第2章 目覚める力

「我はお前の中に眠っている寝坊助を叩き起こしたくて堪らないのだ」

「…長に目をつけられて可哀相だね、デイタ君。」

「圧倒的な暴力とはこのことだな。」

「アニキ大丈夫でしょうかい…」

稽古の内容はシンプルだ。
俺がファボにボコボコにされるというな。

どうやら俺の中に眠っている力は俺が瀕死の状態じゃないと出てこねぇらしい。
瀕死の状態を繰り返して、力を呼び起こすという。

…おかしいぜ。稽古ってもう少し相手に寄り添うものじゃねぇのか。

遠のく意識の中理不尽な現状に疑問を持つ。

ーーデイタ…ーー

あ、またあの声だ。
なあ、アンタは一体何者なんだ?

ーー…私には自分が何者か名乗る資格もありませんーー

何だそれ…よく分からねぇ…

ーーあの男は非常に危険ですーー

ーー誰にも見えないはずなのに…貴方の眼を見ただけで貴方の中にいる私のことを見抜きましたーー

ーーそして、早く出てこいと貴方を痛めつけて…ーー

要するにアンタはファボが怖いんだな。

ーー…はい。怖いです。私なんかが恐れを持つのも甚しいことですがーー

大丈夫だぜ。俺が守ってやるから。

ーーデイタ…ですが私なんかが…これ以上貴方を苦しめる訳には…ーー

…何でそんなにも自分に自信が持てないんだ?

ーーだって…私は………ーー

アンタのことはよく知らねぇが
アンタは俺のことを守ってくれているじゃねぇか。
アンタのおかげで俺は生きているんだ。

無理に詳しいことは聞かねぇ。
アンタが話したくなったら出てくれば良いぜ。

ーーですが…このままでは貴方が…ーー

「俺は死なねぇ!だから安心しろ!!」

「お?」

俺は朦朧とする意識の中、力を振り絞りファボに攻撃をする。
突然、力が湧きおこった俺に驚いたのか攻撃が当たった。

そしてまた俺は気を失った。
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