【TSUBASA】KANDE【DE〇MOパロ】
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次に目覚めたのは、見たことも無い不思議な場所だった。
先程までいた路上ではない。空想の世界でよくある、浄化されているような印象を持つ空間。目の前にあるのは小さな苗木。上を見上げれば、開いた窓のようなもの。窓は横につくものではないか、と思ったが。
「っつーか、どこだここ……」
頭を掻きながら、辺りを歩き回る。
出口らしき場所は上の窓らしきもの、のみ。自分がどうやってこの空間に入り込んだのかも分からない。
どうしようか、と溜息を吐き苗木の横に座り込む。
一人唸っていると、人らしき気配がこちらへ歩いてくるのが視界の端に見えた。
そういえば、ここで人らしき気配を見ていない。ふと顔を上げてーーー息を呑んだ。
真っ黒の身体に、目と認識できる白い点々が二つ。細長い手足。身長は翼と同じくらいだろうか。
―――なんだあれ。
翼は恐怖で動けなくなった。
元来お化け屋敷や怪談が苦手な質だ。これが現実なら、悲鳴を上げて逃げ出したい。
ひたり、ひたり。
黒い人型はゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「くっ、来るな!」
言っても無駄だと思いつつ、目を背けて叫ぶ。
すると、人型は翼の言ったことを理解したかのように、ぴたりと止まった。
恐る恐る逸らしていた視線を戻すと、人型は一ミリも動いた様子がない。よく見ると、手に黒く、細長い箱を下げている。
「お前、何なの?」
会話が出来ると分かってもいないのに、人型に問いかけた。
人型からの返答はない。
「……喋れる?」
ひとまず確認するが、これも反応なし。
まじかよ、と思いつつこちらから近づく。
「えっと、俺に危害を加えるつもりは……ないよな」
翼が来るな、と言って足を止めた時点で分かりきっている。しかし、翼としてはきちんと確認しておきたかった。
人型は迷いもせず、首を縦に振る。
これで第一の不安は解消。
「お前は、ここがどこだか分かる?」
無反応。
「俺が、どこからここにやって来たか、知ってる?」
この質問で、人型の顔が上に向く。
「上……。あの窓みたいなところ、か?」
見上げていた顔を戻し確認すれば、首肯が返ってくる。
「ってことは、あそこまで登らないといけないってことか……?」
一人呟くが、周辺に登るための足掛かりは見上がらない。
いや、無理だろこれ。
言葉には出さず溜息を吐く。
そんな翼に、人型は何を思ったか持っていた黒い箱を足元に降ろした。そして何か操作をして箱を開ける。中にあったのは金色の物体だった。
「……それ、お前の?」
箱から金色の物体を出した人型は、翼の質問に反応を示さないままパーツを組み立て始める。出来上がったのは、縦笛というのか、何と言うのか。翼が見たことも無い楽器だった。
驚く翼を余所に、人型は楽器を構えた。
口に咥えているようには見えないのに、楽器からは音色が奏でられる。サックスにしては少し高い音、という印象だった。
翼が曲名も知らない歌。静かで、穏やかな曲調だ。
楽器以外に何も音が聞こえない空間で、人型は伸びやかに歌った。
そして曲が終わり、人型は顔から楽器を離す。
何も考えず、翼は数回手を叩いた。
演奏者は人ではない、なんて頭になくなっていた。ただ目の前の奏者に拍手を送りたかった。
「お前、凄いな。楽器できるんだ」
驚きながら呟けば、人型は一度だけ頷いた。
「俺、その楽器初めて見た。何て名前だろ」
人型に近づき、楽器を見つめる。
人型は嫌がるかと思ったが、意外にも楽器をこちらへ差し出してきた。
