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第3章 幾つもの思い

「あ、いたいた…」

「…俺は嫌だって言ったよな、ツルギ?」

結局ツルギに流されてしまった俺は、サラムの後を追った。
噴水広場のベンチに座っているヤイバを見つけたサラム。
俺たちは茂みに隠れて見守る。

「やっぱここにいたんだな、ヤイバ」

「………。」

陽気に話しかけてヤイバの隣に座るサラム。
ヤイバは黙ってサラムを見ていた。

「デイタ君…悪党が綺麗な噴水広場のベンチで腰掛けてるよ?なんかウケるね」

「…お前なぁ…」

楽しんでるツルギに呆れてため息が出る俺。

「…しかしまぁ…お前さっきまで爆睡してたのにすごいクマだな…寝れてないのか?」

「………。」

ヤイバの顔に手を添えようとしたサラムの手を叩き弾くヤイバ。

「…まだ怒ってるのか?俺は謝らないぜ?悪いことしたとは思っていないからな」

「……ねぇよ…」

「…ん?」

「お前はなにも悪くねぇっつってんだよ…
お前が自由気ままなクズ野郎なのは昔から知ってる」

「…そんな言い方しなくても良いじゃないの…?」

きっと普段言われないようなことを言われたのだろう。
サラムは目をパチクリさせている。

「ウタオル地区アジトの研究員半数、戦闘員半数…お前の勝手な夢のために死んでいった」

「あぁー…抜け出そうとした俺様を殺そうとしてきたのは向こうからだぜ?ただの自己防衛だろ?
まあ…研究員はついでだけど…泣き虫も清清(せいせい)としたんじゃないか?」

何も悪びれなく言うサラムにヤイバは噴水から流れる水をただ見ていた。

「……サラムが…?嘘だろ…?」

「…カヌヤがあんなに警戒してた理由が分かったね。相当イカれてるよ…」

サラムのとんでもない行為を聞いた俺とツルギは驚きを隠せずにいる。

「最後にお前から逃げるのは一苦労だったな…二度とゴメンだ」

「………。」

「ああやって子供の頃のツノヤとツルギも逃したのか?
お前って、優しくないんだか優しいんだか分からない時あるよな…って、違う。
俺はお前と仲直りしたくて来たんだ」

「…笑わせるな…
お前が勝手に出て行ったんだろ…」

「そりゃデイタの首を飛ばすわけにはいかなかったからな。俺の夢を叶えるチャンスなんだからよ」

「…自由気ままな…大クズ野郎…」

「ヤイバ…?大クズ野郎って初めて聞いたぜ?」

「……何で……だろうな…」

「?!!」

ヤイバの言葉を聞いて固まるサラム。
ヤイバは気にすることもなくサラムの肩に頭を乗せて眠りについていた。

…ヤイバの奴なんて言ったんだ…?
サラムが固まったままだぜ?

「…仲直りできたのかな…?それにしても、複雑だねぇ…
ヤイバもラグースの命令でデイタ君の首を狙わないといけないんだろうし…」

「そうだな…アイツすごく良い奴なのにな…小さい頃のツノヤとツルギを逃がしたのもヤイバだったんだな…」

「…デイタ君はお人好しだよね…命を狙われてるんだよ?」

「…そうか?アイツはああ言ってるけど、誰も殺さないと思うぜ」

「…本当かなぁ…戦った時マジな目をしてたけど…」

「あの時はヤバかったけど大丈夫だ!ほら、今は気持ち良さそうに寝てるぜ」

「…確かにあの可愛らしい寝顔を見てたら大丈夫な気がしてきたよ」

「貴様らは馬鹿なのか?」

「「?!!」」

冷たい声が聞こえたかと思えば俺たちの後ろにはカヌヤとカヌヤの後ろに隠れているラッスターがいた。

「カ、カヌヤ…驚かすなよ…ラッスターまでどうしたんだ…?」

「アニキたちのことが心配で見に来たんですぜい…バレないように静かにしやすぜ」

「そうなのか…心配かけちまったな」

ラッスターは首を大きく横に振って、静かにサラムとヤイバの様子を見ていた。

「アイツは相当疲れている…こんな公共の場でよだれを垂らしながら寝るぐらいにな」

「あ、疲れて寝てるんだね。天気良いから気持ちよくて寝てるのかと思った」

「…あの気狂いな右腕と自由気ままな大クズ野郎の相手をしたんだ…疲れて寝てしまうのも仕方ないな」

「ヤイバ…苦労人だな…」

「貴様も同じだろ」

「おい。お前らさっきから覗き見してるのバレバレだぜ…あんまり好き放題言ってるとヤイバ起きちゃうぞ」

そう言いヤイバの頬をつつくサラム。

「わわ!今起こさないでくだせぇ!!アニキが死んじゃうですぜい」

「大好きなアニキが死んで欲しくなかったらこっちに来な」

バレバレだった俺たちは大人しくサラムとヤイバの元へ行く。
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