その他
積まれた幾重もの札の中から一枚のカードが、眩いばかりの光を放ち、絵柄に描かれた姿へと変容する。
日常の中の異様な光景をよそに、一人部屋のベッドの上でゲーム機を両手に暇を持て余していた私はというと、”出た”と、幽霊と対峙する霊媒師のごとき反応であった。
「キサマ……寝床の上で惰眠を貪り、その醜態……苛だたしいぞ!!」
正論の喝である。私は二度頷いて受け流し、彼から視線を避けるように横を向く。
「このような懈怠の者が我を駆使しているなど、ああ……腹立たしい!」
そのうちフローリングを踏み抜くのではないかと思うほど震える脚に、壁にドンして穴を開けそうなワナワナとする腕。
デッキのキーカードたるクシャトリラ・ライズハートの精霊はイラストと同様に憤怒の化身のような性格をしており、事あるごとに具現化しては使用者である私を叱りつける始末である。
当初は彼の言う通りしゃんとしようと努めていたのだが、最近はそれでも尚怒り続ける彼の性質を分かってきた。
「何をどうしようがライズハートの気に触る」のであるならば、自分の好きに行動したろうが良いと、休息のひと時を怠惰で極めているというわけである。
彼がせっかく出てきたことだし、茶でも入れるかとティーセットを用意し始める。
「俺の家臣であるなら当然の持て成しだな。フン、気がきく奴だなどとは思わんからな!!」
彼の中での主従関係はデュエルモンスターズ界の理とは逆である。
自分もさほどこだわりがないので、好きにしてくれと感じではあるのだが。
待っている間も苛ついていたライズハートは用意した茶を一気に飲み干すと、
「キサマ……他のモンスターの前でもその体たらくでは承知せんからなーー」
などと、またもや面倒くさい要求を付けてカードの中に戻っていく。
はいはい、と二回返事をしたのが最後、
「返事は一度で良いッ!!」と、またもや怒られてしまうのだった。
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