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第2章 目覚める力

「アニキィ…大丈夫ですかいね…このまま起きなかったらどうしやしょう」

「大丈夫だろ。化け物級の生命力だからな」

あれから邸で休ませてもらっている。
俺はまだ目覚めないままで、ラッスターが心配そうに覗き込んでいる。

「すごいよねぇー。人間だなんてよく名乗れたもんだよね。化け物なのに」

「言い過ぎですぜい…」

「あんなの見たら人間とは思えないよ。あの長が驚いてたんだからね。何の民なんだろ。君は光の民だよね。光るし。」

「わ、分からないですぜい…俺は一体だれ何ですかいね?」

「君はラッスターだよ。何を言っているの」

「そうですよね。俺はラッスターですぜい」

「…貴様らの会話を聞くと頭が痛くなってくる。
それに光の民は存在しない。おとぎ話の中の話だろ。」

「…おとぎ話?」

「【この世界ができた理由(わけ)】っていうおとぎ話に光の民が出てくるんだ。」

「その話聞きたいですぜい!」

カヌヤの肩を持ち食いつくラッスター。
カヌヤは困惑した表情をする。
ツルギはもう話に飽きたのか俺の鼻の穴を突いている。

「…このおとぎ話を語ることは禁じられているそうだ。」

「え?!そうなんですかい?!」

「初耳だね」

「…あ、あぁ。」

そう言い、プイとそっぽを向くカヌヤ。
ラッスターは肩を落とす。

「…内容を詳しく覚えていないだけでしょ」

「キコエナイナー」

「ぶは!何その反応!!」

耳を塞ぎ棒読みで言うカヌヤ。
その様子を見て吹き出すツルギ。

「ラッスターそんなに落ち込まなくても、長がそのおとぎ話の本持ってるよ」

「ほんとですかい?!」

キラキラとした目でツルギを見るラッスター。
ツルギはそんなに面白い話じゃないよ?と水を差す。

「……ここは…」

「アニキ!…目覚めて良かったですぜい」

抱きつくラッスターを受け止めて俺は辺りを見渡す。
孤島にいた時の部屋を思い出させるような、暖かみのある和室。

師匠とホウノ…
元気にしてるかな。

師匠とホウノを思い出し、思い出にひたる。

…いや、待て。
ひたっている場合じゃねぇ。
ここはどこなんだ。

「おはよう、生命化け物級。ここは長の邸だよ」

「あ、あぁ…」

カヌヤと言いツルギと言い…
悪びれもなくヒトのことを化け物って言うよな。
結構傷つくんだぜ。

「あれ?化け物って言われるの嫌なの?この世界では褒め言葉なのにね」

「そうだな。まあ、コイツはこの世界のヒトじゃないからな」

「アニキをイジめないでくだせぇ!アニキは化け物じゃなくて格好良いヒーローですぜい!」

「ラッスター…ありがとうな」

…そんな真っ直ぐな目で褒められると照れるぜ、ラッスター。

「目覚めたか」

「…アンタは確か……」

ふすまが開き、先ほどの女性が現れた。

「メディーだ。」

「俺はデイタだ。さっきは殴って悪かったな」

「…この私を愚弄するとは貴様やはり殺す」

「いやいやいや!何でだよ!」

クナイを俺の喉に当てるメディー。
目がマジだ。
俺は急いで距離を置く。

「この世界に女も男もない!強い者が生き、弱いものは食われる。


なのに貴様は私を女扱いして!私は長の右腕なのに…
貴様みたいな奴に負けたんだ」

その場に崩れ落ち、突っ伏すメディー。

「お、おい…大丈夫か…?あの時はラッスターとカヌヤも」

「黙れ!私に情けをかけるな!!屈辱だぁあああ!!」

「メディーさんご乱心だね。珍しい」

電流を身に纏い、激しく怒るメディー。
これ以上は危険だと察し、ツルギはメディーを宥めている。

「…何か悪いことしちまったな」

「良い機会だ。貴様もこれに懲りたのならこの世界のヒトに優しい言葉をかけるな。
プライドを傷つけるだけだ。

特にこのメディーは、雷の民の中でもダントツに強く、長の右腕をしているぐらいの実力の持ち主だ。それなのによそ者の俺たちに負けたんだからな。既にプライドがズタボロなのに貴様は追い討ちをかけたということだ。」

「そ、そうなのか…」

「貴様はこの世界にとっては異質だろうな。


…優し過ぎるんだ」

「その優しさでこの世界を救うことができるのはアニキだけですぜい!!俺はそう信じていやす!!アニキの優しさに救われるヒトも沢山いやす!!」

ボソッと呟くカヌヤに真っ直ぐな目で自分の思いを伝えるラッスター。

ありがとうな、ラッスター。

「まあ、そういうことだ。稽古の続きをするぞ、デイタ。」

「ファボ?!…い、いつの間に…」

俺の肩を掴み、ニカっと眩しい笑顔を向けるファボ。
こうしてまた地獄のような稽古が始まった。
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