その他
束ねられた札の中から眩い光が放たれ、絵描かれた姿へと変容する。
ひときわ輝く金の髪が風に揺られてオーロラのように靡き、白金に染められた両翼は天の使いのそれを思わせる。
獲物を扱うに相応しい、無駄のない天性の肉体を白亜の軽鎧が浮き彫りにする。
金の装備で覆われたかんばせからは、一切の表情を伺うことができない。ーー目覚めし王の名はフローディ。
「マスター、よろしいか」
カードの精霊として半具現化された今、彼の声から心境を察することができる。
寝そべったままゲームのプレイに興じていた私にとっては、よろしくないのが本音である。
……一応、王(ジェネレイド)の称号を冠するモンスターであるので、こちらの都合は顧みず話し始める気だろう。
私は手にしたゲーム機を置いてベッドの隅に座り、フローディへと向き直った。
「単刀直入に問うが。 今度のいくさでは私を外すつもりか?」
部屋の机の上には新しい王のカードを並べており、しばらくしたらデッキの調整をしようと悩んでいたところである。
まさか本当に抜くつもりだったフローディにそう投げかけられ、素直にYESとも答えられず口篭ってしまった。
「良い、良いのだ。好きにするが良い。主従とはそういうものである」
さすが王の言葉は身に染みるなどと現実逃避を始めてしまいたいが、わざわざ現界してまでいう言葉ではない。
むしろこれは……
「なんぞ、申してみよ」
姿勢を正して半笑いではあるが、デッキから抜かないという主旨のことを伝えた。
「……そうか。そうか……! 私の力が必要であるか、マスター」
この嬉しそうな声色を聞いてしまうと、どうもデッキに刺してしまうんだよなあ、などと。
精霊を認知できるというのもまた、困りものかもしれないーーと、フローディの後ろに列をなす王たちを見て思ったのだった。