第1章 旅の始まり
「成程な。あのイケ好かない野郎が暴れまわる部下の尻拭いをしに来たって訳か」
あれから俺たちは亡くなったヒト達を弔い、フズ達のいる城へ戻った。
そして、あの場で起きた出来事を話した。
「なあ、フズ。ラグースは何であんなことしているんだ?」
「強いヒトを求めているからだよ。そのために生体実験を繰り返している。」
「なっ…そんな理由で…」
「あぁ。シンプルで分かりやすいだろ?ひゃははは」
大笑いするフズに怒りを覚える俺。
「オメーって本当に何も知らないんだな。面白くて笑いがっあう!」
「…コイツとまともに会話をする希望を持つな」
氷の塊をフズにぶつけるカヌヤ。
フズは不機嫌そうにカヌヤを見る。
「俺はただ、罪の無いヒト達を傷つけるラグースが許せねぇんだ。だからアイツらのしていることを止める!」
「…へえ。それはどういう意味だか分かって言ってんだよな?」
恐怖を植え付ける紅い目で俺を見るフズ。
「ラグースの奴らを見て、この世界がどういうもんだか理解すると思ったが…
オメーは正義感の強い石頭野郎だ。とんでもなく危ねぇ。」
「…あぁ。この世界がどういう世界か知ったこっちゃねぇ。
ただ、ヒトを傷つけないと成り立たない世界なんて…俺がぶっ壊す!そして、誰もが笑い合えるような幸せな世界にする!!」
睨み合う二人。
心配そうに見守るラッスターに、冷や汗をダラダラと流しながら何かを祈るドラゴ。
カヌヤは表情を変えずにただ見ている。
「…はぁ。まあ、良いや。オメーが死のうが俺には関係ねぇ。勝手にしやがれ」
「あぁ。そうさせてもらうぜ」
ため息を吐き王座に座るフズ。
ドラゴはホッと胸をひと撫でする。
「デイタさん。フズ様の気が変わらないうちにブットから立ち去ることをオススメします。残念ながら私たちは貴方の力にはなれません…」
「あぁ…迷惑かけたな。ありがとうな」
「ア、アニキ!俺も付いて行きやすぜ!」
俺とラッスターはその場から立ち去ろうとした
…が。
「待て」
フズの一言で止められた。
「カヌヤ…オメーもしかしてコイツらと一緒に出ていくつもりじゃないだろうな?」
「そのつもりだが」
「ひぇあ?!な、何でですかカヌヤ!!」
一緒に出て行こうとしたカヌヤを引き留めるフズ。
ドラゴは再び冷や汗をかきだす。
「その冗談は笑えねぇーな…冷血のカヌヤさんよ」
「冗談ではない。俺はコイツらとラグースを止める旅に出る。」
「「え?!」」
城中に俺とラッスターの驚きの声が響き渡る。
「カヌヤ…何でですか?普段は他人と関わりを持とうとしない貴方が…」
「…面白いと思ったからだ。俺もラグースのやっていることは気に入らない」
「カヌヤ…俺は100年ぶりに心底落胆したぜ」
「…私は一応止めましたからね、カヌヤ。」
手を合わせてお辞儀をするドラゴ。
冷気を手に集めて構えるカヌヤ。
「オメーは死なせには行かせれねぇーな。手足が無くなっても、悪く思うなよ。」
「っぐ…」
「カヌヤ!!」
地面から出てきた黒い氷柱がカヌヤの手足を貫通した。
太刀で氷柱を斬りカヌヤを介抱する。
「お前!仲間に何やってるんだよ!!」
「あー?仲間じゃねぇーよ。…家族だ」
「!!」
フズの猛攻が始まった。
「っぐ…家族なら尚更傷つけてんじゃねぇよ!!」
「元凶のテメェが言えたことなんか?とっととくたばりな」
フズの猛攻はおさまらず防ぎ続けていた。
が、防ぎきれなかった氷柱が左胸を貫通した。
俺はその場に倒れた。
今のはちょっと効いたぜ…
ーーデイターー
!!
あの時の声だ。
ーー彼を苦しみから救ってあげるのですーー
フズが苦しんでいる…?
