継がれない思いと継がれていく思い

「…っ…ここは……」

「お目覚めか…お前さんには聞きたいことができたんだ。
あの場で聞いても良かったんだが…お前さんの悲鳴を聞いたら村の奴らが怖がるだろ…
これから地獄のような生活になるっていうのに…可哀想だろう…?」

「……おれには関係ないってんだ…」

「………。

ダーシャは何故お前なんかのために命を落としたんだ?」

「…っ…そんなのおれが知るわけなっがぁ?!」

「答えない限りこの拷問は終わりはしない」

「…ふざけるな…殺すのなら早く殺せってんだ…っぐ!」

「…指2本目だな。答えないとあとの8本も無くなっていくぞ?」

「知らないってんだ…痛いのは嫌だってんだ…」

「じゃあ、誰が知ってるんだ?教えてくれよ」

「…知らないっう゛ぅ…!」

「…また気絶したのか…このぐらいの痛みで情けない…」

ーーまったくだ…情けないぞ、スティルーー

「?!」

ーーいくらでも相手になってやろう。この村は私が守るーー

「ダーシャ…?いや、これは…」

ダクロと共にダクロの武器である大鎌も一緒に持ってきていたスティル。
その大鎌を静かに見つめる。

ーーおい、スティル。お前本気で村を支配する気ないだろ?私にはお見通しだーー

ーーその鬱陶しい前髪あげてみろ…っ!…な、なんて綺麗な顔してんだ…?これからは前髪上げろ、分かったか?ーー

ーー何だその間抜けな顔は…す、少なくとも…わ、私はだな…お前のこと相棒だと思ってい、る…っだぁ!やっぱ今のはナシだ!むず痒い!!ーー

「過去の記憶…ダーシャの鎌から記憶が流れてくるのか…」

ーー村から少し離れないといけない用ができた…村のこと頼んだぞ、スティルーー

「それが最期の言葉だったな…懐かしいな…

なあ、いつになったら戻ってくるんだ…ダーシャ…」

ーーすまない…スティルーー

「!!

…アンタは物に思いを込めれる能力を持っていたな…
まさかとは思ったが…自分の大鎌に俺への思いも込めてたのか…」

ーー私はもう帰れなくなってしまった…村のことを…ダクロのことを頼むーー

「おいおい…とんでもない遺言遺していくなよな…」

ーーお前のことだ…勘弁してくれって思っているだろ?…頼ってばかりで悪いな…ーー

「…ダーシャ…」

ーー………。まだ聞いてるか…?ーー

「…俺はアンタと違ってのんびり屋なんだ。話聞かずに消えやしないさ」

ーー…あ、あのな…スティル…ーー

「はいはい…」

ーーお前のことな…す、好き…だったんだ…ーー

「…そんなの言われなくても知っている…アンタが不器用なのも知っている」

ーーいや…今でも好きだぞ…ぐぅ!やっぱ恥ずかしい!何でもない!!今のはナシだ!!ーー

「………。」

ーーダメだ、ダメだぁ…もう私はお前に会うことができないんだから…伝えないと…ーー

ーースティル…お前は悪人には向いていないぐらいに優しい奴だ。
ラグースなんて辞めてダクロと一緒にダータウンを守っ…ーー

「………?」

ーー本当は…本当はな…っ…スティルともっともっと一緒に戦いたかった…
もっともっと一緒にいたかった…っ…ーー

「…ダーシャ…」

ーー…こんな情けない最期で…すまない…ーー

「…情けなくなんてないさ…愛おしいヒトの心の籠った言葉なんだ…嬉しくてたまらないさ…」

ーー………。

まさかまだ聞いているのか…?ーー

「そりゃ聞いてるさ」

ーー……愛してる…スティルーー

「あぁ…俺も愛してる…ダーシャ…」
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