紅い眼と蒼い眼

あれから長の言いつけ通りに村のヒト達に接し続けたけど何も変わらない。

そんなある日の出来事だった。
この日は長が村の外に出かけていた。

「きゃぁあああ!!モンスターよ!!」

村に大きなモンスターが現れた。
初めて見るモンスターに恐怖のあまり身動きが取れない。
ヒト型で身体がスライムの様にゼリー状になっている。
大きな口に凍り付くような恐ろしい目。

〈ア…アアアアア゛…〉

「ッチ!攻撃が効かない!」

村の戦士達が応戦するが攻撃が効いていない。

〈ア゛ア゛ア゛ア゛!!!〉

「うああああ゛あ゛!!!」

モンスターが吐き出した液体を浴びて溶けるヒトたち。
怖い。怖い怖い怖い。
助けて…長…

ーいずれはお前が私の跡を継ぐのだー

「!!」

長の言葉が頭によぎる。

…おれも長みたいに皆を守れるかな…。
仲良くなれるかな。

「や、やめろぉ!」

落ちていた大鎌を手に取り斬りかかる。


〈アアアアア゛…〉

き、効いていない…。
やっぱおれにはできっこないんだ…

「ダクロ!」

「お、長ぁ…」

村の危険を察知して帰ってきた長。
長の方へ振り向く。

「危ない!!!」

「!」

モンスターの攻撃が当たった。
全身に激しい痛みが走り悲鳴を上げる。

長は闇の力を使い、一瞬でモンスターを消し去った。
そしておれの元へ急いで駆けつける。
治療をしようとおれに触れる。

…その時だった。

「…ダクロ……?」

「あああああああああ!!!」

身体の激しい損傷をきっかけに、おれの中に眠っていた闇の力が暴走した。
溶けた部分を覆い、長の手ものみこんだ。
そして、そのまま長をのみこもうとする。

長は離れずに俺を抱きしめる。

「化け物がぁああ!!」

村のヒト達が長を守ろうとおれに攻撃をする。
しかし、暴走した闇の力によって塵と化した。

「大丈夫。ダクロ…お前は強くて優しい子だ。」

長はおれから離れず語りかける。
闇の力が長をのみこんでいく。

「私の愛する息子…」

「…お、さ……」

消え行きながら優しく微笑む長。

こうして長との優しい時は終わった。
おれの意識はここで途絶えた。
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