刀剣乱舞
「ご主人様にいじわるをされてみたい」
「…………はぁ?」
畑当番の終わりも間近という時に話を切り出したのは、ここ一週間はペアを組んでいた働き詰めの亀甲である。
「ぼくがご主人様を呼びに言った時に、狸寝入りをしていてほしい。 何度呼びかけても答えないご主人様……狼狽えるぼく……それを笑いながら見ているご主人様……」
「…………」
自分の返事がないのも気にせず相手は続けるが、手を動かせと一瞥をくれる。
「いけないいけない、無駄話をしてしまったね。しかしその事でぼくを叱るご主人様も良い……っ!」
さっきから何を言っているんだ、こいつは。
疲れすぎておかしくなったのだろうか。
やれやれと雑草を抜く作業に戻るが、ふと、自分がされた主の狸寝入りを思い出し、手を止める。
正確な日にちは覚えていないが、それはいつか近侍を勤めていた夕暮れ、飯の支度が出来たと主を呼びに言ったときの事である。
「飯の準備が出来たとさ」、と。そのような声をかけたはずだ。
しかし、執務室の机に突っ伏した主は微動だにしない。
寝ちまったのかよ、と肩に手をかけ揺らすものの、伏せた目は開かれることがない。
これ以上どうしろっていうんだと何分か悩みたじろいでいると、そこにはニヤニヤ顔の主が観察していた。
……そんな一幕があったと漏らせば、亀甲は声を震わせる。
「……同田貫くん……きみはなんて羨ましい体験をしてるんだ……!」
まさかそんな輝いた目で返されるとは思いもしなかった。
「……へーへー、じゃああんたも夕飯の時に呼びに行けばいいんじゃねえの?」
「前に行ったとも! まじめに仕事をこなすご主人様だった……」
がっくりと肩を落とす亀甲だが、審神者として、真面目にしている姿の方が正しいのではないか。ーー
同田貫は混乱する。
(いや、まさかな)
まさか自分にだけ「いじわる」とやらをしたわけではあるまい。
頬が火照ったのは、二十時間も続く土弄りの所為だ。
「…………はぁ?」
畑当番の終わりも間近という時に話を切り出したのは、ここ一週間はペアを組んでいた働き詰めの亀甲である。
「ぼくがご主人様を呼びに言った時に、狸寝入りをしていてほしい。 何度呼びかけても答えないご主人様……狼狽えるぼく……それを笑いながら見ているご主人様……」
「…………」
自分の返事がないのも気にせず相手は続けるが、手を動かせと一瞥をくれる。
「いけないいけない、無駄話をしてしまったね。しかしその事でぼくを叱るご主人様も良い……っ!」
さっきから何を言っているんだ、こいつは。
疲れすぎておかしくなったのだろうか。
やれやれと雑草を抜く作業に戻るが、ふと、自分がされた主の狸寝入りを思い出し、手を止める。
正確な日にちは覚えていないが、それはいつか近侍を勤めていた夕暮れ、飯の支度が出来たと主を呼びに言ったときの事である。
「飯の準備が出来たとさ」、と。そのような声をかけたはずだ。
しかし、執務室の机に突っ伏した主は微動だにしない。
寝ちまったのかよ、と肩に手をかけ揺らすものの、伏せた目は開かれることがない。
これ以上どうしろっていうんだと何分か悩みたじろいでいると、そこにはニヤニヤ顔の主が観察していた。
……そんな一幕があったと漏らせば、亀甲は声を震わせる。
「……同田貫くん……きみはなんて羨ましい体験をしてるんだ……!」
まさかそんな輝いた目で返されるとは思いもしなかった。
「……へーへー、じゃああんたも夕飯の時に呼びに行けばいいんじゃねえの?」
「前に行ったとも! まじめに仕事をこなすご主人様だった……」
がっくりと肩を落とす亀甲だが、審神者として、真面目にしている姿の方が正しいのではないか。ーー
同田貫は混乱する。
(いや、まさかな)
まさか自分にだけ「いじわる」とやらをしたわけではあるまい。
頬が火照ったのは、二十時間も続く土弄りの所為だ。
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