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第3章 幾つもの思い

「あら、いらっしゃい。」

城門前に水色の長髪を高い位置で括っている美しい女性がいた。

「やっほー。ツムジ様」

サラムは手をブンブンと振りながら女性に挨拶をする。
鳥は俺たちを降ろすと水に戻り消えた。

「…その水の中で呑気に寝ているのがヤイバかしら?もらっていくわよ」

水の球体を弾けさせ、ヤイバを担いで連れて行こうとするツムジ。

「あの!ツムジ様」

「あぁ…アンタがデイタね?今コイツが起きたら面倒だから話は後でするわよ」

そう言い、足早にその場を去るツムジ。

「ということだ。まあ、のんびり待とうじゃないの」

サラムはそう言い気絶したままのウオルを起こす。

「っは!ツムジ様の笑顔は?!」

「相変わらず無表情な美しい顔だったぜ」

「なんてことだ…!!ツムジ様はあんな猛獣じゃ喜びもしないというのか…まあ、それもそうか。
さてと、客人たちをいつまでも外に居させる訳にもいかないな。客室に案内しよう」

そう言い、俺たちを客室に案内してくれようと城の中に入ろうとしたその時だった。

「どわっ?!」

城の扉と共にヒトが飛んできた。
ウオルは避ける間も無く扉とそのヒトの下敷きになっていた。

「ツムジ様?!」

「あら、服が破けたわね」

右半身に大怪我を負っているツムジだった。

「服よりもツムジさん大怪我じゃないですかい!」

「うるさいわね。……こんなの痛くも何ともないわよ…」

「へぇ?!痛くないんですかい?!」

「黙らんか。内臓まで損傷している…痛いどころの話じゃないぞ」

「あら、治療はいらないわよ」

大怪我を負って痛みもあるはずなのに何故か楽しそうに笑っているツムジ。
そんなツムジに唖然とする俺たち。

「…なめた真似しやがって…」

「「!!」」

城の中から力なく出てきたヤイバはフラフラとツムジの元へ歩いていた。
サラムは何も言わず力尽きそうなヤイバに肩を貸していた。

「大丈夫よ。コイツはもう何もできないわ。」

警戒する俺たちにそう言いヤイバに目をやるツムジ。

「あーあ…武器や薬を調達している街の長に大怪我させただなんて…
しかも隊長でもあるアンタが…ラグースも大慌てでしょうね。武器や薬の調達を止めたらどうなるのかしらね…
まあ、アンタがデイタ達を殺さないって言うのなら…ね?」

「…っち…アンタの怪我が治るまでだからな……」

「そうね。そしたら何もなかったことにしてあげないこともないわ。」

「ツムジ様…貴方ってヒトは…っ…無茶しすぎですよ…うぅっ…」

「ウオル…アンタ…泣いてんの?不細工わねぇ…
泣いてないで早く部屋まで連れて行きなさいよ」

笑いながら泣いているウオルのおでこをつつくツムジ。
ウオルは涙を拭ってツムジに肩を貸して起き上がらせていた。

「そういうことだから。ヤイバもアンタらも仲良くしなさいよ」

どこか満足げなツムジは手をひらひらとさせその場を後にした。
状況が上手く飲み込めない俺たちは去っていくツムジの背中を呆然と見ていた。
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