あの頃とは違う未来(いま)

グレンディオス
『そういえばさ…ゾディアック…研究はどうした?』

一段落して俺は出されたお茶を飲み深呼吸した後ゾディアックに問いただした。
実は気になっていた…彼と出会う前はずっと他クランからユニットを実験材料として連れてきて感情のデータをとっていたゾディアック。
何故今はそれをしないのか?あんなに無表情だった無感情だったゾディアックが、研究しか生きがいなコイツが…
ふと、ゾディアックを見ると両手で一枚の写真を持ちその写真を言葉では表せないくらいの優しい表情で見つめながら笑って見ていた…
初めて見た…ゾディアックの…こんな表情…。

ゾディアック
『ゼロと出会い私は変わりました。あの時ゼロを研究材料として此処へ連れて来なかったら…彼の瞳に私が魅入られ無かったら…こんな未来(いま)はありませんでした。今では写真を見るだけでもゼロが恋しくて、早く会いたくて堪らないのです。グレンディオス…貴方にもそういう方が出来ると良いですね!』

笑顔で笑うゾディアックが俺の知らない彼になっていた。
俺が見ている彼は本当にゾディアックなのか?
疑うにも出されたお茶が苦くて現実を体感させてくれた。
正しく現実、間違いない。
もう、歪んで俺を愛していた彼はいない…
脳内に浮かぶ過去の彼を必死に消そうとした…
どうしてだろう…彼が消えない。

グレンディオス
『そ、そうか?よかったな、お前が幸せなら俺は…』

俺は…?
俺は何が言いたいんだろう…
満足だ?幸せだ?安心した?前に進める?
いくつか言葉が出るが全て疑問で自問自答で答えが見付からずモヤモヤとした感情で俺の中に渦巻く…
俺達は従兄弟みたいな存在だ、そんなゾディアックに…

ゾディアック
『グレンディオスも私の家族ですから!必ず幸せに…』

バンッ!と机を勢いよく手で叩いた。
手の痛みより先に心が痛んだ…
勝手に愛を伝えて勝手に俺を捨てて…

グレンディオス
『そんな勝手な事っ…酷い…。』

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