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第3章 幾つもの思い

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「すごい…これ全部、実験体の名前?」

「あー?何勝手に見てんだ。」

「何十冊もある…今まで実験してきたヒト達の名前…捨てずに持っているんだ…」

「…まあ、何だかんだでラグースには逆らえねぇからな。失敗する確率の高い実験しかしてきていねぇわけだ。それは俺が殺してきたヒトの数だ」

「…フズ……アンタはやっぱり他のヒトとは違う…」

「あー?」

「…アンタに実験されたヒトたちは幸せだったと思う…
俺もアンタみたいな優しいヒトになる。いつかはヒトを傷つける実験をしなくても良い世界にしたい」

「…カヌヤ……


俺が優しいだなんて!オメーの目は正常か?!ひゃはははは!」

カヌヤに背を向けて笑い出すフズ。
それでもカヌヤは真っ直ぐにフズを見ている。

「…あー!もう!俺を褒めるだなんてオメー生意気なんだよ!」

「いて!…何をする」

カヌヤの頭を小突いてその場から立ち去るフズ。

「…あらあら。喧嘩でもしたのですか?」

「…フズ泣きそうな顔してた」

フズと入れ替わりでドラゴが部屋に入る。

「……すみません。実は先ほどの会話聞こえていました。

フズ様は誰よりも生命を大事にされる方です…ブットがラグースに支配され、実験を強要されることになった時も、最後まで首を縦には振りませんでした。お父様でもある氷の民の長、ジュラア様と戦って負けるまで…諦めませんでした。

ラグースの実験は無謀な実験とも言えるほどに成功率が低く、失敗体は自我を失いモンスターと化していきます。
それでもラグースの支配下になってしまったため、実験をしないといけません。

フズ様はああ見えても、ご自身の心までも消えてしまいそうなぐらいに葛藤する日々を送っています…何百年経った今でも…

きっとカヌヤの言葉にフズ様は救われたのだと思います。」

「…フズ……」

「あらやだ!重たい話をしてしまいましたねぇ。カヌヤ、フズ様のことを話したのは二人だけの秘密ですよ」

「うん…

ドラゴ。俺…実験するよ」

「…そうですか…無理にしなくても良いんですよ?」

「ううん。実験を成功させて、こんな下らないことは終わらせる。

フズやドラゴやみんなが悲しまない世界にしたい。」

「カヌヤ…貴方そんな小さな頭で立派なことを言いますね」

「…それは褒めているの?」

「生意気ですよぉ」

感動して涙目なドラゴはカヌヤの頭を撫でる。

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