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第3章 幾つもの思い

「…ヤイバ、よろしくな」

敵意の無くなったヤイバに手を差し伸べる。
ヤイバは黙って俺の手を見ていた。

「調子に乗るなよ」

「はいはい。こういう時はなよろしくなって握手するんだよって痛い痛い!!」

サラムはそっぽを向くヤイバの手を取って俺と握手させようとするが、
怪我をしている手を握られて悲鳴を上げていた。

「ヤイバ!!お前はやはり哀れな奴だ!!」

「あ、ウオルさん…戻ってくるの早いな」

「当たり前だ!客人を外に放置したままだなんて失礼だろう?待たせてしまったな、君たちの部屋に案内しよう。」

戻ってきたウオルは俺たちを部屋に案内してくれた。

「疲れただろ?今日はゆっくりと休むと良い…と、その前にヤイバに説教だけさせてくれないか?良いな?良いだろ?」

「あ、あぁ…程々にな…」

ウオルの気迫に押し負けるかのように返事をする。

「おい!ツムジ様が体張ってお前を迎えた訳が分かるか?」

「………。」

「まさか分からないのか?!哀れ過ぎて言葉も無いな!!
お前のことを心の底から愛しているからだ!!慈悲深きツムジ様に感謝しな!!
お前とツムジ様がどういう関係かは知らないがな!!ツムジ様が話してくれる時を僕は待つだけだ!!」

「言葉も無いって言っておきながら…ウオルさん…めっちゃ喋りやすぜい…」

今まで以上の気迫で語り出すウオルに珍しくラッスターが怯えながらツッコミを入れている。
怯えるラッスターの頭を軽く叩いて、俺たちは黙って見守る。
説教されているヤイバは相変わらず真顔でウオルを見ていた。

「ヒトを許さないことは簡単だ!だが、僕はそんな哀れなことは絶対にしない!!
ツムジ様やサラムが愛するお前のことを僕も愛し受け入れようじゃないか!!よろしくな、ヤイバ!!」

「………。」

「はあ…僕としたことが少々熱弁してしまったようだ…それでは、食事の時間になったらまた呼びに来くる」

スッキリとした表情でその場を後にするウオル。

「…アイツ…何かに取り憑かれているのか…?」

「いんや。あれがウオちゃんだぜ。ちょっとズレてるとこが面白いよな」

ポツリと呟くヤイバに楽しそうに笑っているサラム。

「やっぱお前のこと悪い奴に思えねぇな。」

怪訝な顔をしているヤイバにニカッと笑う。

「…そうだね。悪いヒトじゃなさそう。」

「はい!さっきはめっちゃ怖かったけど悪いヒトじゃないですぜい」

「……どいつもこいつもめでたい奴等だな…
お前らが呑気にしてられるのもアイツの怪我が治るまでだ」

怪訝な顔から真顔に戻ったヤイバは部屋を後にした。

「…さてさて。ヤイバと仲直りしてくるか」

「お荷物で切り捨てられたんじゃなかったの?」

「あぁ。そう思ってたけど違ったみたいだわ。」

「そうなの?良かったね」

ツルギの容赦ない質問に軽く答え、手をヒラヒラとさせサラムもヤイバの後を追う。

「…ちゃんと仲直りできるか心配だからこっそり見に行こうよ」

「こっそり見に行こうって…すぐバレそうだけどな…」

「…バレた時は今度こそ確実にデイタの首が飛んでいきそうだな」

「おいおいおい…勘弁してくれよな…」

楽しそうに言うツルギに冷静にツッコミを入れるカヌヤ。

本当に首を飛ばされそうだから俺は嫌だからな、ツルギ。
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