刀剣乱舞
本丸の主は、近侍と事務作業から逃れ姿をくらますように徘徊している最中、手合わせのために拵えられた道場の前に差し掛かった。
内番の終わりを告げるには数分早いが、たまには顔を出してみるのも悪くない。
「ああっ! ご主人様!!」
「……主くん?」
汗をかく二振りの邪魔をしてはいけないと忍び足で入口から覗いていた審神者だったが、流石の刀剣男士である、気配を察知するのが早い。ほぼ同時にこちらに気付いたのだった。呑気に関心をしている審神者の前に、二振りが歩み寄る。
「どうしたんだい? 終わりの時間にはまだ早いけれど……」
何かあったのかと不安そうな顔持ちの亀甲を前に職務から逃げてきたとも素直に言えず、気晴らしだと誤魔化す審神者である。
一方の燭台切は少しの嘘に気がついたようで、
「あまり彼を困らせちゃだめだよ」と嗜める。
「主くんが見に来るって分かってたら、もうちょっと格好いい姿で出迎えたかったな……」
「ぼく今、汗くさいかも……ああっ、ごめんなさいご主人様の前で」
いきなり通りかかったのは自分の方なのだから、気にするなと審神者は諭す。
その上、一日の大半を道場過ごした二振りは、人間と違い驚くほどに乱れていない。
それにしても、くじ引きで決めた内番にしては、黒と白とで出来すぎた組み合わせであったと、亀甲と燭台切を交互に見つめる審神者である。
「ごっ、ご主人様に品定めされるような目つき……堪らないっ」
「亀甲くん……。確かに、僕と彼とでどっちを選ぶのか……なんてね」
それは自分の刀なのだから両方だろうと何も考えずに審神者は即答するのだが、二振りは押し黙ってしまった。
「いや……貪欲なご主人様もありだな……いろいろと捗ってしまう……!」
「……まあ、君はそう答えるよね。」
亀甲の悪くはなさそうな反応とは裏腹に、燭台切が悄気るのを感じた審神者だったが、内番終了を告げる鐘の音に救われる。
今日は手合わせ当番を違う刀に変えよう。
城の主は、いそいそと執務室へ帰っていくのだった。
内番の終わりを告げるには数分早いが、たまには顔を出してみるのも悪くない。
「ああっ! ご主人様!!」
「……主くん?」
汗をかく二振りの邪魔をしてはいけないと忍び足で入口から覗いていた審神者だったが、流石の刀剣男士である、気配を察知するのが早い。ほぼ同時にこちらに気付いたのだった。呑気に関心をしている審神者の前に、二振りが歩み寄る。
「どうしたんだい? 終わりの時間にはまだ早いけれど……」
何かあったのかと不安そうな顔持ちの亀甲を前に職務から逃げてきたとも素直に言えず、気晴らしだと誤魔化す審神者である。
一方の燭台切は少しの嘘に気がついたようで、
「あまり彼を困らせちゃだめだよ」と嗜める。
「主くんが見に来るって分かってたら、もうちょっと格好いい姿で出迎えたかったな……」
「ぼく今、汗くさいかも……ああっ、ごめんなさいご主人様の前で」
いきなり通りかかったのは自分の方なのだから、気にするなと審神者は諭す。
その上、一日の大半を道場過ごした二振りは、人間と違い驚くほどに乱れていない。
それにしても、くじ引きで決めた内番にしては、黒と白とで出来すぎた組み合わせであったと、亀甲と燭台切を交互に見つめる審神者である。
「ごっ、ご主人様に品定めされるような目つき……堪らないっ」
「亀甲くん……。確かに、僕と彼とでどっちを選ぶのか……なんてね」
それは自分の刀なのだから両方だろうと何も考えずに審神者は即答するのだが、二振りは押し黙ってしまった。
「いや……貪欲なご主人様もありだな……いろいろと捗ってしまう……!」
「……まあ、君はそう答えるよね。」
亀甲の悪くはなさそうな反応とは裏腹に、燭台切が悄気るのを感じた審神者だったが、内番終了を告げる鐘の音に救われる。
今日は手合わせ当番を違う刀に変えよう。
城の主は、いそいそと執務室へ帰っていくのだった。