今日は彼の誕生日。
一緒に暮らし始めて初めての彼の誕生日だ。今まではレストランに行ったり、お互いの家に行って祝ったりしていた。
最近は私の方が帰りが遅いせいで、彼の方が帰りが早く、同じぐらい疲れているだろうに夕飯を作って待ってくれている。本当に申し訳ない。

今日は彼に内緒で午後は有給にした。
彼の好きな麻婆豆腐や今日の夕飯の材料を買って、予約していたケーキを受け取るとひと足早く家に帰ってきた。
彼が残業でなければ、帰ってくるのは18時すぎ。
それまでに麻婆豆腐と、餃子、スープ、サラダを作らければならない。


料理はあまり得意ではなくて、いつもどこかで失敗してしまう。
今日も麻婆豆腐に気を取られてしまったせいで、隣のコンロで焼いていた餃子を焦がしてしまった。
慌てて火を消したのだけど、その後も動揺してしまい、豆板醤をレシピの表記の倍以上の量を入れてしまった。
本当に私、何やってもダメだ…
仕事も最近はミスばかりで、残業しているのも自分のミスのせいで仕事が終わらないからで。
今日ぐらいは気をつけようと思っていたのに。

見るからに辛そうな麻婆豆腐と、真っ黒に焦げた餃子を見つめてると涙がこぼれてきた。
なんで彼は、こんな私のことを好きでいてくれるのだろう。もっとふさわしい女の子はいるはずなのに。

「ただいま~、あれ?○○ちゃん、今日は帰るの早いね」
「孝支くん、おかえり、あのね、今日孝支くんお誕生日だから、早めに帰ってご飯作ろうって思ったんだけど…」
そう言って、豆板醤を入れすぎた麻婆豆腐と真っ黒に焦げた餃子を見せる。
「今日は失敗しないように気をつけていたのに最後の最後でやらかしちゃった…ごめんね…せっかくのお誕生日なのに…最低だよね…今から作り直すね…」
申し訳無さすぎて涙が止まらない。

孝支くんが近づいて抱きしめてくれた。

「大丈夫、大丈夫!作り直さなくていいよ、食べるからさ!」
「え、でも…たぶん美味しくないし…」
「○○ちゃんはは、俺のために作ってくれたんだよな、それだけでもめちゃくちゃ嬉しい!たとえ失敗してても、俺にとってはご馳走だべ!」

「うん…うん…ごめんね」
「もう謝るなって、それにさ、誰だって失敗はするし、間違えたりもするだろー?それでも途中で投げ出さないで最後まで頑張ってる○○ちゃんがかっこいいし大好きだから、ずっと一緒にいるんだよ」
「ありがとう…お誕生日おめでとう…孝支くん、大好き」
「なんだよ、突然。ありがとう、俺も好きだよ」


ちょっと辛すぎた麻婆豆腐も(辛いもの好きの彼にとっては美味しかったらしく結果オーライだったけど)、苦味のある餃子も、なぜか彼と食べると美味しく感じた。
この先ずっと、この味を忘れることはないと思う。

「やっぱり、○○ちゃんの作ったご飯を食べられるって幸せだべ」ってニカッと笑う彼の笑顔と共に。

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