「え、触っていいの?」
戸惑いながら人型と楽器を見比べる。
人型は目を細めて頷いた。
もしかして、今笑ったのかも。
人型にも感情はある。それが分かっただけでも十分だった。
それから翼は試行錯誤を重ねて楽器を吹いてみた。しかし、人型のような伸びやかな音色、どころか音色らしき音も出ない。聞こえるのは自分が楽器に息を吹き込む音だけ。
「これ、難しいんだなー……」
楽器を吹く、なんてそれこそ小学校の鍵盤ハーモニカやリコーダーくらいだ。
人型の持っていた楽器は今まで翼が触れた楽器と形状が異なり、まずどうしたら音が出るのかまるで分からなかった。
要領が良いことは自負しているので誰かがやっているのを見ればコツを掴める気がするのだが、生憎近くにいるのは人型だけ。真似しようにも、人型がどうやって音を出しているのかも分からない。
「すげえな、お前」
素直にそう告げると、人型はまた目を細めた。
楽器を人型へ返す。
人型の細長い両腕が大切そうに楽器を受け取り、また顔の前に持っていく。また一曲演奏してくれるようだ。
今度の曲は、明るい行進曲。
人型は目を細めながら、身体を揺らす。
曲の途中で、棒立ちになっていた翼も気づけば鼻歌で演奏に乗っかりながら身体を揺らしていた。
何もない空間に、2つの音が重なった。
人型が演奏を終え、翼も深い息を吐く。
少し休憩、と苗木の隣に座ろうと後ろを振り向く。そのまま足を進めようとしたが、目の前にある苗木の変化にその足は止まった。
「あれ、でかく、なってる?」
最初に見た苗木は、本当に小さいものだったはずだ。隣に座っていても翼の座高を越えていなかった。
今目の前にあるのは、翼の座高は優に超える高さの苗木。
他の苗木なのかと思ったが、周辺にある苗木はこれしかない。
つまり、苗木が成長したということだろうか。
驚く翼に気付いたのか、人型もこちらへ歩み寄って来た。
人型も苗木の状態に驚いているようで、左右に頭が揺れる。恐らく首を傾げている、のだろうか。
ふと、翼はある可能性を思いつく。
「……なあ」
隣に立つ人型に声を掛ける。
人型の小さな瞳が翼を見つめる。
「何か、一曲吹いてくんない?」
もう少し聞き方というものがあったのではないか、と言ってから思った。
翼は慌てて言葉を重ねようと口を開くが、その時には人型が踵を返していた。
「ご、ごめん! もしかしたら、この木、お前の演奏聴いて成長しているのかもって思って!」
弁解する翼を余所に人型が向かったのは、楽器を立てかけていた黒い箱の前。人型の細長い手が楽器を取った。
どうやら、演奏してくれるらしい。
人型が奏でるのは、穏やかなメロディの中にどこか悲しみを帯びた曲。
翼は静かに演奏に耳を傾けた。
演奏が進むにつれ、苗木が少しずつ伸びている気がした。
曲が終わってから苗木を再び見ると、
「やっぱり、でかくなってる! 水も土の無いのに何で成長しているんだと思ったら、音楽か!」
はしゃぐ翼に、微笑む人型。
「このまま木が成長すれば、あの窓に届く!」
窓へ手を伸ばす。
今は空を切るだけだが、いつかは必ず掴める。確証が持てただけでも、翼は満足だった。
「今音楽が出来るのはお前だけだから、お前に頼りっきりになるな」
ごめんな、と謝ると、人型は首を横に振った。気にしていない、ということだろうか。
「これからよろしくな!」
その後名前を続けようとして、止まった。
「お前名前、って……喋れないんだったな」
はは、と乾いた笑みが零れる。
「取り敢えず、よろしく」
翼が手を差し出せば、人型も反対の手を差し出してきた。
握手をした人型の手は、何故だか翼自身のものより細く、頼りない感覚がした。まるで女の子だ、という印象がふと浮かぶ。