俺の意識はここで途絶えた。
「アニキ!!目が覚めやしたか!!!」
「お、おう?ラッスター?」
目を開けると見たことのある真っ白な部屋。
そこには涙を浮かべるラッスターと無表情のカヌヤがいた。
「あ、あれ…俺生きているのか?つか、カヌヤ怪我大丈夫か?」
「貴様は自分の心配をしろ。俺はあのブスに治療させたから何ともない。」
「アニキィ!生きてて良かったですぜ!!」
抱きつくラッスターを受け止める。
ラッスター…痛いぜ。
でも心配してくてたんだよな。ありがとうな。
つか、カヌヤ。今ブスって聞こえたけど気のせいだよな。
「ひゃははは!お目覚めか!化け物」
「フズ!!…あれ、その顔の怪我…」
「オメーだろうが!心臓に氷柱が貫通した時はくたばったかと思ったのによぉ…
気絶しながらも立ち上がってぶん殴ってきやがってよ…マジで怖いわ。治療しても腫れがひかねぇしよぉ」
「…覚えてねぇや……」
「そのおかげでフズ様も力尽きました!デイタさんの強さには驚きましたよ。」
「アニキ怖かったけどカッコ良かったですぜい!」
「貴様の生命力は化け物だな」
褒められているのか分からないぜ…
俺がフズを止められたのもあの声のおかげなんだろうか…
よく分からねぇや。
「…一晩泊まっていけよ」
「え?良いのか?」
「…あぁ。仕方ねぇーからな。オメーのことだから、一晩寝たらその傷も完治すんだろ。」
「………。」
「あぁ?何だその間抜け面はよぉ…認めてやったってことだ馬鹿野郎」
「…ありがとうな、フズ」
赤面してそっぽを向くフズ。
「デイタさん、貴方は本当にすごいですね。フズ様が折れることなんて滅多に無いんですよ。」
「そうなのか…?」
「…貴方のどんな状況でも諦めない信念の強さに惹かれたのでしょうね。」
優しく微笑むドラゴ。
「ドラゴ…いらねぇーこと言ってんじゃねぇ。
何だかよぉ…もうどうでも良くなったから、オメーの力になってやんぜ。ひゃははは」
「本当か?助かるぜ!…でも、そんなあっさりと決めて大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃねぇーかもな!ひゃははは!!
オメーは細かいことは気にすんな。だけど、知っていないといけないことは知れ。」
「あ、あぁ…」
この世界が今どんな状況かフズの説明が始まった。
「今、タイルターはラグースっていう大きな組織によって支配されている。
ラグースってのはご存知の通り、強き者を求め、非道な生体実験を繰り返しているヤバい奴らだ。
生体実験は各地で行われているが、特に大々的にしているのはこのブットだな。
昔は民家があるぐらいののどかな村だったが、ラグースの支配下になってからは実験施設まみれになっちまったな。
氷の民は、他の民より上質な技術を持っていて実験に長けている。それを狙ってブットを実験施設の拠点にしたんだ。
氷の民はみんな実験施設で強制労働させられている。
俺は不在の氷の民の長の代理をしている。俺もまあ、実験を強要されている身だな。
他の民達も理不尽な仕打ちを受けている。
みんな逆らえねぇんだ。ラグースのボス、ラグーの強大な力の前ではな。」
「…何でラグースは強い奴を求めているんだ?」
「それが分からねぇんだよな。ラグーはタイルターで一番強いはずなのにな。後継者でも探してんだろ」
「適当だな…。教えてくれてありがとうな」
「仕方ねぇーな。ひゃははは」
説明が終わり、礼を言う。
「ラグースは許せねぇ。誰もが笑い合えるような幸せな世界にするために、俺はラグースを止める!」
「はい!俺もアニキに付いていきやすぜ!」
「面白い。力を貸してやる。」
「ありがとうな。よろしく頼むぜ」
俺の手を握るラッスターに表情が少し柔らかくなるカヌヤ。
その様子を見て満足そうに微笑むフズとドラゴ。
「…本当に世話になったな。」
「全くだぜ!ひゃはは」
夜が開け、旅出の時が来た。
フズたちから食糧やら必要最低限の物を受け取り、礼を言う。
「なあ、デイタ。約束覚えているか?」
「あぁ。覚えているぜ。何でも言うこと聞くって言う約束だろ?」
「そうだ。今から伝えるから忘れんじゃねぇーぞ。」
「あぁ。」
どんな無茶な約束でも大丈夫だぜ、フズさんよ。
「オメーたちはこれから苦難な旅に出る訳だ。
