【RYOTA】晴れた夏、青い海
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図書館のグループワークスペース。
涼太は、そこに最も同じ場所に居たくない同期と作業をしていた。
同じ学部かつ同じゼミに所属する同期の女子学生、名字名前。何の部活か、までは詳しく知らないが、体育会系の部活であることは覚えている。言動が粗雑で、涼太とは正反対の人間だ。正直、出来ることなら関わりたくなかった。
そんな相手と何故同じ空間にいるのか、と言えば。
「こうも色々タイミング被るとはなぁ」
少し離れた場所で作業をしていた名字が小さく呟き、椅子の背もたれに寄り掛かる。
「何が?」
無駄口叩いてないでさっさとやれ、という言葉は喉元で飲み込む。
そんな涼太の思いも知らない名字の話が続く。
「だって、みんな揃って空いてないって」
「そういうこともあるでしょ」
「まー、そうだけどさ」
納得がいかないような表情をして、名字は再び目の前に置いていたパソコンの作業へと戻った。
涼太としては、ここにいない同期一同を恨みたい。何故自分と名字名前だけに押し付けた、と。
担当教授から定められた期限のグループワークに際し、どうしても今日作業する必要があった。ところが、涼太と、名字名前以外は様々な事情により不在。結果として、二人だけの作業だ。
これは『閻魔帳』が埋まるな、と考えながらタイピングを進めた。
それからしばらくしないうちに小さくテーブルが叩かれる。
「桜庭、桜庭」
「……何」
もう飽きた? と出かかった言葉は、名字にかき消された。
「もう結構時間経ったし、ここでやめにしても良いんじゃない?」
「は? そんなに、」
「もう2時だしさ」
そう言って、名字は左手首に付けている腕時計を見せた。
盤が指しているのは、確かに2時だった。
二人が作業を始めたのは正午過ぎ。既に2時間は経過している計算だ。
時間が過ぎる速さに驚いていると、名字が遠慮がちに「あのさ、」と口を開いた。
「桜庭、この後予定ある?」
「特には」
突然の問い掛けに、眉を顰める。
ほぼ正面に見える同期の顔に、珍しく自信が見えなかった。
「じゃあさ、ちょっと遠出してみない?」
「遠出?」
「あ、そんな遠くないから大丈夫だよ?!」
名字の弁解は、涼太が思っていたのはズレたものだった。
「……そこじゃなくて、どこに行こうとしてるの」
涼太にとっては距離も勿論懸案事項だが、場所が最も大きい。
呆れを含めて返せば、名字は少し顔色が良くなった。
「海!」
「海?」
瞳を輝かせて答えた名字の頭部に、ぴこぴこと動く犬耳が見えたのは見間違いだろうか。
オウム返しをした涼太は一瞬だけ目を細めた。
「ちょっと走れば海に着くんだ。そこ! 今日はそこまで混んでないはずだし、海水浴目的じゃないから!」
「ちょっと走ればって、徒歩?」
「バイク!」
ーー何だろう、この小学生と喋ってるような感覚。
次々と名字の口から飛び出てくる単語に、涼太は頭を抱えたくなった。
「バイクって……」
「私の後ろに乗れば大丈夫! 二人乗りだし! 装備もある! 乗る前に色々教える!」
涼太がズレた返答を指摘しても、もう直らないだろう。
「……ちょっと待ってて」
溜息交じりの返答に、名字は全く気付いた様子もなく何度も頷いた。
涼太は、そこに最も同じ場所に居たくない同期と作業をしていた。
同じ学部かつ同じゼミに所属する同期の女子学生、名字名前。何の部活か、までは詳しく知らないが、体育会系の部活であることは覚えている。言動が粗雑で、涼太とは正反対の人間だ。正直、出来ることなら関わりたくなかった。
そんな相手と何故同じ空間にいるのか、と言えば。
「こうも色々タイミング被るとはなぁ」
少し離れた場所で作業をしていた名字が小さく呟き、椅子の背もたれに寄り掛かる。
「何が?」
無駄口叩いてないでさっさとやれ、という言葉は喉元で飲み込む。
そんな涼太の思いも知らない名字の話が続く。
「だって、みんな揃って空いてないって」
「そういうこともあるでしょ」
「まー、そうだけどさ」
納得がいかないような表情をして、名字は再び目の前に置いていたパソコンの作業へと戻った。
涼太としては、ここにいない同期一同を恨みたい。何故自分と名字名前だけに押し付けた、と。
担当教授から定められた期限のグループワークに際し、どうしても今日作業する必要があった。ところが、涼太と、名字名前以外は様々な事情により不在。結果として、二人だけの作業だ。
これは『閻魔帳』が埋まるな、と考えながらタイピングを進めた。
それからしばらくしないうちに小さくテーブルが叩かれる。
「桜庭、桜庭」
「……何」
もう飽きた? と出かかった言葉は、名字にかき消された。
「もう結構時間経ったし、ここでやめにしても良いんじゃない?」
「は? そんなに、」
「もう2時だしさ」
そう言って、名字は左手首に付けている腕時計を見せた。
盤が指しているのは、確かに2時だった。
二人が作業を始めたのは正午過ぎ。既に2時間は経過している計算だ。
時間が過ぎる速さに驚いていると、名字が遠慮がちに「あのさ、」と口を開いた。
「桜庭、この後予定ある?」
「特には」
突然の問い掛けに、眉を顰める。
ほぼ正面に見える同期の顔に、珍しく自信が見えなかった。
「じゃあさ、ちょっと遠出してみない?」
「遠出?」
「あ、そんな遠くないから大丈夫だよ?!」
名字の弁解は、涼太が思っていたのはズレたものだった。
「……そこじゃなくて、どこに行こうとしてるの」
涼太にとっては距離も勿論懸案事項だが、場所が最も大きい。
呆れを含めて返せば、名字は少し顔色が良くなった。
「海!」
「海?」
瞳を輝かせて答えた名字の頭部に、ぴこぴこと動く犬耳が見えたのは見間違いだろうか。
オウム返しをした涼太は一瞬だけ目を細めた。
「ちょっと走れば海に着くんだ。そこ! 今日はそこまで混んでないはずだし、海水浴目的じゃないから!」
「ちょっと走ればって、徒歩?」
「バイク!」
ーー何だろう、この小学生と喋ってるような感覚。
次々と名字の口から飛び出てくる単語に、涼太は頭を抱えたくなった。
「バイクって……」
「私の後ろに乗れば大丈夫! 二人乗りだし! 装備もある! 乗る前に色々教える!」
涼太がズレた返答を指摘しても、もう直らないだろう。
「……ちょっと待ってて」
溜息交じりの返答に、名字は全く気付いた様子もなく何度も頷いた。