1.彼は猫? 犬? それとも狼?
夢小説設定
ヒロインの名前ヒロインの名前は2ページ以降登場します。
デフォルト名特有の話の流れがあるので、設定した名前によっては話が噛みあわない場合があります。
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数日後。
いつものカフェバーで落ち合った世良から訊かれたのは、電話をした後のことだった。
風邪は翌日治り、いざ出勤してみれば朝一番に上司から謝られた。
君に無理をさせた。
深々と頭を下げられてしまい、梓が慌てる羽目になった。
「で、過剰すぎる程に心配された」
「そうだろうね」
くすくすと笑う世良に、梓は居たたまれなくなり視線を左右に泳がせた。
「今まで小溝さんが何を言わなかったからでしょ? ちゃんと受け止めなさい」
「言い回しが母親くさい」
「そうさせてるのは誰でしょう?」
すぐに切り返され、何も考えていなかった梓は手札が無くなる。
「……前言撤回。世良、過保護すぎ」
「何とでも」
少しばかり棘を入れたつもりだが、世良は全くダメージを受けた様子がない。
「さて、小溝さん」
それどころか、こちらを更に追い詰めようとしていた。
「この前電話でした話、覚えてる?」
「……そこまで記憶飛んでない」
「なら宜しい」
子どもにでも言うような言い回しに眉を吊り上げたのは一瞬。
「直球で行くよ」
一呼吸置かれ、思わずこちらも姿勢を正す。
「……どうぞ」
固くなった声。
世良は何も指摘しなかった。
「小溝梓さん、俺はあなたのことが好きです。恋人として、付き合ってくれますか?」
言葉尻が震えている気がしたのは、聞き間違いだろうか。しかしそれを指摘し、からかう余裕は全く無かった。
深呼吸をして、深く頭を下げる。
「不束者ですが、宜しくお願い致します」
数秒黙り込んだ世良は、小さく吹き出した。
「不束者って言っちゃうところがなぁ」
「他にどう返せば良いの!」
顔を上げて抗議すれば、カウンターの向こう側からもケラケラと笑われる。
「良いんじゃないですか、梓さんらしくて」
「高塚は黙って」
ぎっと高塚を睨むが、相手は口笛を吹きながら水仕事に勤しんでいた。
「結婚式には呼んでくださいね」
マスターの笑みに、高塚が「俺も俺も」と手を挙げる。
「大学卒業してもここにいるんで」
「そうなんだ。勿論、呼ばせて頂きます」
「ちょっと、気が早い」
梓が端的に告げるも、里津花は不思議そうに首を傾げるだけだ。
「そう? 俺達の年齢的には丁度いいと思うけど」
「世良、お前の職業は」
「大丈夫、君がダウンした時に事務所の許可は貰いました。あんまり開けっ広げにはできないけどね」
にっこりとした笑みとともに出されるOKサイン。
そういう問題じゃない。
「私の意思は一切配慮されないんですか」
「配慮も何も、梓さん里津花さん以外と絶対上手くいかないっしょ」
「オイ」
しれっと酷いことを言われた気がする。
「それに関しては高塚君と同意見ですね。君の意地っ張りに付き合えるのは彼しかいませんよ」
「マスターまで!」
「ということみたいなので」
「世良!」
四面楚歌、とはこのことだ。
世良は満面の笑み。
「嫌?」
「たった今交際申し込まれたばっかりなのにそこまで考えられるかっ!」
「どーせすぐにOKしますよこの人」
「高塚!」
「まあ、気長に待ってあげてください」
「大丈夫です。俺、梓さんに関しては気が長い方なので」
当事者一人を置いてけぼりにした会話はそのまま完結し、それぞれが自由に行動を始めた。