お前は何を考えてるんだ、こいつに性別があるかも分からないのに。
翼はすぐにその印象を払拭するように頭を振った。
先程までいた路上ではない。空想の世界でよくある、浄化されているような印象を持つ空間。目の前にあるのは小さな苗木。上を見上げれば、開いた窓のようなもの。窓は横につくものではないか、と思ったが。
「っつーか、どこだここ……」
頭を掻きながら、辺りを歩き回る。
出口らしき場所は上の窓らしきもの、のみ。自分がどうやってこの空間に入り込んだのかも分からない。
どうしようか、と溜息を吐き苗木の横に座り込む。
一人唸っていると、人らしき気配がこちらへ歩いてくるのが視界の端に見えた。
そういえば、ここで人らしき気配を見ていない。ふと顔を上げてーーー息を呑んだ。
真っ黒の身体に、目と認識できる白い点々が二つ。細長い手足。身長は翼と同じくらいだろうか。
―――なんだあれ。
翼は恐怖で動けなくなった。
元来お化け屋敷や怪談が苦手な質だ。これが現実なら、悲鳴を上げて逃げ出したい。
ひたり、ひたり。
黒い人型はゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「くっ、来るな!」
言っても無駄だと思いつつ、目を背けて叫ぶ。
すると、人型は翼の言ったことを理解したかのように、ぴたりと止まった。
恐る恐る逸らしていた視線を戻すと、人型は一ミリも動いた様子がない。よく見ると、手に黒く、細長い箱を下げている。
「お前、何なの?」
会話が出来ると分かってもいないのに、人型に問いかけた。
人型からの返答はない。
「……喋れる?」
ひとまず確認するが、これも反応なし。
まじかよ、と思いつつこちらから近づく。
「えっと、俺に危害を加えるつもりは……ないよな」
翼が来るな、と言って足を止めた時点で分かりきっている。しかし、翼としてはきちんと確認しておきたかった。
人型は迷いもせず、首を縦に振る。
これで第一の不安は解消。
「お前は、ここがどこだか分かる?」
無反応。
「俺が、どこからここにやって来たか、知ってる?」
この質問で、人型の顔が上に向く。
「上……。あの窓みたいなところ、か?」
見上げていた顔を戻し確認すれば、首肯が返ってくる。
「ってことは、あそこまで登らないといけないってことか……?」
一人呟くが、周辺に登るための足掛かりは見上がらない。
いや、無理だろこれ。
言葉には出さず溜息を吐く。
そんな翼に、人型は何を思ったか持っていた黒い箱を足元に降ろした。そして何か操作をして箱を開ける。中にあったのは金色の物体だった。
「……それ、お前の?」
箱から金色の物体を出した人型は、翼の質問に反応を示さないままパーツを組み立て始める。出来上がったのは、縦笛というのか、何と言うのか。翼が見たことも無い楽器だった。
驚く翼を余所に、人型は楽器を構えた。
口に咥えているようには見えないのに、楽器からは音色が奏でられる。サックスにしては少し高い音、という印象だった。
翼が曲名も知らない歌。静かで、穏やかな曲調だ。
楽器以外に何も音が聞こえない空間で、人型は伸びやかに歌った。
そして曲が終わり、人型は顔から楽器を離す。
何も考えず、翼は数回手を叩いた。
演奏者は人ではない、なんて頭になくなっていた。ただ目の前の奏者に拍手を送りたかった。
「お前、凄いな。楽器できるんだ」
驚きながら呟けば、人型は一度だけ頷いた。
「俺、その楽器初めて見た。何て名前だろ」
人型に近づき、楽器を見つめる。
人型は嫌がるかと思ったが、意外にも楽器をこちらへ差し出してきた。
「え、触っていいの?」
戸惑いながら人型と楽器を見比べる。
人型は目を細めて頷いた。
もしかして、今笑ったのかも。