デイタ…オメーは何があっても仲間を守れ。
そこの馬鹿星君や俺の弟、カヌヤ。これからできる仲間をだ。
それが俺の約束だ。」
「あぁ。必ず守るぜ。そして誰もが笑い合える世界にするぜ!」
約束を交わし、握手をする。
「馬鹿星君、あんまりはしゃいでデイタたちを困らせんなよ?」
「はい!頑張りやす!!」
ビシッと敬礼するラッスター。
「カヌヤ……
………本当に行っちまうのか?」
「…あぁ。俺はコイツらとラグースを止める旅に出る。」
「…ひゃはは…立派になったなぁ。
必ず帰って来いよ。いつでも待っててやんから」
寂しそうに笑うフズに表情が緩むカヌヤ。
涙を浮かべながら俺たちを見送るドラゴに満足そうに見送るフズ。
俺たちはブットを後にして、ラグースを止める旅に出た。
あれから俺たちは亡くなったヒト達を弔い、フズ達のいる城へ戻った。
そして、あの場で起きた出来事を話した。
「なあ、フズ。ラグースは何であんなことしているんだ?」
「強いヒトを求めているからだよ。そのために生体実験を繰り返している。」
「なっ…そんな理由で…」
「あぁ。シンプルで分かりやすいだろ?ひゃははは」
大笑いするフズに怒りを覚える俺。
「オメーって本当に何も知らないんだな。面白くて笑いがっあう!」
「…コイツとまともに会話をする希望を持つな」
氷の塊をフズにぶつけるカヌヤ。
フズは不機嫌そうにカヌヤを見る。
「俺はただ、罪の無いヒト達を傷つけるラグースが許せねぇんだ。だからアイツらのしていることを止める!」
「…へえ。それはどういう意味だか分かって言ってんだよな?」
恐怖を植え付ける紅い目で俺を見るフズ。
「ラグースの奴らを見て、この世界がどういうもんだか理解すると思ったが…
オメーは正義感の強い石頭野郎だ。とんでもなく危ねぇ。」
「…あぁ。この世界がどういう世界か知ったこっちゃねぇ。
ただ、ヒトを傷つけないと成り立たない世界なんて…俺がぶっ壊す!そして、誰もが笑い合えるような幸せな世界にする!!」
睨み合う二人。
心配そうに見守るラッスターに、冷や汗をダラダラと流しながら何かを祈るドラゴ。
カヌヤは表情を変えずにただ見ている。
「…はぁ。まあ、良いや。オメーが死のうが俺には関係ねぇ。勝手にしやがれ」
「あぁ。そうさせてもらうぜ」
ため息を吐き王座に座るフズ。
ドラゴはホッと胸をひと撫でする。
「デイタさん。フズ様の気が変わらないうちにブットから立ち去ることをオススメします。残念ながら私たちは貴方の力にはなれません…」
「あぁ…迷惑かけたな。ありがとうな」
「ア、アニキ!俺も付いて行きやすぜ!」
俺とラッスターはその場から立ち去ろうとした
…が。
「待て」
フズの一言で止められた。
「カヌヤ…オメーもしかしてコイツらと一緒に出ていくつもりじゃないだろうな?」
「そのつもりだが」
「ひぇあ?!な、何でですかカヌヤ!!」
一緒に出て行こうとしたカヌヤを引き留めるフズ。
ドラゴは再び冷や汗をかきだす。
「その冗談は笑えねぇーな…冷血のカヌヤさんよ」
「冗談ではない。俺はコイツらとラグースを止める旅に出る。」
「「え?!」」
城中に俺とラッスターの驚きの声が響き渡る。
「カヌヤ…何でですか?普段は他人と関わりを持とうとしない貴方が…」
「…面白いと思ったからだ。俺もラグースのやっていることは気に入らない」
「カヌヤ…俺は100年ぶりに心底落胆したぜ」
「…私は一応止めましたからね、カヌヤ。」
手を合わせてお辞儀をするドラゴ。
冷気を手に集めて構えるカヌヤ。
「オメーは死なせには行かせれねぇーな。手足が無くなっても、悪く思うなよ。」
「っぐ…」
「カヌヤ!!」
地面から出てきた黒い氷柱がカヌヤの手足を貫通した。
太刀で氷柱を斬りカヌヤを介抱する。
「お前!仲間に何やってるんだよ!!」
「あー?仲間じゃねぇーよ。…家族だ」
「!!」
フズの猛攻が始まった。
「っぐ…家族なら尚更傷つけてんじゃねぇよ!!」
「元凶のテメェが言えたことなんか?とっととくたばりな」
フズの猛攻はおさまらず防ぎ続けていた。
が、防ぎきれなかった氷柱が左胸を貫通した。
俺はその場に倒れた。
今のはちょっと効いたぜ…
ーーデイターー
!!
あの時の声だ。
ーー彼を苦しみから救ってあげるのですーー
フズが苦しんでいる…?
