだろ?それならだいじょ…」
「その緋村も今大変なんですってば!」
「は?」
そう言われて、土方は思わず緋村という女隊士について振り返ってみる。
彼女は確かに沖田の補佐的な役割としては充分な力を発揮してくれている。
が、彼女の全ては常識で出来ていただろうか?よくよく思い出してみれば、ふんどし仮面騒動の時には平気で「奴を血祭りにあげるんです」と笑顔で言いのけた結果、見回り中に見事に奴を捕らえ、そして屯所に連行した暁に「介錯用の刀を持ってきて下さい。私が奴の首を落とします」と言うような女なのである。常識人とは……少しほど遠い。
「……緋村"も"大変って…何が……」
「もうホントに大変なんですよ!俺達じゃ手がつけられないんです!」
「……何だよ…」
「いや、きっかけは分かんないんですけど、気がついたら隊長と緋村が本気で喧嘩しちゃって、今は模擬刀で斬り合い始めてます」
「はよ止めろやァァアァアアア!!!!」
土方はそう突っ込むや否や、猛ダッシュで道場へと走っていった。
つい数週間前までは彼女の事で色々とあったが、それでも真撰組の結束は深まり、今日もなんて事ない日常が屯所の中では繰り広げられていた。
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