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私の目の前で、唸り声を上げ続けるサーヴァント。
青い髪、すらりとした長身。顔のパーツそれぞれを記憶と照合しても、『村瀬大』以外に該当者はいない。しかし、彼が身に着けている服、そして何より禍々しい雰囲気が別の特異点で出会い縁が結ばれているランサー・村瀬大と何一つ一致しない。
「だ、い……?」
呆けている私に追い打ちをかけるように、彼は咆哮をあげて拳を地に振り下ろした。
拳の下からバキバキと音を立てて地面が割れる。その亀裂は、力の波動とともにこちらへと襲ってくる。
「マスター!」
焦りしか感じられない声。
誰なのかと認識する前に、誰かに膝下から身体を掬い上げられる。
咄嗟にしがみついて、必死に息を整えようと呼吸をする。ようやく視界が定まったところで、ライダーが自分を抱えて飛んだのだと理解した。
横を過ぎ去る風景から察するに、戦闘を避けるべく退避している。
「大丈夫か?!」
通信から聞こえる音声も、焦りが感じられる。
私が反応するより早く、ライダーが答えた。
「どうにか! 全く話通じる気配がない村瀬大っぽいサーヴァントに目ぇつけられましたけど!」
「こちらで取れたデータと照合しても、あれは『村瀬大』で間違いないだろう。クラスは恐らくバーサーカー、しかも意思疎通不可能な重度の狂化状態だ!」
クラスの変化、そして重度の狂化。考えられる原因はーー。
「せ、聖杯のせいですか?!」
「可能性はあるが、確定ではない! 以前レイシフトした特異点でもあっただろう、『村瀬大』という英霊の別側面である可能性も否定できない!」
通信で別の可能性を挙げられ、ハッと息を呑む。
言われれば、そうだった。
聖杯の所有者による霊基の変質以外に、英霊の持つクラス適性によって現界するクラスが変わる場合もあった。
「マスターは日本出身だろう。彼の逸話を、聞いたことはあるんじゃないか?」
ライダーと並んで走るキャスターに尋ねられる。
記憶を片っ端からひっくり返し、バーサーカーとなり得る逸話を探す。そうして五つ目ほどの引き出しを漁ったあたりで、ようやく見つけた。
--夜に風が吹き、何かに切られた痛みを感じたら、それは鎌鼬の仕業かもしれない。しかし、昼ならば違う。『辻斬り様』だ。『辻斬り様』に見つけられたが最後、命はない。
昔聞いた、都市伝説に近い怪談。その一説だ。
「『辻斬り様』……『辻斬り様』です、多分!」
「ツジギリサマ、だと?」
キャスターが怪訝な声で呟く。
通信の向こうでもざわつきが聞こえた。
「日本に伝わる、怪異の物語です」
--『辻斬り様』は、身寄りのない子どもを引き取り育てる僧兵だった。だが、彼の不在を狙って盗賊が押し入り、子どもたちは皆殺し。悲しみ、怒り狂った僧兵はその場にいた盗賊を全て斬り殺した。しかしそれでも彼の怒りは収まらず、妖に成り果てた。
「妖となった『辻斬り様』は、己の目の前に現れた生者を『盗賊』と見なし殺す。彼が現れる条件は『伝説の発端である土地』以外分からない。故に、天災を指しているという説もあったはずです」
「それ、弱点って弱点ないパターンだなオイ!」
「まるで、かの『人類最強の英雄』だな」
今も狂戦士は私達を追っている。このままでは、迎え撃つ以外に術がない。しかし、突破口もない。
万策尽きた、なんて考えたくなかった。
青い髪、すらりとした長身。顔のパーツそれぞれを記憶と照合しても、『村瀬大』以外に該当者はいない。しかし、彼が身に着けている服、そして何より禍々しい雰囲気が別の特異点で出会い縁が結ばれているランサー・村瀬大と何一つ一致しない。
「だ、い……?」
呆けている私に追い打ちをかけるように、彼は咆哮をあげて拳を地に振り下ろした。
拳の下からバキバキと音を立てて地面が割れる。その亀裂は、力の波動とともにこちらへと襲ってくる。
「マスター!」
焦りしか感じられない声。
誰なのかと認識する前に、誰かに膝下から身体を掬い上げられる。
咄嗟にしがみついて、必死に息を整えようと呼吸をする。ようやく視界が定まったところで、ライダーが自分を抱えて飛んだのだと理解した。
横を過ぎ去る風景から察するに、戦闘を避けるべく退避している。
「大丈夫か?!」
通信から聞こえる音声も、焦りが感じられる。
私が反応するより早く、ライダーが答えた。
「どうにか! 全く話通じる気配がない村瀬大っぽいサーヴァントに目ぇつけられましたけど!」
「こちらで取れたデータと照合しても、あれは『村瀬大』で間違いないだろう。クラスは恐らくバーサーカー、しかも意思疎通不可能な重度の狂化状態だ!」
クラスの変化、そして重度の狂化。考えられる原因はーー。
「せ、聖杯のせいですか?!」
「可能性はあるが、確定ではない! 以前レイシフトした特異点でもあっただろう、『村瀬大』という英霊の別側面である可能性も否定できない!」
通信で別の可能性を挙げられ、ハッと息を呑む。
言われれば、そうだった。
聖杯の所有者による霊基の変質以外に、英霊の持つクラス適性によって現界するクラスが変わる場合もあった。
「マスターは日本出身だろう。彼の逸話を、聞いたことはあるんじゃないか?」
ライダーと並んで走るキャスターに尋ねられる。
記憶を片っ端からひっくり返し、バーサーカーとなり得る逸話を探す。そうして五つ目ほどの引き出しを漁ったあたりで、ようやく見つけた。
--夜に風が吹き、何かに切られた痛みを感じたら、それは鎌鼬の仕業かもしれない。しかし、昼ならば違う。『辻斬り様』だ。『辻斬り様』に見つけられたが最後、命はない。
昔聞いた、都市伝説に近い怪談。その一説だ。
「『辻斬り様』……『辻斬り様』です、多分!」
「ツジギリサマ、だと?」
キャスターが怪訝な声で呟く。
通信の向こうでもざわつきが聞こえた。
「日本に伝わる、怪異の物語です」
--『辻斬り様』は、身寄りのない子どもを引き取り育てる僧兵だった。だが、彼の不在を狙って盗賊が押し入り、子どもたちは皆殺し。悲しみ、怒り狂った僧兵はその場にいた盗賊を全て斬り殺した。しかしそれでも彼の怒りは収まらず、妖に成り果てた。
「妖となった『辻斬り様』は、己の目の前に現れた生者を『盗賊』と見なし殺す。彼が現れる条件は『伝説の発端である土地』以外分からない。故に、天災を指しているという説もあったはずです」
「それ、弱点って弱点ないパターンだなオイ!」
「まるで、かの『人類最強の英雄』だな」
今も狂戦士は私達を追っている。このままでは、迎え撃つ以外に術がない。しかし、突破口もない。
万策尽きた、なんて考えたくなかった。
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