人型にも感情はある。それが分かっただけでも十分だった。
それから翼は試行錯誤を重ねて楽器を吹いてみた。しかし、人型のような伸びやかな音色、どころか音色らしき音も出ない。聞こえるのは自分が楽器に息を吹き込む音だけ。
「これ、難しいんだなー……」
楽器を吹く、なんてそれこそ小学校の鍵盤ハーモニカやリコーダーくらいだ。
人型の持っていた楽器は今まで翼が触れた楽器と形状が異なり、まずどうしたら音が出るのかまるで分からなかった。
要領が良いことは自負しているので誰かがやっているのを見ればコツを掴める気がするのだが、生憎近くにいるのは人型だけ。真似しようにも、人型がどうやって音を出しているのかも分からない。
「すげえな、お前」
素直にそう告げると、人型はまた目を細めた。
楽器を人型へ返す。
人型の細長い両腕が大切そうに楽器を受け取り、また顔の前に持っていく。また一曲演奏してくれるようだ。
今度の曲は、明るい行進曲。
人型は目を細めながら、身体を揺らす。
曲の途中で、棒立ちになっていた翼も気づけば鼻歌で演奏に乗っかりながら身体を揺らしていた。
何もない空間に、2つの音が重なった。
人型が演奏を終え、翼も深い息を吐く。
少し休憩、と苗木の隣に座ろうと後ろを振り向く。そのまま足を進めようとしたが、目の前にある苗木の変化にその足は止まった。
「あれ、でかく、なってる?」
最初に見た苗木は、本当に小さいものだったはずだ。隣に座っていても翼の座高を越えていなかった。
今目の前にあるのは、翼の座高は優に超える高さの苗木。
他の苗木なのかと思ったが、周辺にある苗木はこれしかない。
つまり、苗木が成長したということだろうか。
驚く翼に気付いたのか、人型もこちらへ歩み寄って来た。
人型も苗木の状態に驚いているようで、左右に頭が揺れる。恐らく首を傾げている、のだろうか。
ふと、翼はある可能性を思いつく。
「……なあ」
隣に立つ人型に声を掛ける。
人型の小さな瞳が翼を見つめる。
「何か、一曲吹いてくんない?」
もう少し聞き方というものがあったのではないか、と言ってから思った。
翼は慌てて言葉を重ねようと口を開くが、その時には人型が踵を返していた。
「ご、ごめん! もしかしたら、この木、お前の演奏聴いて成長しているのかもって思って!」
弁解する翼を余所に人型が向かったのは、楽器を立てかけていた黒い箱の前。人型の細長い手が楽器を取った。
どうやら、演奏してくれるらしい。
人型が奏でるのは、穏やかなメロディの中にどこか悲しみを帯びた曲。
翼は静かに演奏に耳を傾けた。
演奏が進むにつれ、苗木が少しずつ伸びている気がした。
曲が終わってから苗木を再び見ると、
「やっぱり、でかくなってる! 水も土の無いのに何で成長しているんだと思ったら、音楽か!」
はしゃぐ翼に、微笑む人型。
「このまま木が成長すれば、あの窓に届く!」
窓へ手を伸ばす。
今は空を切るだけだが、いつかは必ず掴める。確証が持てただけでも、翼は満足だった。
「今音楽が出来るのはお前だけだから、お前に頼りっきりになるな」
ごめんな、と謝ると、人型は首を横に振った。気にしていない、ということだろうか。
「これからよろしくな!」
その後名前を続けようとして、止まった。
「お前名前、って……喋れないんだったな」
はは、と乾いた笑みが零れる。
「取り敢えず、よろしく」
翼が手を差し出せば、人型も反対の手を差し出してきた。
握手をした人型の手は、何故だか翼自身のものより細く、頼りない感覚がした。まるで女の子だ、という印象がふと浮かぶ。
お前は何を考えてるんだ、こいつに性別があるかも分からないのに。
翼はすぐにその印象を払拭するように頭を振った。