俺の意識はここで途絶えた。
「アニキ!!目が覚めやしたか!!!」
「お、おう?ラッスター?」
目を開けると見たことのある真っ白な部屋。
そこには涙を浮かべるラッスターと無表情のカヌヤがいた。
「あ、あれ…俺生きているのか?つか、カヌヤ怪我大丈夫か?」
「貴様は自分の心配をしろ。俺はあのブスに治療させたから何ともない。」
「アニキィ!生きてて良かったですぜ!!」
抱きつくラッスターを受け止める。
ラッスター…痛いぜ。
でも心配してくてたんだよな。ありがとうな。
つか、カヌヤ。今ブスって聞こえたけど気のせいだよな。
「ひゃははは!お目覚めか!化け物」
「フズ!!…あれ、その顔の怪我…」
「オメーだろうが!心臓に氷柱が貫通した時はくたばったかと思ったのによぉ…
気絶しながらも立ち上がってぶん殴ってきやがってよ…マジで怖いわ。治療しても腫れがひかねぇしよぉ」
「…覚えてねぇや……」
「そのおかげでフズ様も力尽きました!デイタさんの強さには驚きましたよ。」
「アニキ怖かったけどカッコ良かったですぜい!」
「貴様の生命力は化け物だな」
褒められているのか分からないぜ…
俺がフズを止められたのもあの声のおかげなんだろうか…
よく分からねぇや。
「…一晩泊まっていけよ」
「え?良いのか?」
「…あぁ。仕方ねぇーからな。オメーのことだから、一晩寝たらその傷も完治すんだろ。」
「………。」
「あぁ?何だその間抜け面はよぉ…認めてやったってことだ馬鹿野郎」
「…ありがとうな、フズ」
赤面してそっぽを向くフズ。
「デイタさん、貴方は本当にすごいですね。フズ様が折れることなんて滅多に無いんですよ。」
「そうなのか…?」
「…貴方のどんな状況でも諦めない信念の強さに惹かれたのでしょうね。」
優しく微笑むドラゴ。
「ドラゴ…いらねぇーこと言ってんじゃねぇ。
何だかよぉ…もうどうでも良くなったから、オメーの力になってやんぜ。ひゃははは」
「本当か?助かるぜ!…でも、そんなあっさりと決めて大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃねぇーかもな!ひゃははは!!
オメーは細かいことは気にすんな。だけど、知っていないといけないことは知れ。」
「あ、あぁ…」
この世界が今どんな状況かフズの説明が始まった。
「今、タイルターはラグースっていう大きな組織によって支配されている。
ラグースってのはご存知の通り、強き者を求め、非道な生体実験を繰り返しているヤバい奴らだ。
生体実験は各地で行われているが、特に大々的にしているのはこのブットだな。
昔は民家があるぐらいののどかな村だったが、ラグースの支配下になってからは実験施設まみれになっちまったな。
氷の民は、他の民より上質な技術を持っていて実験に長けている。それを狙ってブットを実験施設の拠点にしたんだ。
氷の民はみんな実験施設で強制労働させられている。
俺は不在の氷の民の長の代理をしている。俺もまあ、実験を強要されている身だな。
他の民達も理不尽な仕打ちを受けている。
みんな逆らえねぇんだ。ラグースのボス、ラグーの強大な力の前ではな。」
「…何でラグースは強い奴を求めているんだ?」
「それが分からねぇんだよな。ラグーはタイルターで一番強いはずなのにな。後継者でも探してんだろ」
「適当だな…。教えてくれてありがとうな」
「仕方ねぇーな。ひゃははは」
説明が終わり、礼を言う。
「ラグースは許せねぇ。誰もが笑い合えるような幸せな世界にするために、俺はラグースを止める!」
「はい!俺もアニキに付いていきやすぜ!」
「面白い。力を貸してやる。」
「ありがとうな。よろしく頼むぜ」
俺の手を握るラッスターに表情が少し柔らかくなるカヌヤ。
その様子を見て満足そうに微笑むフズとドラゴ。
「…本当に世話になったな。」
「全くだぜ!ひゃはは」
夜が開け、旅出の時が来た。
フズたちから食糧やら必要最低限の物を受け取り、礼を言う。
「なあ、デイタ。約束覚えているか?」
「あぁ。覚えているぜ。何でも言うこと聞くって言う約束だろ?」
「そうだ。今から伝えるから忘れんじゃねぇーぞ。」
「あぁ。」
どんな無茶な約束でも大丈夫だぜ、フズさんよ。
「オメーたちはこれから苦難な旅に出る訳だ。
デイタ…オメーは何があっても仲間を守れ。
そこの馬鹿星君や俺の弟、カヌヤ。これからできる仲間をだ。
それが俺の約束だ。」
「あぁ。必ず守るぜ。そして誰もが笑い合える世界にするぜ!」
約束を交わし、握手をする。
「馬鹿星君、あんまりはしゃいでデイタたちを困らせんなよ?」
「はい!頑張りやす!!」
ビシッと敬礼するラッスター。
「カヌヤ……
………本当に行っちまうのか?」
「…あぁ。俺はコイツらとラグースを止める旅に出る。」
「…ひゃはは…立派になったなぁ。
必ず帰って来いよ。いつでも待っててやんから」
寂しそうに笑うフズに表情が緩むカヌヤ。
涙を浮かべながら俺たちを見送るドラゴに満足そうに見送るフズ。
俺たちはブットを後にして、ラグースを止める旅に出た。