天使族
天に迎え入れられる前より、絶世の美少年で通っている神秘の代行者は、太陽神の寵愛をも欲しいままにしていた。
彫刻を思わせる肉体に、整顔を持つ命の代行者も、忠誠心と能力の高さから太陽神に重鎮とされていた。
両者は自らのそれを解り切り、互いに地位を確立した上で、やはり反りの合わぬ相手として、今もまたーーマスター・ヒュペリオンの御前で膝を降りながらも、見えぬ火花を散らしあっていた。
「来たか、アースにネプチューンよ」
「はーい。ヒュペリオン様の前には、僕の方が早く着きましたっ」
「なっ、何をおっしゃるか。わたくしの方が先に到着いたしました」
「……うむ」
煽るアースに乗るネプチューン。心底どちらでも良いヒュペリオン。いつもと変わらぬ光景である。
「貴殿らを召集したのは他でもない。ワルキューレ殿へのもてなしについてだが……」
此度行われるのは、広い広い天空の聖域の中でも最前線に立つ、ワルキューレ達への労いを兼ねた慰問会の主催者についてである。
「過去の文献によりますと、彼女らは長髪のマスターに愛用されていたとの事ですので、パーシアス様がよろしいかと」
「納得であるな」
頷くヒュペリオン。
アースも過去のデュエリストの面影を出されたのは意外であったようで、内心(そうきやがったか)と動揺した。
「まっ、まあ、パーシアス様なら勇士にもなりますしぃ、ワルキューレ様も嬉しいんじゃないですかぁ?」
アースの素直な言葉に、槍を落としそうになるネプチューンである。
「貴様に肯定されるとは、明日は槍でも振るのか?」
「嫌だなあ、良いと思ったらノリますよぅ。それに、チャリオットたちともウマが合うんじゃないですかぁ?」
「……」
絶句するネプチューン。
自分はただ、(愛用していたデュエリストが長髪だったから長髪のパーシアスだったら嬉しいよね)、程度の選出理由で、そこまでのことは考えていなかったのである。
「フン……わたくしを舐めていただいては困る。ではヒュペリオン様、この度はパーシアス様に……」
「僕はゼラディアス様を推しますけどねぇ。
まあ言わずもがなですけどぉ、お眼鏡に叶うんじゃないですかぁ?」
ゼラの戦士の変容した姿の一つ、ゼラディアス。ワルキューレ好みの、まごうことなき勇士の中の勇士である。
「ゼラディアス殿は、天空の聖域を代表すると言っても過言ではない使者……」
「ヒュペリオン様もそう思いますよね! 困った時のゼラディアス様ですよぅ」
「うむ。良き案であるぞアース」
「ありがとうございまぁす。じゃあゼラディアス様で決定ーー」
イチャつきだす太陽神と神秘の代行者を他所に、ネプチューンはいたって冷静に、翼を広げて大急ぎで天気予報に向かっていた。
「…………お言葉ですがヒュペリオン様。ワルキューレ様たちへの慰問会の日ですが、サイクロンの予報がございました。いやぁ、聖域の危機です故、ゼラディアス様はいかがなものかと……」
「そうなったら慰問会もオジャンだけどな」
「……」
「……」
二人の間に雷の予報も出ている。睨み合う代行者たちに目もくれず、まだ悩んだ様子の太陽神。
「アースにネプチューンよ……双方の案を検討しよう。サイクロンについては、神の宣告も辞さぬ」
「「はっ!」」
力強いヒュペリオンの言葉に、二人の天使は声を揃える。
結局、どちらも選べなかった太陽神が出した答えはオネストだったそうな。
END
彫刻を思わせる肉体に、整顔を持つ命の代行者も、忠誠心と能力の高さから太陽神に重鎮とされていた。
両者は自らのそれを解り切り、互いに地位を確立した上で、やはり反りの合わぬ相手として、今もまたーーマスター・ヒュペリオンの御前で膝を降りながらも、見えぬ火花を散らしあっていた。
「来たか、アースにネプチューンよ」
「はーい。ヒュペリオン様の前には、僕の方が早く着きましたっ」
「なっ、何をおっしゃるか。わたくしの方が先に到着いたしました」
「……うむ」
煽るアースに乗るネプチューン。心底どちらでも良いヒュペリオン。いつもと変わらぬ光景である。
「貴殿らを召集したのは他でもない。ワルキューレ殿へのもてなしについてだが……」
此度行われるのは、広い広い天空の聖域の中でも最前線に立つ、ワルキューレ達への労いを兼ねた慰問会の主催者についてである。
「過去の文献によりますと、彼女らは長髪のマスターに愛用されていたとの事ですので、パーシアス様がよろしいかと」
「納得であるな」
頷くヒュペリオン。
アースも過去のデュエリストの面影を出されたのは意外であったようで、内心(そうきやがったか)と動揺した。
「まっ、まあ、パーシアス様なら勇士にもなりますしぃ、ワルキューレ様も嬉しいんじゃないですかぁ?」
アースの素直な言葉に、槍を落としそうになるネプチューンである。
「貴様に肯定されるとは、明日は槍でも振るのか?」
「嫌だなあ、良いと思ったらノリますよぅ。それに、チャリオットたちともウマが合うんじゃないですかぁ?」
「……」
絶句するネプチューン。
自分はただ、(愛用していたデュエリストが長髪だったから長髪のパーシアスだったら嬉しいよね)、程度の選出理由で、そこまでのことは考えていなかったのである。
「フン……わたくしを舐めていただいては困る。ではヒュペリオン様、この度はパーシアス様に……」
「僕はゼラディアス様を推しますけどねぇ。
まあ言わずもがなですけどぉ、お眼鏡に叶うんじゃないですかぁ?」
ゼラの戦士の変容した姿の一つ、ゼラディアス。ワルキューレ好みの、まごうことなき勇士の中の勇士である。
「ゼラディアス殿は、天空の聖域を代表すると言っても過言ではない使者……」
「ヒュペリオン様もそう思いますよね! 困った時のゼラディアス様ですよぅ」
「うむ。良き案であるぞアース」
「ありがとうございまぁす。じゃあゼラディアス様で決定ーー」
イチャつきだす太陽神と神秘の代行者を他所に、ネプチューンはいたって冷静に、翼を広げて大急ぎで天気予報に向かっていた。
「…………お言葉ですがヒュペリオン様。ワルキューレ様たちへの慰問会の日ですが、サイクロンの予報がございました。いやぁ、聖域の危機です故、ゼラディアス様はいかがなものかと……」
「そうなったら慰問会もオジャンだけどな」
「……」
「……」
二人の間に雷の予報も出ている。睨み合う代行者たちに目もくれず、まだ悩んだ様子の太陽神。
「アースにネプチューンよ……双方の案を検討しよう。サイクロンについては、神の宣告も辞さぬ」
「「はっ!」」
力強いヒュペリオンの言葉に、二人の天使は声を揃える。
結局、どちらも選べなかった太陽神が出した答えはオネストだったそうな。
END
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